

大学三大駅伝の開幕レース「出雲駅伝」が体育の日の10月13日、神在月の神話の国に全国の強豪22チームが集い行われた。午後1時05分、出雲大社正面鳥居前を一斉にスタート、出雲ドームまでの44kmを6人のランナーが襷をつなぐスピード駅伝が始まった。戦前の予想は箱根駅伝優勝の駒大が本命、対抗は早大、エースのメクボ・モグスが世界選手権ケニア代表出場のため欠場した山梨学院大は下馬評では注目されなかった。しかし、2区に起用された初駅伝の松本葵(3年鹿児島商)が区間1位の激走でチームを3位に引き上げるなど、各選手が夏合宿の成果を発揮してモグスの代役アンカーのオンディバ・コスマス(1年 山梨学院高)につないだ。コスマスは区間新の走りで日大を大逆転優勝に導いたダニエルに次ぐ区間2位の好走でチームに貢献した。山学大陸上競技部は下馬評を覆す4位の成績を上げ、11月の「全日本大学駅伝」正月の「箱根駅伝」に向け上々のスタートを切った。
スタート時の天候は晴、気温25,5度、風速0,2m、山陰の秋にしては珍しい雨のない秋晴れ、暑さとも戦うレースとなった。
■最初の1区(8,0km)を走った主将の松村康平(4年清風高)が流れを作った。序盤は広島経済大のケニア出身サムエル・ガンガと東洋大のルーキー柏原竜二が区間記録を上回るハイスピードで飛び出したが、それに惑わされずにペース配分を守りトップから47秒遅れの7位で襷をつないだ。
■2区(5,8km)を任された初駅伝の松本葵(3年鹿児島商)は3千m障害日本選手権3位のスピード力を生かして好走した。カーブの多いこの区間で、先攻していた優勝候補の駒大など4大学を抜き去り、16分38秒で区間賞を獲得、チームをトップと11秒差の3位に引き上げた。
■3区(8,5km)の小山大介(3年 倉敷商)は苦しい走りとなった。3位で襷を受けた直後に駒大と鹿児島の雄第一工業大に並ばれ5位に後退した。しかし、そこから懸命に粘った。暑さの中で踏ん張り25分47秒の走り、トップと1分17秒差でリレーした。
■4区(6,5km)の大谷康太(3年 出雲工)は、今回は補欠に回った双子の兄健太(3年 出雲工)と共に地元出雲市の出身、ここは高校時代に何度も走ったコース「地元の人たちの『康太頑張れ』という声援が力を与えてくれました。チームの目標が箱根駅伝優勝なので、チームに貢献できるよう頑張りたい」チームを日大と同タイムの4位に引き上げ、トップと1分13秒差でつないだ。
■5区(5,0km)は正月の箱根駅伝で4区を走った後藤敬(3年 高千穂)がスピード力強化もかねて短い距離に挑んだ。4区の大谷が引き上げた4位を保ち、区間3位の14分54秒で走った。トップとの差は1分26秒差。
■最終の6区(10,2km)各校のエースが集まる最長区間を任されたのはケニア出身、モグスの後継者オンディバ・コスマス(1年 山梨学院高)。日大のケニア出身ダニエル(3年)が3秒遅れで後ろから、19秒先行する3位の第一工大は同じくケニア出身のジュグナ(1年)。トップの駒大と2位の東洋大を3人のケニア出身者が追走する激しい争いとなった。コスマスは日大ダニエルには抜かれたものの、区間2位の走りで東洋大を抜き、もう少しでジュグナを捉えるところまで迫り母校に4位の成績をもたらした。
松村康平主将は「1区・2区・3区を上位でつなぎ、4区・5区・6区で上げるということを考えていた、思った以上に前半耐えてくれた。今回の出雲で手応えをつかめたので、全日本・箱根ではもっと上位で戦っていきたい」と語った。区間賞で走った
松本葵選手は「初めての駅伝だったけれど、大胆かつ冷静にと心に決めて挑んだ。前半抑えて後半しっかり上げるレースをして次の選手に気持ちを伝える走りを心掛けました」と語った。
コスマス選手は「体調を崩していたが、最後まで諦めないモグス先輩を見習って絶対諦めないと頑張った」と話した。
上田誠仁監督は「全日本、箱根とステップアップして行くためには一戦目いいスタートが切れたと思います。夏以降選手たちには『お前たちは強くなっている』と言い聞かせてきたが、それを数字の上で少し証明してくれた。過信ではないけれど手応えつかんで、明るい気持ちで帰れるかなと思います」と語った。
大会最終成績は5位で襷を受けたダニエルが2年前にモグスが作った記録を上回る区間新(28分28秒)の力走で4人を抜き、日大が逆転優勝、2位駒大、3位第一工大、4位山学大、5位東洋大、6位東海大、7位立命館大、8位中央大などとなった。(M.I)
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