天皇杯 平成18年度全日本レスリング選手権大会
山梨学院大 男子F 大澤60s級 3位
〜 山本“KID”アクシデント右肘後方亜脱臼で2回戦敗退 〜
 

日本レスリング協会(福田富昭会長)は1月28日、東京の駒沢オリンピック公園総合運動場体育館で、天皇杯 平成18年度全日本レスリング選手権大会最終日を行った。男子のグレコローマンスタイルとフリースタイル、女子レスリングの3スタイル4階級が行われた。山梨学院大学男子は、男子フリースタイル60s級の大澤茂樹(2年)が、1回戦で06年全日本学生選手権3位の菊地憲(日本体育大学)を、2回戦で06年世界選手権銅メダルの高塚紀行(日本大学)を破り3位となった。また、山梨学院大学卒業生のフリースタイル60s級の山本“KID”徳郁(KILLER BEE)は、2回戦をAマットで、アテネ五輪銅メダリストの井上謙二(自衛隊)と対戦し、第一ピリオド、右肘後方亜脱臼(みぎひじこうほうあだっきゅう)のアクシデントで、わずか16秒でフォール負けした。最優秀選手に贈られる天皇杯は、7年連続7度目の優勝を達成した男子グレコローマン60s級の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が初受賞した。


山梨学院大学から男子フリースタイル60s級の大澤茂樹(2年・霞ヶ浦)が出場した。

☆ 大澤茂樹(男子フリースタイル60s級)
☆ 〜 高塚選手に勝て、湯元選手に負けて、自分が見えた 〜

●1回戦  対 菊地 憲(日本体育大学)
▲06年JOC杯ジュニア世界選手権銅メダルの大澤茂樹(2年)は、1回戦をAマットで06年全日本学生選手権3位の菊地憲(日本体育大学)と対戦。第一ピリオド試合開始から、両者は激しい組み手の攻防。1分が経過し、大澤は相手の首をきめ場外に出そうと追い込むが、2分が経過し0対0。ルールにより、コイントスで相手に攻撃権が与えられた。大澤は片足へのタックルをされる状態から試合を開始。大澤は落ち着いて、相手のクリンチからのタックルを返し2ポイントを奪い第一ピリオドを取った。
▲第二ピリオド、大澤は30秒経過したところで、相手に強烈なタックルを仕掛けて相手を場外へ出し1ポイントを先制した。しかし、第二ピリオドの終了間際1ポイントを返され、ルールで最後にポイントを取った選手が勝ちとなるため第二ピリオドを失い、1対1のタイブレークとなった。
▲第三ピリオド、大澤は30秒を経過したところで、片足タックルで相手を場外に押し出し1ポイントを先取した。大澤は、相手の首をきめ反撃を許さず試合を決めた。

●2回戦  対 高塚紀行(日本大学)
▲大澤は2回戦をAマットで、06年世界選手権銅メダルの高塚紀行(日本大学)と対戦。第一ピリオド、大澤は20秒過ぎタックルと横崩しで2ポイントを先制されると、残り15秒に渾身の力でタックルし3ポイントを奪い3―2と逆転した。第一ピリオド終了間際に相手に1ポイント奪われ、3ポイントで並んだが、大澤のビックポイント(一度に3点をあげた)勝ちで第一ピリオドを取った。
▲第二ピリオド、20秒過ぎ相手にバックを取られ1ポイントを先制される。30秒、大澤がバックを奪い1―1。残り32秒でタックルからバックを奪われ1―2と再びリードされる。残り8秒、渾身の力を振り絞り相手を場外に出し1ポイントを返し2―2とし、ラストポイント(最後にポイントを取った選手が勝ち)となり第二ピリオドを取り、2対0で勝ち準決勝に進出した。

●準決勝 対 湯元健一(日本体育大学)
▲大澤は2回戦をAマットで、05年全日本選手権優勝の湯元健一(日本体育大学)と対戦。第一ピリオド、大澤は片足を取り相手を場外に出し1ポイント先制した。相手に足を取られ巻き込まれ2ポイントを失い、大澤は直ぐ切り返し2ポイントを奪い3―2とし第一ピリオドを取った。
▲第二ピリオド、1ポイントを先制され、積極的に片足タックルに行くところをカウンターでバックを取られ2ポイント目を追加され、大澤の動きが極端に落ちた。反撃が影を潜め第二ピリオドを呆気なく取られ1対1とされた。
▲第三ピリオド、大澤の動きは止まったままで、防戦一方となり3ポイントを重ねられ第三ピリオドを落とし、1対2で負け決勝進出はならなかった。

●大澤は「昨日インターネットで組み合わせをみても、この階級は力が均衡していて誰でもチャンスがある階級だと思っているので動揺は無かった。しかし、いざ大会が始まると、緊張し初戦は慎重に成り過ぎた。第二試合は、緊張も取れ高校(霞ヶ浦)の先輩で手の内を良く知っている高塚選手に対して上手く戦えた。高塚選手はどんどん前にでてくる選手なので、良くバッティングされる。どうしても後ろに下がる。そこを狙われポイントを失う。今日は怯むことなく果敢に攻めることができ、最後まで自分の気持ちが折れることはなく世界3位の先輩に勝ててよかった。第三試合は第一ピリオドを3―2で取ったので自分の流れで行けると思った。第二ピリオドで仕掛けたタックルをカウンターで返され、勝ちに慎重になってしまった。ここでリズムが狂い負けた。今大会を総括すると、世界3位の高塚選手に勝てて凄く自信になったと同時に、大学に入り2回の戦いで勝てていた湯元選手に組み手で負け試合も負け課題も多く見え、自分が良く見えた凄く勉強になった大会だった。今後の抱負としては、これから練習しスタミナをつけ、首の怪我を治し、モチベーションを高めて、6月にはベストコンディションで全てを賭けて戦い、世界選手権の切符を手にしたい」と、冷静に語った。
▲大澤は山本“KID”徳郁選手について「大学で一緒に練習をさせてもらい、プロとしての闘争心、瞬発力、スピードについてなど多くを学んだ。今回、強豪の高塚選手に勝てたのはKID先輩のお陰だと思う。怪我を早く治してもらい一緒に練習させてもらい、6月には出来れば世界代表を賭けて決勝で戦いたい」と述べた。
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☆ 山本“KID”徳郁(KILLER BEE)  
☆ 〜 アクシデント 右肘後方亜脱臼で2回戦敗退 〜

●1回戦  対 土田章博(自衛隊体育学校)
▲山本“KID”徳郁は1回戦をAマットで06年全日本社会人選手権3位の土田章博(自衛隊体育学校)と対戦。第一ピリオド開始そうそう相手が山本“KID”のホッペに平手を軽く食らわすと、山本“KID”も平手で軽く応酬。レフリーに注意されるものの、いたって冷静に試合に臨む。山本“KID”は残り5秒、相手にタックルを仕掛け、主審が山本“KID”に3ポイントの判定を下すと会場からブーイングが起こり、この判定を巡り一時会場が騒然とした。審判員が集まりビデオ判定が行われ、山本“KID”のタックルに2ポイント、相手選手の返し技に2ポイント、山本“KID”のバックに1ポイントを与え、3対2とし、第一ピリオドを奪取した。
▲第二ピリオド、20秒過ぎに山本“KID”は相手の首をきめ場外に出し1ポイント。1分には片足タックルから相手を場外に出し1ポイントを追加。残り44秒片足タックルから担ぎ上げ大技で3ポイントを奪い5ポイントとした。相手に場外に出され1ポイント返されたものの第二ピリオドを5―1で取り、2対0で第2試合に進出した。

●レスリング協会から土田章博選手の話として「強かったです。プロだということは、多少は意識しましたが、誰が相手でもやったことを出すことだけを考えてマットに上っています。タックルは防げませんでした。誰との試合でも緊張はするもので、注目されているからという注目はありませんでした。KID選手への応援は多かったと思いますが、自分にも自衛隊の人たちが応援してくれていましたので、心強かったです。第一ピリオドの微妙な判定に対しての不満はありません。タックルに入られてしまったのですから、仕方ありません。まだまだです。次に闘った時に勝てるように練習します。」と、プレスリリースされた。

●2回戦  対 井上謙二(自衛隊体育学校)
▲山本“KID”徳郁は2回戦をAマットで、アテネ五輪銅メダリストの井上謙二(自衛隊体育学校)と対戦した。第一ピリオド開始、山本“KID”が勇んで出て行くと巻き投げを決められ、右肘後方亜脱臼(みぎひじこうほうあだっきゅう)で、わずか16秒でフォール負けした。

●レスリング協会から、山本“KID”のコメントとして「軽く怪我しちゃったんで、ガッチリ治してきます」と、また「怪我は右肘後方亜脱臼(完全には脱臼してないが、少し関節の位置が元の位置からはずれている状態)で全治3ヶ月から4ヶ月と診断された」と、プレスに発表された。

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高田裕司監督は「大澤は、06年世界選手権銅メダルの高塚と対戦しスタミナが切れ、湯元の時には戦える状態ではなかった。2月に大学に韓国選手が来る。3月には韓国に遠征に出かける。首の怪我と上手く付き合い、体力を付け世界レベルの練習を積み、才能を開花してもらいたい。またOBの山本“KID”には、レスリングのために大会を盛り上げてもらい本当に感謝している。アクシデントで右肘後方亜脱臼したが、気持ちが折れていないので一日でも早く完治してもらい、子供たちの憧れの山本“KID”として、今大会で6月に参戦できる権利を得たので、再び世界選手権代表そしてオリンピック代表を目指してもらいたい」と、語った。

●優勝者
【男子グレコローマン】
60kg級 笹本睦(ALSOK綜合警備保障)

【男子フリースタイル】
60kg級 湯元健一(日体大)
55kg級 松永共広(ALSOK綜合警備保障)

【女子レスリング】
55kg級 吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)