山梨学院パブリシティセンター
全国高校サッカー選手権 1回戦
〜山梨学院高が強豪の野洲高を4−2で撃破〜
〜山梨県勢5年ぶりの2回戦進出を決める〜

第88回全国高校サッカー選手権は大晦日に首都圏8会場で1回戦15試合を行った。山梨代表の山梨学院高校サッカー部は、さいたま市駒場スタジアムで優勝候補の一角滋賀代表の野洲高校と対戦した。野洲高は4年前の優勝校で5年連続6回目出場の強豪チーム。初出場の山学チームは厳しい戦いが予想された。しかも、先制したのは野洲高だった、前半9分にフリーキック(FK)のボールをヘディングで決められ、前半は野洲リードで折り返した。しかし、山学イレブンは後半開始早々に自力で流れを変えた。後半1分に得たFKのボールをDF関 篤志が頭で合わせ同点、3分にFW佐野敬祐が前線に飛び出しGKをかわし連続得点、瞬く間に一気に逆転した。18分に主将のMF碓井鉄平が追加ゴール、21分に野洲に2点目を許したが、39分にフィールドを縦横無尽に走り回った俊足FW伊東拓弥がダメ押しゴール、4−2として見事な逆転劇で初出場初勝利をあげた。山学チームは底知れない強さで下馬評を覆し、この4年間1勝も出来なかった山梨県勢に5年ぶりの勝利をもたらした。
“青い稲妻たち”がさいたま駒場スタジアムで、“青い旋風”を巻き起こした。
天候は晴れながら、風雲急を告げる風が吹き始めた午後0時05分、試合は野洲高のキックオフで始まった。山学の布陣はいつも通りのダブルボランチ+ワイドMFの4−4−2システム。これに対し野洲は、いつもの3−5−2システムではなく、4−2−3−1の4バックに変えて臨んで来た。野洲はサイドで起点を作り、山学DF陣の裏にボールを上げる縦攻撃とドリブルで中央突破を図る攻撃を序盤から仕掛けて来た。そして、前半9分のFKを生かし、セットプレーからDF春日翔太がヘディングシュートを決め先制した。山学は2トップのFW伊東拓弥(3年)とFW佐野敬祐(3年)が野洲DFの裏スペースへ飛び出し、縦を意識した攻撃を展開するが野洲DF陣を崩すには至らず、前半は0−1、野洲リードで折り返した。

バックスタンドの応援席は全校応援の900人の生徒と保護者らで埋め尽くされた。生徒会も応援委員会も吹奏楽部も一丸となって応援した。チアリーダーの中には部活を卒業したはずの3年生も加わっていた。誰もが寒風の中で熱い声援と熱い視線をピッチに送り続けた。劣勢で向かえたハーフタイム、応援席で大声を張り上げていた野球部の松浦航平主将と小林夏樹選手は「甲子園で応援してもらった。今度は僕らが応援する番、相手は強いし負けているけど、後半きっと巻き返します」メガホンを持つ手に力を込め、声をさらに張り上げた。吹奏楽部の金子英未主将は「すごい場所に連れて来てもらって感動しています、フィールドに届くように皆で力を合わせて吹きます」ピッコロを持つ手とその音に勝利への願いを込めた。

サイドが変わった後半開始と同時に、山学の怒涛の反撃が始まった。開始1分に得たFKのチャンス、主将碓井鉄平(3年)の蹴ったボールを相手ゴール前に詰めたDF関 篤志(2年)が、182cmの長身を利して野洲DF陣に競り勝ち同点ゴール。その2分後、高い位置から相手にプレッシャーをかけ続けていたFW佐野敬祐が、相手のバックパスに反応して猛然と飛び出し、GKをかわし無人のゴールに蹴り入れ一気に逆転した。わずか3分の間に2点、奇跡が起きたような瞬く間だった。そして、山学は完全に波に乗った。18分に碓井と伊東がワンツーリターンを繰り返して相手DF陣を翻弄し碓井がGOAL。21分に味方DFの不用意なプレーから野洲の松田康佑に失点を許したが、ここで健闘して来た佐野に変えて長身FW加部未蘭(2年)を投入、相手に行きかけた流れを食い止めた。あと15分、応援席は時に総立ちになり、時に悲鳴を上げ、時よこのまま過ぎてくれと祈った。そして向かえた39分、この日フィールドを縦横無尽に走り回り、その雄姿を全国のサッカーファンの目に焼き付けた俊足FW伊東拓弥が見事な飛び出しからダメ押しゴールを奪った、4−2。あとはもうロスタイムの2分が過ぎるのを待つだけだった。山梨学院は見事な逆転劇で初出場初勝利をあげた。

全国高校サッカー選手権大会 1回戦 (12/31)於 埼玉・さいたま市駒場スタジアム
山梨学院高 4
{前半0−1}
2 野洲高(滋賀)
{後半4−1}
得点 関篤志・佐野敬祐・碓井鉄平・伊東拓弥/春日翔太・松田康佑(野洲)

同点シュートを決めた関 篤志選手「良いボールに合わせただけ、県大会を含めて初得点、初めてで興奮しました。ディフェンスは良くなかった、反省です」。俊足で得点を奪った伊東拓弥副主将「素直に嬉しい。野洲に勝ったことで天狗にならず、もっと切り替えを早くして、もっとパスを回して、もっといいサッカーをしたい」。碓井鉄平主将「勝ててほっとした。最初のセットプレーで取られて一瞬真っ白になったが、始まったばかりと気持ちを切り替えた。佐野が良くゴールを奪ってくれた、あれで落ち着いた。攻撃は良かったが、守備に課題が出た、2日間で修正する」。吉永一明ヘッドコーチ「相手が4−4−2で来てくれて、自分たちにとってはやり易いゲームになった。ハーフタイムに整理して修正しいつも通りに出来たと思う。1年を通じ1戦ごとに強くなるようにして来たが、このあとも1戦1戦強くなれるようにしたい。2回戦の相手についてはしっかり分析して選手に伝える」。横森巧監督「立ち上がりの失点で多少力んだが、得点を奪えなかっただけで前半から自分たちの組み立ては出来ていた。ハーフタイムに『自信を持って行こう』と選手に話し、後半早々に同点・逆転してくれて落ち着いてくれた。加部はケガの様子を見てゲームに慣らさせた。おかげさまで勝つことが出来て良かった。次もまた、頑張るだけです」。

戦いを振り返ると、横森巧監督の前日の言葉が勝敗の行方を暗示していた(前日、横森巧監督は報道陣の質問に「自分の持ち味を出せたチームが勝ち、出せなかったチームは勝てない」と答えていた)。山学チームはいつも通りの4−4−2システムで自分たちのサッカーを追求した。野洲高はいつもとは違うシステムで試合に臨んだ。自分の持ち味を出した山学が勝ち、余所行きのサッカーをした野洲が敗れた。山学チームは、次の試合も自分たちの持ち味の追及に努める。ボールを持ったら、相手のゴールを見る、ボールを奪われたら、すぐに奪い返す、どこからでも攻撃を始め、どこからでも守備を始める。自分たちが作り上げて来た自分たちのサッカーで、正月2日、埼玉スタジアム午後2時10分キックオフで立命館宇治高と2回戦を戦う。 (M.I)
| アルバム1 | アルバム2 |
Copyright (C) 2008 YGUPC. All Rights Reserved.