日本学生ホッケー連盟(古屋忠彦会長)は6月29日、第27回全日本大学ホッケー王座決定戦の男女決勝を梅雨の降る大阪市長居球技場で行った。女子の決勝戦は前日の準決勝で前年度優勝の東海学院大を下した関東ナンバーワンの山梨学院大と21回の優勝を誇る関西ナンバーワンの天理大との宿敵対決となった。山学大は前週の練習試合で、主将の飯野綾香(4年巨摩高)が右膝じん帯断裂の重症を追った上に、GKの浅野祥代(3年岐阜各務野)、FWの加藤彰子(2年横田高)も負傷、主力3人が欠け試合前は劣勢が予想された。しかし、試合が始まると選手たちは、全員攻撃全員守備の山学ホッケーでフィールドを縦横無尽に走り回った。得たPC(ペナルティーコーナー)をすべて得点に結びつけ前半だけで4−0、後半も終了直前に追加点を奪い、終わってみれば5−0の大勝、この9年間ことごとく跳ね返され崩せなかった宿敵天理の壁をついに突き崩した。10年振り2度目の女王の座を獲得した選手たちは、試合結果を示す長居球技場オーロラビジョンの前で勝利のポーズを撮った。
試合は雨が時折激しく降る悪天候の中、天理大のセンターパスで始まった。立ち上がりの山学は硬さが目立ち、天理に攻め込まれる場面もあったが前半9分、この試合最初のPC、飯野主将に代わり腕に黄色のキャプテンマークを付けた副主将中島史恵(4年岐阜総合)が男子並みの速さで振りぬいたシュートがゴール左隅のネットを揺らした。このゴールで試合の流れは山学ペースに、28分に再びPCのチャンス、李仁敬(3年松谷女子)が強烈なプッシュシュート、30分には李がフェイントして菊池陽香(4年築館女子)が巧みにタッチシュート、3回のPCをすべて得点に結びつけた上に、前半終了間際には清水千秋(4年丹生高)が右からのクロスを豪快なダイレクトシュートでゴールに突き刺し、前半だけで4−0と大きくリードした。ハーフタイム、ベンチに戻った選手たちは、前半で気づいた事を一人一人が大きな声で発表、意志を確認し合い「後半の立ち上がりが大事、しっかりやっていきましょう」と後半のフィールドに向かった。サイドが変わった後半は序盤から一進一退の攻防が続いた。天理は14分、波状攻撃からチャンスを作りゴール左サイドから強烈なシュート、このシュートをGK荒木麻衣子(4年丹生高)が170cmの長身を利して左手一本でファインセーブ、厳しい練習で培った山学の運動量はオリンピック代表を抱える天理の運動量を終始上回り、相手にゴールを与えなかった。逆に終了間際に得たPCで丁ナリ(2年松谷女子)がダメ押しの追加点を決め、5−0として試合終了。その瞬間、右膝をギブスで固定した体で、雨のスタンド最前列に立ち声を張り続けていた主将の飯野綾香はその場で泣き崩れた。念願の王座を奪還したジョン・シアン女子監督は試合を中継していた地元テレビ局のインタビューに「最高です」と応え、「キャプテンの欠場を乗り越えてよく攻めよく守ってくれた」と選手の健闘をたたえた。寺本祐治男子監督は「直前に3人がケガをして不安だったが、安定した試合運びで安心して見ていられた。男子は日本リーグで順調に来ていたが、昨日の試合(準決勝で立命館大に1−2で敗退)では足が重かった、インカレまでに修正したい」と話した。チームを引っ張った中島史恵選手は「ケガをしてしまった子の分も43人の部員の分も、出場できる子はやらなければいけないとみんなが気持を込めて戦った、勝てて本当によかったです」と語った。飯野綾香主将は「自分がケガをしてしまってチームに迷惑をかけてしまったが、一丸となってみんなが頑張ってくれた。王座に賭けていたので嬉しい気持ちと試合に出たかった気持ちといろいろな思いが重なって涙が溢れ出ました」と話した。ライバルを大差で圧倒した選手たちはシアン監督だけでなく目を真っ赤にした大内美希コーチも胴上げして感謝の気持を表した。山梨学院大女子ホッケー部は秋のインカレは2年連続で制しているが、大学王座は初優勝した1998年以来常に天理大に優勝への道を阻まれてきた。歴史を塗り替え10年振りに返り咲いた女王の座には3試合連続無失点という守備を称える花も添えられていた。(M.I)
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