
スケート競技の大学日本一を競う第81回日本学生氷上選手権大会(インカレ)が1月6日〜9日の日程で青森県八戸市長根公園パイピングリンクなどで行われた。この大会はスピード・フィギュア・ホッケー三部門それぞれの学校対抗戦、個人競技の成績上位者に得点が与えられてチーム全体の総合得点が競われる。大会には延べ118校、1126名が参加、山梨学院大はスピード部門とフィギュア部門に出場した。このうち女子のスピード陣は2連覇を、男子スピード陣は1部復帰を賭けて氷上のレースに臨んだ。昨年優勝の女子は、1日目の500mで郷亜里砂(3年)が3位、2日目の3000mで松岡三葉(1年)が3位に入り、若山有香(4年)伊藤あさみ(3年)太田未奈美(2年)が各競技で得点を稼いだものの個人優勝はゼロ、最終日のチームパシュートレースで準優勝したものの連覇ならず総合成績3位となった。一方男子は1日目の2部500mで土屋慎吾(3年)が優勝したのを皮切りに、2日目の3000mで土屋直人(4年)、3日目の1500m近藤邦彦(3年)、5000m襲田衡俊(おそだひでとし)(2年)がそれぞれ優勝、最終日のチームパシュートレースでは1部の優勝タイムを上回るリンクレコードでチーム優勝、2部の全種目を完全制覇し1シーズンで1部復帰を果たした。
大会1日目結果
スピードスケートの会場は、甲斐源氏の流れを汲む山梨が故郷の南部氏が治めたかつての南部藩の城下町八戸市。山学大女子は連覇を胸に長根パイピングリンクに挑んだ。初日の競技はスプリント力を競う500m、3年生のスプリントコンビ郷亜里砂・伊藤あさみと郷の妹茉璃那(1年)の3人が出場した。郷(亜)と伊藤は12月に伊香保リンクで行われた個人選手権ではともに40秒台の記録で2位と3位に入っており今回も好成績が期待された。しかし、郷(亜)は3位に入ったものの、伊藤はレース直前にエッジを傷めるアクシデント、応急処理をして出場したものの8位と惨敗、チームはスタートダッシュで躓いた。
女子500m
1位 小平 奈緒(信州大)1分21秒38(1回目40秒67、2回目40秒71)
2位 住吉 都 (信州大)1分22秒87(1回目41秒46、2回目41秒41)
3位 郷 亜里砂(山学大)1分23秒98 (1回目41秒48、2回目42秒50)
8位 伊藤あさみ(山学大) 1分25秒56(1回目42秒65、2回目42秒91)
10位 郷 茉璃那(山学大) 1分27秒96(1回目44秒21、2回目43秒75)
郷 亜里砂選手(3年・白樺学園)「1本目はまずまずの滑りが出来たが、2本目は自分の滑りが出来なかった。2本とも揃えられるようにならないといけない」自らの課題を口にした。
男子2部500m
1位 土屋 慎吾(山学大)1分15秒75(1回目38秒32、2回目37秒43)
2位 皆川 唯(筑波大)1分15秒91(1回目38秒12、2回目37秒79)
3位 大和田 司(北翔大)1分16秒03(1回目38秒00、2回目38秒03)
4位 佐々木俊次(山学大)1分16秒89(1回目38秒43、2回目38秒46)
土屋 慎吾選手(3年・白樺学園)「1本目は集中出来ず3位と失敗した、1本目トップの大和田は白樺学園の後輩、負けるわけにはいかないと集中して2本目はうまく滑れた」来シーズンにつながる滑り、チームに勢いをつけた。
大会2日目結果
初日を終えた夜の宿舎、川上隆史監督と和田貴志コーチはミーティングで明日のレースに出場する選手一人ひとりにアドバイスを行い、滑りを指示して送り出した。大会2日目は長距離種目の3000mとスプリント種目の1000m、女子はこの日の巻き返しに期待がかかった。しかし、体調が必ずしも万全でない選手が多く、表彰台に上ったのは1年生の松岡三葉が3000mで3位に入っただけ、学校別得点争いは日体大、信州大に遅れをとった。一方、男子は2部3000mでキャプテンの土屋直人がチームを引っ張る1位、伸び盛りの襲田が2位に入った。
女子3000m
1位 川崎みなみ(日体大)4分32秒31
2位 藤村 祥子(日体大)4分36秒46
3位 松岡 三葉 (山学大) 4分41秒34
5位 若山 有香 (山学大) 4分42秒03
8位 太田未奈美(山学大)4分48秒24
松岡三葉選手(1年・帝京三)「直前に風邪を引いてしまい万全ではなかった。その状態で3位に入り得点を取れた事はよかったと思うが、3000mも1500mも力不足だと感じた。もっともっとレベルアップを図っていかなければいけない」1年生は瞳を輝かせ向上心を覗かせた。
女子1000m
1位 住吉 都 (信州大)1分24秒05
2位 大垣さなえ(日体大)1分26秒98
3位 松尾 佳枝(信州大)1分27秒08
5位 郷 亜里砂 (山学大)1分27秒21
6位 伊藤あさみ (山学大) 1分27秒24
11位白木 恵梨(山学大)1分30秒98
伊藤あさみ選手(3年・池田高)「初日にエッジを傷めた影響は大きく応急処理で対応したがしっくりせず氷を上手くとらえることが出来なかった。それでも3番以内に入らなければいけなかった、ラスト1週が遅すぎた」満足な走りが出来なかったレースを悔やんだ。
男子 2部3000m
1位 土屋 直人(山学大)4分10秒51
2位 襲田 衡俊(山学大)4分13秒05
3位 小泉 貴昭(大東文)4分27秒97
土屋直人主将(4年・嬬恋高)「3000mは最初からスピードに乗らないといけないので最初の入りで遅く入らないように注意した。いつもはラスト3周から足に来るのだが今回はラスト2週からだった、ゴールが見えていたのでいつもより頑張り切れた」責任を果たしたキャプテンはホッとした表情を見せた。
大会3日目結果
この日の天候は晴れ、女子1500m競技開始時刻午前10時のリンクコンディションは、気温3,0度、氷温−5,0度、西の風1,0m、このリンク特有の北西の冷たい風は吹かなかったが、氷の状態はあまり良くなかった。流れに乗れないままの女子はこの日は表彰台なしに終わった。一方男子は、2部5000mで襲田1位、土屋(直)2位、1500mで近藤邦彦1位となり個人戦全種目を制しこの日で2部優勝を決めた。
女子1500m
1位 小平 奈緒(信州大)2分08秒08
2位 藤村あゆみ (日体大) 2分09秒92
3位 藤村 祥子(日体大)2分11秒16
4位 若山 有香(山学大)2分11秒62
6位 松岡 三葉(山学大)2分13秒49
10位太田未奈美(山学大)2分19秒13
男子2部1500m
1位 近藤 邦彦(山学大)1分58秒76
2位 皆川 唯(筑波大)2分01秒77
3位 小泉 貴昭(大東文)2分02秒81
6位 福岡 裕也(山学大)2分05秒05
男子2部5000m
1位 襲田 衡俊(山学大)7分12秒24
2位 土屋 直人(山学大)7分17秒50
3位 佐々木康幸(大東文)7分43秒93
襲田衡俊選手(2年・日光高)は「3000mの時は空回りしてあっという間にレースが終わってしまった。5000mは33秒台のラップを刻むようにして滑った。ラスト1週が35秒台に落ちたのは課題だが、レース全体をまとめることは出来た」。襲田は12月の個人選手権1万mで初優勝しており最も得意な種目は1万m、1部に昇格する来期は1万mの出場権が得られることからチャンスがめぐってくる。
最終日結果
12月に降った雪が根雪となって市街地にも残る北国の港町で開催された学生スケート最大の大会“インカレ”、最終日は2000mリレーとチームパシュートレース(1チーム3名編成、2チームがホームストレートとバックストレートから同時にスタート、男子は8周、女子は6周して最終走者のタイムで順位を競う)が行われ、チームプレーで母校の得点を競った。
女子2000mリレー
1位 信州大(松尾・江田・住吉・小平) 2分44秒52
2位 日体大(椙浦・松本・武井・大久保) 2分48秒06
3位 山学大(郷(亜)・郷(茉)・今井・伊藤)2分48秒65
女子チームパシュートレース
1位 日体大(川崎・小松・藤村)3分17秒02(大会新・リンク新)
2位 山学大(松岡・太田・若山)3分24秒32(リンク新)
3位 信州大(小平・住吉・鎌倉)3分27秒68
若山有香主将(4年・池田高)「下級生の2人が不安そうな顔をしていたので、緊張せずに楽しもうと話しかけて目標にしていた3人一緒のゴールができました」。
太田未奈美選手(2年・佐久長聖)「3000mと1500mで力が出せず成績がよくなかったので不安だったが、若山さんに大丈夫といわれリラックスして滑ることが出来ました」。
松岡三葉選手(1年・帝京三)「足を引っ張ったら困るとすっごく緊張したが、先輩に楽しもうと云われて楽になり、練習の時よりうまく滑ることが出来ました」。
男子2部2000mリレー
1位 山学大(佐々木・近藤・東原・土屋(慎))2分32秒67
2位 大東文(高山・光岡・小泉・豊吉) 2分38秒01
3位 関東学(水澤・飯田・生野・遠山) 2分46秒87
男子2部チームパシュートレース
1位 山学大(土屋(直)・福岡・襲田)4分06秒48(リンク新)
2位 大東文(小泉・豊吉・佐々木) 4分21秒38
3位 関東学(飯田・水澤・生野) 4分46秒31
土屋直人主将(4年・嬬恋高)「パシュートは難しい競技だが1部の優勝タイムよりいいリンクレコードでの優勝“うれしい”の一言です」。
襲田衡俊選手(2年・日光高)「昨日まで全部1位だったので、最後の日も気を緩めずに1位を取ろうと気持ちを入れました」。
福岡裕也選手(3年・釧路商)「実力のある2人に僕がついていくことが使命だったが、辛くなった時にキャプテンが風よけとなって滑ってくれて救われ、何とか2人に付いて行く事が出来ました」。
大会の結果、山学大女子は日体大、信州大に次ぐ総合成績3位、男子は2部全種目優勝で1部昇格を決めた。フィギュア部門Cクラスに出場した田代雄大(4年)はポイント28.15で20位だった。
ソルトレークとトリノの二つの冬季五輪で日本代表コーチを務めたOBでもある和田貴志コーチは、4日間リンクの上で選手に指示を送るとともに、走り終えた選手に声をかけ並走して技術アドバイスを行った。
和田貴志コーチは「調整はうまくいっていたのだが、女子は初日の500mで波に乗れなかった上に、得点争いの鍵を握る1000mでポイントを取れなかったのが後に響いた。男子は初日の500mで土屋慎吾がライバルの大和田司を抑えたのが大きかった。女子は流れを作れず、男子は流れを作れた」と振り返った。
川上隆史監督は「インカレは学生にとって一番大きな大会、個人戦の時とはプレッシャーの懸かり方が違う。郷(亜)の1000mスタートの時に北西の突風が吹いて加速できなかった不運や伊藤のアクシデントもあったが、最終日の二つのチーム競技では皆が力を出し合いチームの力を出した。男子は1部の中にいると想定して戦い2部全種目制覇、チームパシュートでは1部優勝校を上回る記録で優勝できた。男女いずれも来シーズンにつながる滑りを見せてくれた。チームを引っ張ってくれた4年生に感謝したい」と語った。
4年生はインカレを最後に部活を卒業する。戦いを終えた山学チームは別れを惜しみ全員で“ラストラン”、長根リンクをゆっくり3周して胸の想いを分け合い、後輩たちは7人の先輩に花束を贈った。スケート部員が氷に乗れるのはわずか3ヶ月程度、1年の大半を陸上トレーニングに費やして体を鍛え、シーズン中は遠征しての戦いが続く過酷な氷上の競技。選手として入部したものの記録が伸びずマネージャーとしてチームを支えた渡部元太マネージャーは涙が止まらなかった「4日間一生懸命滑った選手たち、4日間身を乗り出して声援を送った仲間たち、バックストレートから見ていてみんな最高にかっこよかった。人のために何かをするのはやりがいが感じられないことだけど、謙虚に努力すれば結果はともかく心は充実することを皆に教えてもらいました、ありがとう」万感の思いがこもった言葉には重みがあった。
若山有香女子主将「初日にうまく滑れなくて3年生にプレッシャーを掛けたことが心残りだが、最後のスケート、滑れる幸を感じながら1分1秒を縮める努力をしました。皆がいたからいいインカレになりました」その目は真っ赤だった。
土屋直人男子主将「皆を引っ張れなかったが、皆が頑張って付いて来てくれた。男子は1部に上がることだけでなく各自が自分のレースをしっかり組み立てることを目標にして臨んだ。2部の全種目を制覇したことは来年につながると思う、後輩たちには山学スケートの伝統を受け継ぎ1部でしっかり滑ってもらいたい」溢れ出る涙を押さえながら後輩たちに後を託した。
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