第85回東京箱根間往復大学駅伝競走“箱根駅伝”が正月2日、東京・大手町読売新聞社前から箱根・芦ノ湖駐車場前までの5区間108.0kmで1日目の往路が行われた。今年は85回の記念大会、例年より3チーム多い史上最多の23チームが出場、23色の襷が東海道を疾走し箱根の山を駈け上った。初出場から23年連続出場で優勝3回、準優勝5回の実績を誇る地方私学の雄 山梨学院大学は、最も難しい1区を任されたキャプテン松村康平(4年)が期待に応えてトップと6秒差の4位と好発進、4年連続2区のエース メクボ・モグス(4年)が最後の駅伝で2年連続区間新記録の激走を見せトップに躍進、当日変更で3区に起用された宮城真人(4年)がモグスの貯金を保ち1位でつなぎ、4区の後藤敬(3年)が区間4位の好走で2位、優勝を狙える理想的な展開で襷をつなぎ5区の山上りで高瀬無量(2年)がトップの早大を抜いた時には一瞬往路優勝かと思われた。しかし急勾配の宮ノ下で酸欠状態に陥りブレーキ、往路5位となった。往路優勝は5区の山上りで1年生のスーパールーキー柏原竜二が驚異的な区間新記録で8人を抜き、大逆転した東洋大が初の往路優勝に輝いた。
■山梨学院大学は往路(5区間108.0km)を、1区 松村康平(4年・清風)、2区 メクボ・ジョブ・モグス(4年・山梨学院高)、3区 宮城真人(4年・開新)、4区 後藤 敬(3年・高千穂)、5区 高瀬無量(2年・市立尼崎)で臨んだ。
☆1区 松村康平(4年・清風)
21.4Km[読売新聞社前から鶴見市場交番前]
▲1区は1キロ3分6秒台の遅いペースで23人が一団となって進むスローな展開となった。レース前に上田監督から「ペースが遅い時は自分でレースを組み立てろ」と指示されていた松村は、5キロ地点で先頭に立ち、集団を引っ張った。10キロ過ぎから1キロ2分52秒台のペースに上がり、横に広がって並走していた1区の大集団は縦長になり始めた。トップが入れ替わる中で松村は終始先頭集団の左側3〜4番手の位置をキープ。残り5キロで先頭集団は9人に絞られ、残り3キロで早大の矢沢がスパート、松村はここから粘った。上田監督の期待は「トップが見える位置でモグスにつなげばいいと」というものだったが、期待を上回る走りで主将の責任を果たし、1位の早大矢沢曜にわずか6秒差の4位でエースのモグスにリレーした。松村康平主将は「ペースが遅かったので、自分のペースで走ろうと前に出た。トップとの差を去年より2秒縮めたが区間賞を取りたかった。仕事としては最低限の仕事が出来たと思う。高瀬はレース後落ち込んでいたが明日があると励ました。チームの状況は悪くない、明日は総合3位以内を目指したい」と語った。
【区間順位4位】01:04:54【チーム順位4位】01:04:54
■1位 早稲田大、2位 神奈川大、3位 明治大、4位 山梨学院大学、5位 中央大、6位 日体大、7位 帝京大、8位 東洋大、9位 大東文化大、10位 城西大
☆2区 メクボ・ジョブ・モグス(4年・山梨学院高)
23.2km[鶴見市場交番前から古谷商事前]
▲エースのモグスはこれが最後の駅伝、大学はケニアに住む母親のタビタ・ムント・メクボさん56歳をレースに招待した。母は走る直前の息子に「ジャリ―ブ」(頑張って)と声をかけた。モグスは12月に兄をなくしたばかりだが、母の声援が戦う勇気を奮い立たせた。4年連続の花の2区、2年生の時にはオーバーペースで後半失速した苦味も経験した。昨年は名誉挽回の区間新記録を樹立した。そして、ラストランの最終レースに4年間の経験を全てぶつけた。レース前にライバルとして自ら名を上げていた早稲田の竹沢健介と東海大の佐藤悠基は3区に回り、同じケニアからの留学生ギタウ・ダニエルの日大は22位と出遅れた。「キャプテンが早く来たので落ち着いて入れた」モグスはオーバーペースにならぬよう前半は区間新を出した昨年より遅いペースで入り、徐々にペースを上げた、前を行く3人を抜いた後は一人旅の快走、最後の心臓破りの権太坂を懸命に上り昨年出した自らの区間記録(1時間6分23秒)を19秒も短縮させる1時間6分04秒という誰も破れないであろう記録を打ち立てた。史上最強最速の留学生ランナーは驚異の区間新記録を母と母校にプレゼントした。モグス選手は「10キロから15キロはきつかったが、15キロから20キロはいいペースで走れた。母に自分のレースを見てもらうのは7年前に日本に来てから初めて、喜んでもらえてよかった。1時間5分台を出したかったのでそれは残念だが、区間新記録は本当に嬉しい、良かった。卒業後はアイデムに所属してロンドン五輪でのマラソン出場を目指すが、山梨で練習を続ける」と語った。ライバルの日大ダニエルは22位から史上最高の20人抜きを見せたが、区間新記録を出したモグスには1分の大差を付けられた。
【区間順位1位】01:06:04区間新【チーム順位1位】02:10:58
■1位 山梨学院大学、2位 日大、3位 中央学院大、4位 東農大、5位 中央大、6位 早大、7位 明大、8位 駒大、9位 日体大、10位 国士舘大、
☆ 3区 宮城真人(4年・開新)
21.5km[古谷商事前から花水レストハウス前]
▲3区は区間エントリーしていた小山大介(3年・倉敷商)がけがの為当日変更で2年前にこの3区を走った宮城直人が急遽起用された。モグスがライバル早大に3分26秒差をつけて襷を宮城につないだが、北京五輪に出場した早稲田のキャプテン竹沢健介が猛然と追いかけてきた。宮城は海側から差し込む強い日差しを避けるためにサングラスをかけて冷静にレースを組み立てた。マイペースを守り、1キロ3分前後を保つ正確な走りをした。しかし、早大の竹沢の走りも凄かった、この区間を1時間1分40秒で走り区間新記録を樹立、不本意な成績で終わった五輪の雪辱を箱根で果たした。宮城真人選手は「エントリー変更は昨夜言われた、一度3区を走っているのでどこがポイントになるか分かっていたので落ち着いてレースを組み立てた。10キロを29分台で入る計算をしてきつくなく入れた。後ろから早稲田の竹沢君が追ってくるのは分かっていたが、自分の走りをすることに徹した。モグスが笑顔で襷を渡してくれたのが力になった。自分は卒業と共に競技も卒業するので、今日のレースが陸上人生最後のレースだったので、力を出し切りたいと思って走り、何とか走りきれた」と語った。
【区間順位10位】01:04:50【チーム順位1位】03:15:48
■1位 山梨学院大学、2位 早大、3位 日大、4位 中央学院大、5位 東海大、6位 中央大、7位 東農大、8位 日体大、9位 東洋大、10位 明大、
☆4区 後藤敬(3年・高千穂)
18.5km[花水レストハウス前からメガネスーパー本社ビル前]
▲後藤が襷を受けた時はモグスの貯金をほぼ使い果たしていた。竹沢の快走で16秒差になった早大は1年生三羽烏の一人三田裕介がすぐにぴたっと付いてきた。後藤はトラックの実力では劣る三田に食らい付いて並走した。この区間は箱根ではもっとも短い18,5km、スピードも要求される区間。10kmまでは我慢強く並走を続け、区間4位の好走でつないだ。後藤敬選手は「ペースが速くてきつかったが、夏合宿で粘る走りをトレーニングしてきたのが生きて、しっかり走ることが出来た。目標タイムを56分00秒に設定していたが8秒遅れた。区間4位はまずまず、復路の5人には自分の力を出して3位以内を目指してほしい」と語った。
【区間順位4位】00:56:08 【チーム順位2位】04:11:56
■1位 早大、2位 山梨学院大学、3位 明大、4位 日体大、5位 帝京大、6位 中央学院大、7位 東海大、8位 国士舘大、9位 東洋大、10位 日大、
☆5区 高瀬 無量(2年・市立尼崎)
23.4km[メガネスーパー本社ビル前から箱根・芦ノ湖駐車場前]
▲高瀬は2年連続の山上りに挑んだ。昨年は区間6位で走りながら2人に抜かれ3位に後退したことから、今年はその雪辱を胸にレースに挑んだ。結果的にはその意気込みが裏目に出たのかも知れない。1位の早大に48秒差の2位で襷を受けた高瀬は前を行く早大の三輪真之を激しく追った。大平台で21秒差に縮め、10,74kmで10秒差、ものすごい勢いで坂を駆け上がり11,6km地点で三輪を捕らえついに逆転、6年ぶりの往路優勝が見えたかと思われた。しかし、宮ノ下の急勾配に入ったところで、突然足に来た、酸欠状態に陥り足が動かない。前を行く早大を抜こうと突っ込みすぎたことが災いしたオーバーペース、意識が朦朧とした状態で何とかゴールまで襷をつないだ。走り終えた高瀬をモグスと1年のコスマスの二人が両脇を支えて宿舎まで抱きかかえた。高瀬無量選手は「最初はいい感じで走っていた。宮ノ下で早大を抜いたが、その直後に生まれて始めて酸欠状態になった、突然太ももが動かなくなりすぐに全身が動かなくなった。ブレーキを起こしてしまった。周りの声援が背中を押してくれてゴールにたどりつけた、悔しい」と肩を落とした。5区は東洋大1年のスーパールーキー柏原竜二が驚異的な区間新記録(1時間17分18秒)で8人を抜き、大逆転劇を演じ優勝目前の早大を抜き東洋大が初の往路優勝に輝いた。
【区間順位22位】01:25:41 【チーム往路順位5位】05:37:37
【往路成績】
優勝 東洋大、2位 早大、3位 日体大、4位 中央学院大 5位 山梨学院大学、6位 国士舘大、7位 日大、8位 明大、9位 大東文化大、10位 帝京大、11位 中央大、12位 東農大、13位 学連選抜、14位 専修大、15位 駒大、16位 神奈川大、17位 拓大、18位 順大、19位 亜細亜大、20位 上武大、21位 東海大、22位 青学大、23位 城西大、
■飯島理彰コーチは「モグスの区間新で流れが出来て、4区で抜かれはしたが後藤は区間4位でしっかり力通り走った。高瀬が少しブレーキになってしまったが、まだまだ悪い位置ではないので、明日は前向きに行きます。後ろを気にした時点で自分の走りが出来なくなってしまうので、後ろを見ずに前を追わせたい。6区・7区が大事になってくる、そこで後手に回らないようにして勢いをつけ、8区・9区・10区につなげて行きたい」と語った。
■ 上田誠仁監督は「高瀬はショックだったと思う、前を抜くことばかりに気持
が行きコース攻略が出来ていなかった。モグスは兄の葬儀でケニアに帰ったが1週間で帰ってきて千葉で走り込み、悲しみを乗り越えて体調を整えてくれてよく走ってくれた。コースの全体像をよく把握した集大成のようなレースをして区間新に結びつけた。チームの中の自分の存在を良く知っており、普段の生活の中でチームメートと駅伝を通じて友情を温めてきた。卒業後はアイデムに入るが、山梨でこれまでと同じ環境で練習を重ね、将来マラソンレースを走る体を作らせたい。明日は仕切り直し、山下りは一人旅になるが、目の前に人がいるつもりで走ってもらい、昨年以上の結果を出すようにしたい」と語った・
明日の復路109.9kmの区間エントリーは6区渡辺清紘(4年)、7区小棚木教彦(4年)、8区山本真也(4年)、9区中川剛(3年)、10区大谷康太(3年)の5人。
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