日本レスリング協会は6月25日、平成20年度全日本選抜レスリング選手権大会(1日目)を国立代々木第2体育館で行った。この大会の参加資格は昨年12月の「天皇杯」全日本選手権ベスト8以上と3月の予選会上位4人に限られる、選ばれた者によってレスリング日本一の座が競われる大会。大会は26日までの2日間、山梨学院大学レスリング部からはフリースタイルに4人、グレコローマンスタイルに7人の計11人が出場する。大会1日目、最も注目されたのは大澤茂樹(山梨学院大4年)が出場した北京オリンピック代表最終選考会を兼ねたフリースタイル男子60kg級。大澤は2回戦から登場、大館信也(自衛隊体育学校)に勝ち、準決勝で小田裕之(国士館大)と対戦、第1ピリオドは延長で小田、第2ピリオドは大澤がポイント4−0で取り、第3ピリオドは両者ともにポイントなし。延長戦は審判が袋の中から取り出すボールの色で攻撃の優先権が決まるカラーボールチョイス、出てきた色は赤、青の大澤は不運にも守りの姿勢でクリンチを向かえた。大澤は運命の30秒間を守り切る事が出来ず、バックを取られて試合終了、首の手術を乗り越えて挑んだ北京への夢は最終選考会のマットに沈んだ。
大澤は昨年のこの大会のチャンピオンだが、オリンピック出場のためには2連覇した上で、世界選手権で五輪出場権を取ってきた湯元健一(日体大助手)と全日本選手権覇者の高塚紀行とのプレーオフに勝たなければならない過酷な条件だった。ほとんど閉ざされた五輪、1%の可能性に欠けた最終選考会に大澤は首の痛みもなくベストコンディションで臨んだ。2回戦の大館戦では、第1ピリオド・第2ピリオドともに延長でクリンチからの持ち上げタックルでポイントをあげて勝利した。運命の準決勝戦では第1ピリオドこそ終了間際にバックを取られてポイント0−1で奪われたが、第2ピリオドでは積極的に仕掛け、残り30秒に両足タックルを決めるなどポイント4−0で取り返し、1対1で最終第3ピリオドに持ち込んだ。第3ピリオドも積極的に攻め込もうとするが、守りが強い小田は下から攻めようとする大澤を中に入れさせず両者ポイントなし、運命の延長クリンチがラストチャンスにかけた北京への夢を砕いた。力尽きた大澤はマットを下りると代々木第2体育館の床に膝から崩れ落ち、頭からタオルを被って体を震わせた。
大会1日目の山梨学院大勢の成績は大澤とグレコローマン60kg級の倉本一真、フリー66kg級の森川一樹の3人がともに3位、増田拓也(G120kg)・小林弘迪(G120kg)・高橋健次郎(G60kg)は1回戦敗退。大会2日目の26日はグレコローマン96kg級全日本3位で、全日本学生グレコローマン選手権2位の山本雄資(4年)ら5人が出場する。
■大澤茂樹選手は「モチベーション的にも調子はすごく良くて、プレーオフでも勝てる体を作ってきた。準決勝は攻めきれなかった、ポイントを1点でも取らないとクリンチになってしまってどっちが優勢になるか分からない運の勝負にしてしまったことが敗因。悔いが残らないと言えば嘘になるが、去年の12月に首の手術をして、周りの人達に支えて頂いて一度諦めたオリンピックを目指しここまで来た。目標を7月9日からギリシャで開かれる世界学生選手権に切り替え、今回駄目だった部分を克服して世界での優勝を狙う」と語った。そして、将来の抱負について「レスリングで体を鍛えてきて、もっとみんなに自分をアピールしたいという気持ちが強いので総合格闘技の道に進みたい」と卒業後の道を語った。(M,I)
アルバム 大澤選手 倉本選手 森川選手 |