●山梨学院大学大学院社会科学研究科創設10周年記念
●フォーラム「社会人大学院と生涯学習」
〜 未開拓の教育分野 パイオニア精神で 〜

山梨学院大学大学院社会科学研究科(我部政男研究科長)は3月5日、山梨学院50周年記念館で山梨学院大学大学院社会科学研究科創設10周年記念フォーラム『社会人大学院と生涯学習』を行った。基調講演で天野郁夫(東京大学名誉教授、国立大学財務・経営センター教授・研究部長)氏は、「法科大学院などの専門大学院の出現によって大学院ブームが到来した。今なぜ、大学院なのか。大学進学率が50%時代を迎え、大学はマスからユニバーサル化している。このことで、大学は一般・教養・専門・専門基礎・職業教育などで高等学校化し、大学院が大学化してきている。今や大学・大学院は変質してきている。これからの大学院は、大学教員養成や研究者養成だけでなく、専門人材養成や、エリート養成や高度教養教育が必要となっている。従って、修士課程・博士課程・専門学位課程の機能分化や学部と大学院の組織・機能分化が不可欠となってきている。社会現象の変化で社会人進学者が出現し、教育ニーズが変わってきているのに、未だに大学院組織は未整備なままだ。他方社会は、終身雇用・年功序列制の崩壊などで社会人の職業世界の構造変化などで、人生設計の自由化と『適齢期』の消滅やリカレント化の時代到来で、生涯学習時代へ移行した。こうした、社会や社会人の学習要求に大学院は応えうるか。日本の大学院教育の現状を、大学院在学者でみると理・工・農が59.7%、社会13.7%、人文9.3%、教育7.5%、保健4.7%となっている。アメリカは社会37.6%、教育23.5%、保健14.6%、理・工・農が12.3%、人文9.6%で、アメリカに比べて理・工・農に偏在している。社会人進学者は、大学院に何を期待しているのか。リクルート調べによると『進学の希望動機』は、1.専門的知識を得る必要、2.自分の知識・勉強不足を痛感、3.どこでも通用する能力・知識の必要、4.新しい可能性の発見、5.学生時代の不勉強を痛感、6.新分野について専門的に、7.視野の狭さに気づいて」となっており、『学習の目的』は、1.自分の視野を広げる、2.資格・免許の取得、3.特定分野の専門家になる、4.一般教養を深めたい、5.キャリアを考え直す機会、6.仕事に必要な能力の獲得となっている。こうした社会人のニーズに大学は、『教育目的の明確化』『ソフトな教育システム』『「役に立つ」教育内容』『教員の能力と意識変革』『教育の質の保障装置』の条件整備をすることが必要である。また、社会は『ソフトな社会』『就学可能な労働形態』『教育コストの負担構造』『組織の人事慣行の変革』『能力対応の報酬体系』の条件整備が必要となってくる。これらに鑑みると、未開拓の教育分野といえる。社会人大学院の可能性は、パイオニア精神で頑張らなくてはならない」と結んだ。このあと、コーディネーターの黒沢惟昭(山梨学院生涯学習センター長)氏、パネリストの栗田真司(山梨大学教育人間科学部助教授)氏、椎名愼太郎(山梨学院大学大学院法務研究科教授)氏、林充之(修了生・YMG林会計グループ代表 )氏、一瀬三記子(修了生・笛吹市保健福祉部介護保険課副主査)氏、指定討論者の込山芳行(山梨学院大学大学院法務研究科教授)氏と基調講演者の天野郁夫氏が加わり、シンポジウム『基調講演をうけて』が行われた。また、会場に詰め掛けた約100名の参加者から質疑がでて、それに応じるなど熱心にフォーラム‐ディスカッションが行われた。


●アルバム 基調講演
●アルバム フォーラム
●アルバム シンポジウム