
“山学大が火の国熊本で火の如く燃えた”熊本市のアクアドームくまもとで開催された第85回日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)競泳競技は最終日の6日、男女5種目の予選・決勝が行われた。山梨学院大学水泳部は3日目も出場全選手が練習の成果を十分に発揮した。女子400m個人メドレー決勝に坂井菜穂子と山崎ゆかの二人が進出、坂井は自己ベストで準優勝、このレースで引退する山崎は有終の美を飾る5位。100m平泳ぎで日本新を出した鈴木聡美は200mも健闘し3位、山崎同様にラストスイムの亀崎あゆみは感涙の6位。選手層に厚みが加わり、各種目で満遍なく得点を重ねた女子は初日から首位を独走、85年の歴史を数える110大学、1488人が集った“インカレ”で圧倒的強さで見事に初優勝を果たした。1999年に神田忠彦監督を迎えて強化育成クラブに指定されたチームは、わずか10年で伝統校の厚い壁を打ち破り、光り輝く大学日本一の金メダルを獲得した。
“2009インカレ”の舞台となった「アクアドームくまもと」は、熊本国体を契機に熊本市郊外に建てられた国際大会が可能な巨大ドーム型室内プール。九州の水泳ファンが連日会場に詰め掛け、鈴木聡美・入江陵介ら4人が日本記録を樹立し33個もの大会記録が誕生、各大学の応援合戦の声と観衆の声援が広いドーム内に響き渡った。
■女子400m個人メドレー決勝 ≪坂井菜穂子・山崎ゆか≫
この種目3連覇の懸かった坂井菜穂子(3年 東京立正)は5コース、このレースで競技生活から引退する主将の山崎ゆか(4年 近大附)は2コースから飛び込んだ。人生最後のレースに山崎の心は燃えに燃えた、50mも100mも150mも200mも1位通過、積極果敢に飛び出した。後輩の坂井が先輩を追って2位、300mまでは山学の二人が完全にレースを引っ張った。山崎は最後のクロールで伸びを欠き5位に落ちたが最後のレースで最高のチャレンジをした。坂井は大会新で優勝した打越雅美(鹿屋体大)に逆転されて3連覇はならなかったが4分40秒40の自己ベストの泳ぎ、見事な準優勝に輝いた。山崎ゆかは「力を出し切りました、やり切りました」と語り、坂井菜穂子は「山学がどこよりも強いことを見せました」と語った。
■ 女子100m背泳ぎ決勝 ≪亀崎あゆみ≫
亀崎あゆみ(4年 近大附)にとってもこのレースが水泳人生最後のレース、100mも200mも、これまで何千本泳いだのか、何万本泳いだのか判らないほど泳いで来た。こみ上がってくるものを懸命に抑え、誰よりも思い切り背中を反らしてスタートした。予選8位通過だったが、気持は誰にも負けなかった。最後まで粘り切り、順位を2つ上げて6位でゴールした「たくさんの人に感謝する気持」で泳いだ見事な泳ぎだった。全てのレースを終えた亀崎は万感の思いで涙を流した。
■ 女子200m平泳ぎ ≪鈴木聡美≫
鈴木聡美(1年 九産大九州)はこれまで200mには苦手意識があった。しかし、決勝に進出できたことが自信になり、前半から積極的に飛ばした。50mを1位で通過し100mで3位に下がったが、そこから粘る力が付いて来た。日本新を出して優勝した金藤理絵(東海大)と2位の松島美菜(日大)に次ぐ3位となり200mでも表彰台に上った。鈴木は報道陣の質問に「来シーズンは水着の規定が変わりますが、水着に頼らずに泳ぐ力をつけたい」と答えていた。
男子では、2年生だった昨年奇跡的に大会最終日最後のレース、会場が最も熱くなる800mリレーに進出した3年生カルテットが、今年も同じメンバーで2年連続進出した。結果は8位だったが、第1泳者池田慶太(3年 淑徳巣鴨)は「個人種目では結果を出せなかったが、リレーでは結果を出せた」。第2泳者武田晃則(3年 九産大九州)は「調子は悪かったが、応援する仲間の声に力をもらった」。第3泳者高山裕司(3年 津田学園)は「今年は厳しいと思ったが、また決勝の舞台を楽しむことが出来た」。アンカー山崎智史(3年 山梨学院高)は「予選でチームベストタイを出せて進めた、2日間で7本目のレース、しんどかった〜」と皆笑顔で語った。
この他の種目では、女子100m自由形で前原優理(2年 山梨学院高)が決勝に進み8位入賞を果たした。予選9位から16位が進むB決勝に霜上美智(4年 呉羽)、村上優海(1年 船橋)、男子の山崎智史(3年 山梨学院高)、大須武(3年)が進んだ。
山学大の応援席には萩原智子さん(カレッジスポーツセンター研究員)と加藤ゆかさん(東京SC)の2人の先輩が駆けつけ、後輩と一緒になって声を嗄らして声援を送っていた。
注目の学校対抗得点争いは、女子は346点を獲得して2位の中京大に117点の大差を付ける夢のように見事な初優勝。男子は58点を獲得、13位となった。閉会式で30年ぶりに優勝した男子の法政大に天皇杯が贈られ、初優勝した山学大山崎ゆか主将に奥野杯が贈られた。
山学大ベンチにはこの日のために用意したチャンピオンフラッグが掲げられ、初日から最前列でレースを見守っていた小さいダルマに山崎ゆか主将が、大きいダルマに神田忠彦監督が目入れを行って優勝を祝った。喜びに沸くチームは勝利のポーズを求めるたくさんのカメラの列に向けて、指文字で山学の「山」の字を作り、全員が溢れる笑顔でポーズを決め喜びを分かち合った。
山崎ゆか主将は「初日に鈴木選手が日本記録を出してチームに勢いが出ました。他の大学にはない結束力でチームがまとまり、一人ひとりの力が重なり合って優勝することができました」と分析した。裏方に徹してチームの勝利に貢献した
庄子敬祐マネージャー(3年)は「みんなの努力が実を結んで優勝できました。来年は全員がベストタイムを出せるようにもっとしっかり支えていきたい」と謙虚に語った。
萩原智子さんは「こんなに早く優勝できるとは思わなかった。4年生を中心にまとまり、練習の成果を本番で出してくれた後輩にありがとうと言いたい」と話した。
神田忠彦監督は「A決勝、B決勝に進む選手がたくさん出て来て優勝できた。やる限り満足はない、来年に向けてどう強化していくか、もっと世界を目指すにはどうしたらいいか考えたい」と気持を引き締めていた。
この大会を最後に部活を卒業する4年生は、勝利の涙とともに別れの涙も流した。
亀崎あゆみさん「やめようと思った時もあったけれど、続けてよかった。振り返ってみたら本当にいい仲間に恵まれていました、幸せでした」。
霜上美智さん「みんなが早い女子の中で自分だけ遅かった。つらい時が多かったけど、ちょっとづつ成長して最後に優勝という感激を味わうことができました」。
飯窪麻未さん「1年の時に優勝して、2年・3年と結果が出なくて苦しんで、最後の年に3位の表彰台に立てた、諦めないで努力してよかった」。
山崎ゆかさん「苦しい時も、楽しい時も、今思うと全てが楽しかった。頼もしい後輩ばかりなので安心して引退できます」。“苦しみに耐えた花こそ大輪になる”(M.I)
最終成績
女子ベスト5
1位 山学大346点、2位 中京大239点、3位 鹿屋体大234点、4位 近畿大230点、5位 日体大220,5点、
男子ベスト5
1位 法政大406,5点、2位 中大374,5点、3位 中京大341点、4位 日大337点、5位 早稲田大240点、(13位 山学大58点)
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