平成18年度 石橋湛山賞(第27回)贈呈式
女性 初受賞 小菅信子『戦後和解』(中公新書)
〜 日英・日中の関係を比較 和解の可能性を探る 〜

 

財団法人石橋湛山記念財団(石橋省三理事長)9月29日、東京都日本橋の東洋経済ビルで平成18年度石橋湛山賞贈呈式を執り行った。石橋湛山賞は1980年に創設され、石橋湛山の自由主義・民主主義・国際平和主義の思想の継承・発展に、最も貢献したと考えられる著作に贈られる。今回で第27回となる平成18年度石橋湛山賞に、古代から近代にいたる“講和の歴史”をひもとき、好転した戦後日英関係から、悪化する日中関係の可能性を探る『戦後和解』(中公新書)、小菅信子教授(山梨学院大学教授)の著書が選定され、石橋理事長から女性初の受賞者となる小菅教授に賞状と賞牌、そして副賞が贈呈された。
本年度は、政界・経済界・学界・マスコミ関係者から寄せられた推薦論文・著書の41編がリストアップされ、5月に第一次選考委員会で22編に、第二次選考委員会で4編に、7月10日の最終選委員会で『戦後和解』(中公新書17年7月刊)、小菅教授の著書が選定された。
贈呈式の席上、石橋理事長は「今年度の受賞作『戦後和解』は、一つは非常に勉強になりました。一つは反省をいたしました。一つは考えさせられました。わかりやすく戦争と和解について書かれており勉強になりました。また、日英の歴史について知らずに、結果としてイギリスでの留学時代や勤務時代の自我の傍若無人な振る舞いに深く反省しました。さらに、日中関係の今後の在りようについて考えさせられました。石橋湛山も、日中の今後の在りようについて不信をしていました。この本は三拍子そろっている本です」と、小菅教授に賞状と賞牌、そして副賞を贈呈した。
叶芳和(拓殖大学教授)選考委員は「この賞は、石橋湛山の自由主義・民主主義・国際平和主義の思想を理念とするものです。受賞作『戦後和解』は、講和の歴史を巡り、日英・日中の関係を比較し、和解の可能性を探る。この本を読んで沢山のことを学びました。特に中国との関係については勉強させられました。現在の中国との関係は、大本営発表ではないかと思います。この関係は、日本が国際社会の中で埋没していくことが懸念されます。また、日本の経済発展のためにも、早く中国と和解すべきであると考えさせられました。今回の受賞が、歴史を忘却してはいけない、これが世界の普遍的な価値だということが、この本を通じて多くの人たちに理解してもらえることが、世界平和につながる第一歩だと、選考委員が深く感銘し平成18年度石橋湛山賞に輝きました」と、選考委員を代表して選考の経緯を述べた。
小菅教授は「この栄誉ある賞をいただき、あらためて人間と人間の信頼関係が大切ということを認識しました。ケンブリッジ大学国際研究センター時代は、‘研究での和解’と‘社会活動の和解’ではずいぶん違うのだということが分かりました。そのとき、大変、林大使にお世話になりました。また、帰国後には山梨学院大学に奉職して、古屋学長に日英和解の研究や活動などに理解をいただきました。こうした研究や活動から得た『戦後和解』を中公新書の支えで出版でき、栄ある賞をいただき大変感謝しております。若輩者なので、これからも頑張るのではなく、これから頑張って行きたいと思います」と、受賞の挨拶を述べた。

☆ 小菅 信子(こすげ のぶこ)
1960(昭和35)年8月26日生まれ。山梨県在住。上智大学文学部卒業、同大学院文学研究科史学専攻博士課程終了満期退学。ケンブリッジ大学国際研究センター客員研究員、山梨学院大学法学部政治行政学科助教授を経て、 現在、山梨学院大学法学部政治行政学科教授。
 [著書]
『戦争の記憶と捕虜問題』(共著、東京大学出版会)
『東京裁判ハンドブック』(共著、青木書店)
『戦争の傷と和解』(編、山梨学院大学生涯学習センター)
『戦後和解』(中公新書)
[訳書]
『GHQ日本占領史 5 BC級戦争犯罪裁判』
(共訳・解説 日本図書センター)
 他 多数

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