日本保健医療行動科学会は6月21日・22日の両日、健康格差社会における病気と医療〜行動科学的アプローチ〜を大会テーマに、第23回学術大会を山梨学院大学キャンパスで開催した。学会の構成メンバーは研究者・教員・医師・看護師・歯科医など幅広く健康や医療・福祉に関わる人たちで、メイン会場のメモリアルホールを中心に学内の10施設を使って研究発表などが行われた。プログラム1日目の21日は開会式に引き続き仲尾唯治大会長(山梨学院大学経営情報学部教授)が「HIV/AIDSをめぐる21年間−言語論的視点から−」と題して講演を行った。講演の中で仲尾教授は「HIV陽性者を支え助けることが感染から社会を守る」と指摘した。午後からは学会員以外も参加できる市民公開講座「保健医療界の本音トーク」が山梨学院生涯学習センターとの共催で開かれ、地域の医療現場で活躍する長野県南相木村診療所色平哲郎所長と山梨市立牧丘病院古屋聡院長、谷壮吉小松病院名誉院長らの本音トークによる公開講座が行われた。
日本保健医療行動科学会は1986年に故中川米造大阪大学名誉教授によって創設された学術団体で、人間の健康問題・保険医療問題の有り様を学術的に研究している。市民公開講座では、最初に「大阪・生と死を考える会」会長でもある小松病院の谷荘吉名誉院長が基調講演を行い、ガン治療の地域格差や産婦人科医が激減した現状を例に「国の医療費抑制政策が医師不足や医療現場のあらゆる面にしわ寄せと歪みをもたらしている。勤務医は働けど、働けど、病院は赤字、慢性病高齢者は生きていけない社会になってしまった。国民の意識改革も必要、国に対して健康保険法の抜本的改革を求める市民運動的パワーが必要」と力説した。続いて行われた色平哲郎所長・古屋聡院長のコーディネートによる「保健医療界の本音トーク」では、介護施設勤務の女性から介護報酬が削られたためにヘルパーがやめてしまい、人手不足から事故を未然に防ぐことが難しくなったという報告がされるなど、医療現場・介護現場ともに誇りを持って働くことが難しくなっている現状が実務担当者らの本音トークで浮き彫りになった。
大会1日目はこの他に、1、訪問歯科衛生士の草分け、牛山京子氏による「口腔ケア/食支援「快適な食生活を保つために」 2、自身も言語障害を乗り越えた、在宅言語聴覚士平澤哲哉講師による「失語症って知っていますか?」 3、『楽しい健康教育のためのスーパー整理&活用術』の著者、甲府市立大里小岩間千恵養護教諭による「参加・体験のある授業ってなあに?」の三つの体験学習ワークショップと一般演題口頭発表が行われ、生活習慣変容、自己イメージの形成と親子関係のセッションが行われた。2日目の22日はナラティヴと質的研究、運動支援と健康支援についてなどのセッションと特別講演、シンポジューム「健康格差社会の諸側面とその解決へのアプローチ」などが開催された。(M.I)
アルバム 大会長講演 市民公開講座
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