平成18年度女子15回全日本学生柔道優勝大会
〜 山学女子創設7年目の快挙 22人のクイーン誕生 〜

 

全日本学生柔道連盟・毎日新聞は6月24日、東京都・日本武道館で平成18年度女子15回全日本学生柔道優勝大会を行った。5人制の二回戦から登場した山梨学院大学は、金沢学院大学に3対1、準々決勝で2連覇を目指す帝京大学に1対1の内容勝ち、準決勝では日本大学を3対1と破り、決勝戦へと駒を進めた。決勝戦は、昨年度準優勝で4度目の優勝を狙う東海大学と対戦。山梨学院は、4対1と圧倒的な強さを見せて、女子柔道創設7年目、柔道部強化育成クラブ指定から11年目の快挙となった。山部伸敏監督は「部員22名が一丸となって戦った結果。鹿屋体育大学時代の恩師である西田総監督に、山梨学院大学で女子柔道を一緒にやろうと誘われてから、7年目に達成できて感無量」と語った。表彰式で22名の部員は、笑顔で優勝旗、文部科学大臣賞、日本武道館賞などを授かった。
二回戦から登場した山梨学院大学は、一回戦で広島大学を代表決定戦の末に破った金沢学院大学と対戦した。先鋒・野中未奈(4年・日大藤沢)が、染矢直美(4年)を攻めながらの引き分けとされた。次鋒・佐々木梓(2年・埼玉栄)は、山口麻梨菜(4年)に押さえ込まれての一本負けで0対1と先取された。中堅・田中愛子(4年・鳥栖工業)は、横山貴衣(2年)を力で崩しての押さえ込みで1対1のイーブンとし、チームに落ち着きをもたらした。副将・石井さやか(3年・宮崎日大)は、林裕美(3年)を押さえ込みの合わせ技で2対1とした。大将・松原知美(4年・西京)は川口絵里奈(4年)を落ち着いた戦いで、押さえ込みの合わせ技で3対1とし試合を決めた。
待機所に戻ると西田孝宏総監督から「チャレンジャー精神を忘れている。最後の1秒まで諦めるな。怖さが先にたっている危ないぞ、負けてもおかしくない。地獄の練習を思い出せ。気合を前面に出して行け」と檄が飛んだ。
山部伸敏監督が選手を集め円陣を組み、入念に次の試合の策を授ける。松原主将の掛け声で選手が肩を組み勝利への気勢を上げた。
準々決勝の相手は、昨年度初優勝し2連覇を目指す帝京大学。山梨学院は昨年0対1で敗れている。先鋒・野中未奈(4年・日大藤沢)は宇高菜絵(4年)と引き分け。次鋒・高部由美(2年・横須賀学院)も武田三友紀(3年)に引き分け、ポイントゲッターの中堅・田中愛子(4年・鳥栖工業)に望みを託した。田中は皆の期待にこたえ川崎由紀(4年)を押さえ込み一本に仕留め1対0と先取した。副将・小澤理奈(2年・弥富)は、和田麻未(1年)と一進一退の攻防の末に優勢負けとなり1対1とした。戦いは、大将・松原知美(4年・西京)と石川笑美子(2年)の大将同士の勝負となった。引き分け以上で山梨学院、優勢以上で帝京と緊迫したムードが会場を覆った。大将の松原は落ち着き払っていた。相手の石川に何もさせない柔道で、勝利を意味する引き分けに持ち込んだ。山梨学院は1対1の内容勝ちで、準決勝に駒を進めた。
待機所に戻り感極まってすすり泣く声に、西田総監督が「泣いている場合か、帝京に勝ったからといってホッとするな。まだ二つある」と手綱を締める。
山部伸敏監督が選手を集め、「集中力を切らすな。22名の思いを胸に戦おう」と諭した。
松原主将は「みんな頑張っている。次がある皆で集中して行こう」と促した。
西田総監督は松原の目を見据えて「冷静だった」と肩を叩いた。次いで、野中を呼び寄せ「プレッシャーの中で、松原は必死で戦った。次はお前の番だ」と背中を押した。野中の顔面が硬直した。両手で顔を小刻みに叩き、魂を入れた。
準決勝戦、日本大学。先鋒の野中が次鋒に変わり、さらにここまでチームを畳の上で束ねてきた主将で大将の松原がメンバーから外れた。
先鋒・高部由美(2年・横須賀学院)が粟野壽子(2年)と引き分けた。リードオフマンとして、野中未奈(4年・日大藤沢)が次鋒として登場した。主将の松原が「中野、頑張れ」と身を乗り出して声援を送る。野中は、河田恵里佳(4年)と死闘の末に優勢勝ちをチームにもたらし、ポイントゲッターの田中につないだ。中堅・田中愛子(4年・鳥栖工業)は、齋藤志織(2年)を押さえ込みの合わせ技で仕留め2対0とした。副将・小澤理奈(2年・弥富)は、形振りかまわず攻めて攻めての相手に指導3回を与えての優勢勝ちで終了かと思いきや、松風F希(3年)を豪快な払い腰で仕留め3対0とし勝敗を決めた。松原主将に代わって、関東大会前から怪我で、戦列を離れていた谷本忍(2年・福岡工大城東)が登場した。白石のどか(1年)と対戦し優勢負けしたが、チームメートからは、その勇姿に拍手が送られた。
山梨学院の決勝の相手は、3回戦 大阪体育大学、準々決勝 国際武道大学、準決勝 淑徳大学を破り、決勝に進出してきた東海大学との対戦となった。
決勝戦を目の前にして、選手たちは淡々として落ち着いている。試合が開始された。山梨学院大学の先鋒・野中未奈(4年・日大藤沢)は、必要以上に攻めに攻め嫌がる松本順子(4年)から、4分35分に払い腰を奪い1対0と先取した。これでリズムに乗った山梨学院、次鋒の高部由美(2年・横須賀学院)は、気迫をもって七條晶(4年)に優勢勝ちを収め2対0とした。中堅の田中愛子(4年・鳥栖工業)は平井希(2年)に指導3を与え技ありの優勢勝ちを収めて山梨学院の優勝を決めた。優勝が決定してからも取り乱すことなく、副将の石井さやか(3年・宮崎日大)は、集中して攻撃の手を緩めることなく、1分40秒に背負い投げを決め4対0とした。大将の谷本忍(2年・福岡工大城東)が、立山真衣(2年)に優勢負けしたものの、4対1で2年連続決勝進出4度目の優勝を目の前にした東海大学を降した。山梨学院女子22名は、最後の最後まで一致団結し、全力で戦い抜いて女子柔道全日本学生柔道優勝大会のクイーンとなった。
田中愛子(4年・鳥栖工業)は「4戦全勝してチームの優勝に貢献できて嬉しいです。関東大会で(一つ負けて)流した悔し涙が、全国大会で嬉し涙にかわりました。関東大会の最優秀選手賞よりも、今日の最優秀選手賞は素直に嬉しいです。後輩には4年生が抜けても強い選手がいるので2連覇を目指して欲しいです。個人的には秋の全日本学生体重別選手権2連覇を目指して頑張りたいです」と述べた。
野中未奈(4年・日大藤沢)は「3回戦、準々決勝と自分の柔道ができなかったです。準決勝戦で優勢勝ちし、やっと仕事ができました。決勝戦で先鋒として一本が取れて自分の柔道ができました。チームは、良いムードできているので、力も気力もある後輩達に、このままの調子で頑張ってもらいたいです。個人的には全日本学生体重別選手権2連覇に向けて頑張りたいです」と述べた。
松原知美(4年・西京)は「全員よく頑張ってくれました。試合に出ている選手も、控えの選手も22名が一丸となって良く戦いました。その結果が、優勝をもたらしてくれました。後輩は、今回のことで皆が一丸となってやれば、本当にできるということが分かり、また自信になったと思います。伝統の第一歩を踏み出したので、後輩には更に積み上げていってもらいたいです」と述べた。
西田孝宏総監督は「関東大会で優勝したとき、選手におめでとうと、敢えて言わなかった。このチームには、全日本でおめでとうと言うチームだと思っていた。その通りになった。穴がない、こんなチームはなかなか出来ない。関東大会が終わって、地獄のような練習をした。たいがい、怪我人が出るのだが、このチームは乗り切って全国大会に出てきた。スタミナと気合は天下一品のチーム。田中・野中という体重別学生チャンピョンはいるが、ベスト8が最高だったチーム。今回は22名が本気になってくれて、総合力で栄冠を勝ち取った」と語った。
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