
第21回出雲全日本大学選抜駅伝競走“出雲駅伝”が体育の日の10月12日、島根・出雲大社前をスタート、出雲ドームをゴールとする6区間44,5kmで競われた。大学駅伝シーズン到来を告げる大会には、全国から選抜された21チームが参加、2年連続17回目の出場で昨年4位の山梨学院大は4区と5区に起用された地元出雲工出身の4年生大谷健太・康太双子兄弟が大活躍した。兄健太がチームに勢いをつけ、弟康太が区間賞の快走でチームをトップに躍進させた。最終6区のオンディマ・コスマスは区間2位の走りを見せたが、日大のギタウ・ダニエルに41秒差を逆転され準優勝となった。山学大の表彰台は2002年の優勝以来7年振り。日大はダニエルの2年連続逆転劇で2年連続5度目の優勝。3位東洋大、4位早大、5位中大の順位となった。山学大は11月の全日本駅伝、正月の箱根駅伝に向け、最高に近い形の走りで第一歩をスタートさせた。
大学三大駅伝の開幕レースは今年からコースの一部が変更された。3区、4区、5区の距離が変わり、5千m伸びて総延長44,5kmで競われることになった。それでも、11月の全日本(8区間・106,8q)、正月の箱根駅伝(10区間・217,9km)と比較すると短く、持久力に加えてスピードが要求される大会。神在月の神話の国で開催されるタスキのドラマは、戦前の下馬評では箱根優勝の東洋大、総合力の高い早稲田大、2人の留学生を擁す日大の争いと見られ、昨年までの大黒柱メクボ・モグス(現アイデム)が卒業した山学大は厳しい戦いが予想された。
今年の山学大は、1区 後藤 敬、2区 松本 葵、3区 高瀬無量、4区 大谷健太、5区 大谷康太、6区 オンディマ・コスマスの布陣でレースに臨んだ。ゴールの出雲ドームには「風林火山旋風 吹き荒れろ!」の横断幕が張られ、山学大の6人のランナーはその心を火の如く燃やし、出雲路を旋風のように疾走した。
スタート時13時05分の天候は晴れ、気温24,0度、湿度39%、西の風2,0m、山陰の秋にしては日差しの強い秋晴れ、暑さとも戦うレースとなった。
■ 最初の1区(8,0km)には、昨年3区を走った後藤 敬(4年 高千穂)が起用された。予想に反し1区に各校の有力選手が集中した。第一工業大の留学生キラグ・ジュグラが22分30秒の区間新記録樹立の快走でレースを引っ張り、箱根の山上りで鮮烈にデビューした東洋大の柏原竜二が区間タイ記録で続いた。後藤にとっては試練のレースとなったが、エース級ランナーのハイスピードに食らいついて、トップから1分11秒遅れの10位でタスキを渡した。
後藤 敬選手「ペースが速く残り3kmで足が動かなくなったが、そこから粘ってつないだ」。
■ 最短区間の2区(5,8km)はスピードランナーの松本葵(4年鹿児島商) に2年連続託された。トップに京産大が躍り出るなど順位が急変する中で、松本は冷静に前の集団を追い、区間3位の16分24秒のタイムで走り順位を7位に上げた。
松本 葵選手「4km付近から一人旅になったが、自分の走りを意識して最後までバテないで走れた。合宿で長距離を走るテクニックをさらに高めて行きたい」。
■ 向かい風を受ける3区(7,9km)は高瀬無量(3年 市立尼崎)が走った。7位でタスキを受けた高瀬は、トップ集団の6校から30m遅れて走り、駒大のエース宇賀地強には抜かれたが東洋大の渡辺公志を抜き7位をキープした。
高瀬無量選手「最初に突っ込みすぎるレースが多かったが、今回は落ち着いて入ることが出来た。途中で駒大の宇賀地さんに抜かれたが、そこから宇賀地さんについて粘った」。
■ 4区(6,2km)と5区(6,4km)には双子の大谷健太(4年 出雲工)と大谷康太(4年 出雲工)の兄弟が初めて揃って起用された。二人は4年前、一緒に出雲駅伝を走ることを夢見て山学大に入った。血のにじむ努力を重ね最終学年にその夢を掴み取った。4区の兄健太は途中で順位を5位に上げる素晴らしい追い上げを見せた。ラストスパートで7位に戻ったが区間4位の好走、トップとの差43秒差で弟康太にタスキを渡した。
大谷健太選手「最初を抑えずにもっと強気で攻めればあと15秒は早く走れた。最初で最後の出雲、沿道の声援が背中を押してくれた」。
■5区の康太は昨年の4区に続いて2度目の出雲、ぐんぐん飛ばした。タスキを受けた時の順位は1位早大、2位日大、3位中央学院、4位京産大、5位第1工大、6位東洋大に次ぐ7位だった。ここから圧巻の6人抜き激走、18分59秒で区間賞を獲得、一気にトップに躍り出た。
大谷康太選手「健太が前が見える良い位置でタスキを渡してくれた。徐々に順位を上げ残り1kmで仕掛けて1位の早大を捉えた。アップダウンがきつかったが最後までしっかり走れた」。
■ 最終6区(10,2km)各校のエースが集まる最長区間を任されたのはケニア出身、モグスの後継者オンディバ・コスマス(2年 山梨学院高)。中継所では日大は5位、同じケニア出身ダニエル(4年)が41秒遅れで猛然と追ってきた。ダニエルは2年連続のごぼう抜きを演じ28分17秒の区間新を記録、日大を優勝に導いた。コスマスはダニエルには抜かれたものの、区間2位の29分17秒で走り、母校に準優勝をもたらした。
オンディバ・コスマス選手「ダニエルさんに追いつかれてからはいけるところまでいこうと思った。最後までつけなかったのは悔しいが、2位だったけどみんなが喜んでくれたから良かった」。
第21回出雲駅伝 山梨学院大学 総合成績 2位 タイム 2時間10分26秒
区間 |
ランナー |
区間タイム |
区間順位 |
合計時間 |
総合順位 |
1区 |
後藤 敬 |
23,41 |
10位 |
23,41 |
10位 |
2区 |
松本 葵 |
16,24 |
3位 |
40,05 |
7位 |
3区 |
高瀬無量 |
23,22 |
5位 |
1:03:27 |
7位 |
4区 |
大谷健太 |
18,43 |
4位 |
1;22:10 |
7位 |
5区 |
大谷康太 |
18,59 |
1位 |
1・41.09 |
1位 |
6区 |
オンディバ・コスマス |
29,17 |
2位 |
2:10:26 |
2位 |
上田誠仁監督は「オーダー表を見て1区が荒れると思った。後藤が流れの中にぎりぎり踏みとどまり、あとは一人ひとりが少しずつ順位を上げてくれた。入学したときから出雲で“健康リレー”をすることを目標にしていた大谷兄弟が地元でモチベーションを上げて良く走ってくれた。この結果がそのまま通用するものではないが、全日本・箱根に再挑戦する闘争心を高めてくれた」と開幕レースを振り返った。
飯島理彰コーチは「悔しいけれど、良くやった。大谷兄弟は、地元でプラスアルファの力を発揮してくれた。今回は合格点、全日本・箱根に向けてしっかりやって行きたい」視線を11月と正月に向けた。
大会最終成績、5位でタスキを受けたダニエルが昨年自身が作った記録を上回る区間新(28分17秒)の力走で4人を抜き、日大が逆転優勝、2位山学大、3位東洋大、4位早稲田大、5位中央大、6位立命館大、7位第1工業大、8位京産大、9位大東大、10位駒沢大となった。
閉会宣言の挨拶で大会組織委員会会長の長岡秀人出雲市長は「21回を数える大会で地元出身選手が区間賞を取ったのは初めて、兄弟で盛り上げてくれた」と大谷兄弟の健闘を称えた。(M.I)
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