
山梨学院大学(古屋忠彦学長)と酒折連歌賞実行委員会(川手千興実行委員長)は2月22日、酒折連歌賞十周年記念大会の表彰式を行った。記念大会の大賞(文部科学大臣賞)は、愛知県一宮市の教員大江豊氏(48歳)が詠んだ答えの片歌「目隠しで 遊んだ後の 空の色だね」が史上最高の52703句の中から選ばれた。山梨学院広報スタジオで行われた表彰式には大江豊氏とともに、佳作3点に選ばれたいずれも中・高校生の千葉県松戸市立第5中1年弓野広貴君(13歳)、山梨学院高3年玉利明子さん(17歳)、東京都立西高3年堀江真純さん(18歳)の3人、そして、高校生以下を対象に将来楽しみな才能を見出すことを目的に設けられている特別賞のアルテア賞最優秀に選ばれた兵庫県立神戸甲北高2年石橋沙也佳さん(16歳)の5人が出席、主催者代表の古屋忠彦学長から賞状と副賞が贈られた。今回「100選」に選ばれた句のうち45句は中・高校生による作品、十代の台頭が目立った記念大会となった。
主催者を代表して挨拶した古屋忠彦学長は「十周年を祝う記念碑を建立し一昨日除幕式を行いました、連歌発祥の地に生まれた賞の記念の年に入選したことを心に留めて頂きたい」と受賞者に語りかけた。川手千興実行委員長は「授業や夏休みの宿題に活用する中学・高校が年々増え、511校もの団体応募を頂いた結果、応募者の58%を10代が占める割合となり、入選者も多数輩出しました。酒折連歌が若い世代に広がり大変嬉しく思います」と述べた。
大賞を受賞した
大江豊さんの作品「目隠しで 遊んだ後の 空の色だね」は、問いの片歌「ひだまりのポストに届く手紙の色は」への答えの片歌で、選者の広瀬直人選考委員長は「目の前の手紙の色から楽しかった遊びの後に見上げた空を思いついた素直さと豊かさに共感しました」と称賛した。大江さんは第16回日本海文学大賞、第6回ふるさとの詩優秀賞などの受賞歴があり「ホームページを見て、小学生の頃の記憶を呼び起こし、2〜3分で作って応募しました。大賞と聞き大変驚きました、創作活動の励みになります」と語った。
佳作の
弓野広貴君の作品「人と夢 二つ合わせて 儚いと読む」は、問いの片歌「誰にでも夢と知りつつ見る夢がある」に答えたもので、今野寿美選考委員は「なるほど人の夢は儚いものだと納得するところに皮肉なおかしみもたちあがる。十三歳の作品と聞いて感心した」出色の答えの片歌と絶賛した。弓野君は「儚いという言葉を作品に使いましたが、僕は努力すれば夢は儚くならないと思っています、自分の夢を儚くしないようにしたい」と物静かに語った。
佳作の
玉利明子さんの作品「木洩れ日に 私をみちびく オオムラサキが」は、問いの片歌「朝もやの野のひとすじの道をたどれば」への返歌、三枝昴之選考委員は「問いの片歌のさわやかさをどう生かすかでしたが、素敵な風景の展開で問答を構成したところにこの片歌の魅力があります」と分析した。玉利さんは「学校の総合学習で中学1年の時から作り始め、今回で6回目の応募です。お題を見た時に、ぱっとオオムラサキが頭に浮かびました」自宅の庭に飛んできた蝶を描いたと話した。
佳作の
堀江真純さんの作品「ペンギンは空を オウムは海を 夢見る」は、「誰にでも夢と知りつつ見る夢がある」に答えた歌で、今野寿美選考委員は「問いの片歌に即しすぎた答えが数の上では大変多かったが、夢見ると結びながらも自在な展開を示し得ている。柔軟な感性の作者を思った、すばらしい」と選評した。堀江さんは「中学3年の時に授業で取組んで以来毎年応募しています。夢という言葉からペンギンはすぐに思いついたが、対照させる生き物を見つけるのに苦心して最終的にオウムに行きつきました」と言葉選びに苦労したことを明らかにした。
アルテア賞最優秀の
石橋沙也佳さんの作品「三時間 待ったあの日も 初雪だった」は、「初雪やてのひらに受け歩みをとめる」の返歌、もりまりこ選考委員は「初めての雪が昔の記憶を引き出してくれる時間の栞のような作品に仕上がっているところに惹かれました。雪の冷たさと思い出の温かさが抒情的に表現されている」と称えた。石橋さんは「1年前の初雪の日に、彼氏に3時間待たされた事を思い出して歌にしました。高校生の物書きとして最高級の名誉を頂いて嬉しく思います。小説や詩を書くのが大好きでとても励みになります」と瞳を輝かせていた。
表彰式を終えた受賞者は、十周年を記念して大学キャンパス内のクリスタルタワー前に建立され、2日前に除幕式を済ませたばかりの「酒折連歌賞創設記念碑」の前で記念撮影を行い、連歌発祥の地酒折宮を訪問し受賞を報告した。
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アルバム表彰式 |
アルバム酒折宮訪問 |