日本学生ホッケー連盟は6月25日、大阪府の大阪市長居球技場で第25回全日本大学ホッケー王座決定戦最終日を行った。男子決勝戦は、小雨の中で関東学生ホッケー春季リーグ優勝の東京農業大学と2位の山梨学院大学の対戦となった。山梨学院は5度目の優勝を狙う東農大を1対0で破り初優勝した。男子ホッケー創設7年目、ホッケー部創部13年目の快挙となった。山梨学院大学は、準々決勝を早稲田大学と対戦し3対1、準決勝の法政大学を6対4と破り、決勝戦へと駒を進めた。決勝戦は、前半を0対0で折り返し、後半23分ペナルティーコーナーからキャプテンの2番・藤巻毅史(4年・白根)がゴール左上に決勝点となるパントからのシュートを決めた。寺本祐治監督は「今のチームは日本リーグで2位と力をつけている。部員全員で優勝は狙っていた。このチームになるまでに、生みの苦しみがあった。選手の普段の練習の成果と、様々な方のサポートがあって優勝を勝ち得た。感謝したい」と語った。表彰式で部員45名は優勝杯、読売新聞社トロフィー、メダルなどを授かった。
決勝戦は、奇しくも関東学生ホッケー春季リーグ優勝の東京農業大学と2位の山梨学院大学の対戦となった。山梨学院は、関東学生ホッケー春季リーグ決勝では、東農大が引いて守備を固める戦術戦略に苦しめられ、2対2で延長戦に、延長戦0対0でペナルティーストロークに、そして4対5で敗れた。
決勝戦を前に、寺本監督は選手に「決勝を意識せずに、勝ちに行け。相手は引いてくる。精神力とフィジカルの強さで突破するぞ」と告げた。長居球技場にホーンが響き渡った。
ゴールキーパーの1番・森田篤(3年・伊吹)とフィールドプレーヤーのキャプテンFB2番・藤巻毅史(4年・白根)、FB16番・三澤孝康(2年・横田)、MF6番・金旻成(1年・大元)、FW村上宜優(2年・石動)ら選手10人がフィールドに散った。
山梨学院は開始早々から敵陣に詰め寄るが攻めきれない。開始10分台で2回のシュートを放ったがゴールキーパー17番・阿部直樹(2年)の好守に阻まれ得点に至らない。
東農大はカウンターで攻め込んでくる。山梨学院のディフェンス陣も踏ん張る。手に汗を握る攻防が繰り広げられる。
山梨学院は東農大のシュート2回、ペナルティーコーナー1回に対し、3回のシュートと5回のペナルティーコーナーと主導権を握りながら、ゴールポストに当たるなど決定的な決め手を欠いて、前半を0対0で折り返した。
ハーフタイム10分間、フィールドでは立命館大学のバトントワリング部の華麗な演技が披露されている。
寺本監督は選手を集め「焦らず、切り替えして行け」「我慢比べだ」「ゴール前に集中しろ」と指示。選手全員が「ハイ」と大きな声で反応する。寺本監督が続ける「ペナルティーコーナーは、ことごとく跳ね返されているが、練習の成果はでている」「一生懸命やれば、神様が見ている」「跳ね返ったボールを狙い決めるぞ」と選手に笑顔で告げた。
キャプテン藤巻が「よし、決めるぞ」と言うと、誰ともなく「勝つぞ、勝つぞ」と声が上がった。
後半、山梨学院は東農大に立ち上がりペナルティーコーナーを与えたものの、10分過ぎからは怒涛のように相手陣地25ヤードへなだれ込む。東農大はカウンター攻撃を仕掛けるが、山梨学院が、ことごとく潰す。
後半開始から25ヤード侵入回数は、東農大が5回に対し山梨学院は13回とワンサイドの展開。
山梨学院は23分、8回目のペナルティーコーナーを得た。ストッパーの6番・金旻成(1年・大元)からの球を、第一ヒッターの16番・三澤孝康(2年・横田)がスルーし、フリッカーのキャプテン2番・藤巻毅史(4年・白根)が、パントから決勝点となる起死回生のシュートを放ちゴールを揺らした。東農大は、何時もシュートを放つ三澤をマークしていた。しかし、三澤を飛ばすというフェイントをかけられ、堅守を崩され失点した。スタンドの山梨学院応援団は小旗を振り歓喜する。
山梨学院の得点の余韻が覚めやらぬうちに、山梨学院は、東農大にペナルティーコーを与えた。東農大のシュートが山梨学院のゴールを揺らした。主審の手が上がり1対1の同点コール。会場がざわめいた。山梨学院の選手がノーゴールとアピールする。すぐ逆サイドの審判員が、コールした主審に駆け寄り協議に入った。沈黙が続く、会場内の大型画面にそのシーンが映し出される。会場が再びざわめく。ペナルティーコーナーで詰めていた東農大の選手の足に当たりゴールしたと審判されノーゴールとなった。
東農大の選手が審判に詰め寄り、試合は完全に中断した。寺本監督は「雨の中で選手の体が硬直する」と選手を引き上げる許可を、競技審判陣に求めるが認められない。東農大の選手のアピールが続く。必要以上のアピールで東農大の選手にイエローカード5分の退場が与えられた。これで、東農大の選手はさらにヒートアップする。寺本監督は、大声で手振り身振りを交え選手に「身体を動かせ。身体を動かせと」叫ぶ。選手は体が冷えないように思い思いに身体を動かす。長い中断の後、ノーゴールの判定で試合が開始された。
その後も、集中力を持続させた山梨学院は終了間際の東農大のペナルティーコーナーをも防ぎノーサイド、関東学生ホッケー春季リーグで敗れた東農大に一矢報い大学王座の初の栄冠に輝いた。
キャプテンの藤巻毅史は「とにかく嬉しい。皆、最後までプレーに集中できた。前半、シュートが決まらなかったが、焦りはなかった。シュートまで行けていることが、後半につながると思った。勝利を信じて戦い、東農大に借りを返せたので満足しています。日本リーグ、インカレに向けて頑張ります」と述べた。
寺本祐治監督は「焦らず我慢のホッケーだった。男子は2000年度の創設だが、選手が揃ったのは2001年度からで、実質6年目の初優勝となる。藤巻が苦しいところでよく決めてくれた。部員全員におめでとうと言いたい。本格的な日本リーグでは、名古屋 (旧:表示灯)についで、名古屋と飯能市の2試合を残し、東農大と飯能市と2位争いの中にいる。どうにか2位を確保したい。また、インカレを制して学生の2冠を成し遂げたい」と語った。
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