新春恒例の第86回東京箱根間往復大学駅伝競走(往路)は1月2日、東京・読売新聞前から神奈川箱根芦ノ湖駐車場入り口までの5区間(108・0キロ)で行われた。24回連続24回目出場で総合優勝3回、準優勝5回の山梨学院は、1区 松枝翔(2年・鹿児島)、2区 高瀬無量(3年・市尼崎)、3区 オンディバ・コスマス(2年・山梨学院)、4区 後藤敬(4年・高千穂)、5区 大谷康太(4年・出雲工)とエントリー変更はないオーダーで臨んだ。1区の松枝はハイペースのレースを残り3キロの六郷橋まで第一集団で好走し流れを呼び込む7位、2区の高瀬は日大のギタウ・ダニエル(4年)に抜かれるものの早稲田大、専修大、学連選抜、東洋大、中央大を抜き3位(区間 7位)に順位を押し上げた。3区のコスマスは日大を抜き2位(区間2位)へ浮上。4区は4区が3回目の後藤がまさかの走りで、日体大、東農大、日大に抜かれ5位(区間14位)に後退した。しかし、往路最終5区・双子弟の大谷は東洋大の2年連続区間賞ペースで激走する柏原竜に抜かれたが、惑わされることなく冷静な判断で深追いせずにクレバーな走りで、日大、東農大、日体大、明治大を抜き、5時間35分38秒の2位(区間2位)でゴールテーブを切った。なお、往路優勝は2年連続2回目の東洋大学。東洋大学の5区柏原は、1区から4区までトッブを死守した明治大から4分26秒差の7位で襷を受けたが、タイム差と順位を物ともせずに2年連続の区間新となる山登りのスペシャリストの走りで、東洋大に往路優勝をもたらした。明日の復路、山梨学院は15年ぶり4回目の総合優勝を目指し、午前8時00分の東洋大がスタートした3分36秒後にスタートを切る。
■1区(21・4キロ 大手町⇒鶴見) 松枝 翔 (まつえだ しょう)[2年・鹿児島]
上田誠仁監督は流れをつくる大事な1区に、全日本区間2位の松枝翔(2年・鹿児島)を迷わず抜擢した。午前8時00分、大手町・読売新聞前のスタートラインに後列に予選校が前列にシード校が立ち、20チーム(学連選抜を含む)が号砲とともに一斉にスタートを切った。
松枝は緊張していたが監督やコーチに「練習はできているので、集中して行け」と声を掛けられて「心地よい緊張感に変わった」と、前列右から3番目のスタートをきり、左に曲がり日比谷通りへ出た。レースは関東学連(神大)を先頭に早大、明治と続き、松枝は中盤をキープ。1キロ2分53秒と早いペース。5・5キロ付近で亜細亜大が脱落。10キロ29分7秒とハイペース。12キロ付近で先頭集団は7名に、「監督に走る前から『1区はハイペースで推移する』と言われていたので心の準備はできていた」と「まだまだ余裕があった」と快走。しかし、18キロ付近の六郷橋の上り坂で「明大のスピードの切り返しに対応できなかった」と、集団が崩れ縦に1列になり松枝は7位に なるものの 、2区の高瀬に「最低限の活躍ができた」と襷を託した。
□ 総合・区間7位 1時間3分16秒
□1位 明治大・2位 早稲田大・3位 専修大・4位 学連選抜・5位 東洋大・6位 中央大・7位 山梨学院・8位 城西大・9位 青学大・10位 法政大(シード校圏内)
■2区(23・2キロ 鶴見⇒戸塚)高瀬無量(たかせ むりょう)[3年・市尼崎]
□花の2区、高瀬は鶴見中継所のテレビで「下級生の松枝が、稀に見るハイペースにも拘らず、確り集団に付く走りを見て刺激を受けた」と、自分を奮い立たせた。高瀬から襷を受け取ると「レースは設定に従って確り走ろうと」と、オーバーペースにならないように自重した走りで1キロを入った。「2キロか3キロ地点で城西大(8位)に追いつかれたが、焦りはなかった」と慌てずに一緒に走る。4キロ手前で中大を抜き、5キロ付近で東洋大と学連選抜、専大に城西大とともに追いつき「体を休めながら並走」。8・3キロの横浜駅前を1位明大、2位早大の後、高瀬は学連選抜・東洋大・専大・城西大の3位集団を引っ張る。15・1キロの権太坂頂点で高瀬が仕掛けて、前を行く早大を 抜き2位に 躍り出た。12位で襷を受けて9人抜きして来た日大のダニエルに、18・9キロ付近で抜かれたが、そのまま3位で戸塚中継所で待つコスマスに襷を渡した。高瀬は順位を4位上げる活躍は光ったが、区間7位とタイム的にはトップとの差をプラス7秒の56秒とされた。
□ 総合3位 2時間12分19秒 [区間7位 1時間9分3秒]
□1位 明治大・2位 日大・3位 山梨学院・4位 東海大・5位 青山学院・6位 東農大・7位 東洋大・8位 早稲田大・9位 城西大・10位 中央大(シード校圏内)
■3区(21・5キロ 戸塚⇒平塚)オンディバ・コスマス [2年・山梨学院]
□箱根デビューのコスマスは、襷を受け取ると4・5キロ付近で15秒差の日大を追い抜き快調に走る。しかし、6・2キロ付近の上がり坂で日大に肉薄される。コスマスは下りを利用してペースを上げて日大を再び引き離した。8・2キロの藤沢では前を行く明治大に39秒縮め17秒差に追い上げる激走。コスマスは12キロを過ぎ、茅ヶ崎の海岸線にでると「寒くなりペースダウンした」と、残り7キロ付近の茅ヶ崎では前を行く明治大との差が27秒と広がった。コスマスは「区間賞を狙ったが駄目だった。トップも奪えなかった。走りは良くなかった」と反省しきりの走り、それでも1位・明治大との差を4秒縮め2位で平塚中継所で待つ後藤に襷リレーした。
□ 総合2位 3時間15分23秒 [区間2位 1時間3分4秒]
□1位 明治大・2位 山梨学院・3位 早稲田大・4位 日体大・5位 日大・6位 東農大・7位 東海大・8位 青山学院・9位 東洋大・10位 中央大(シード校圏内)
■4区(18・5キロ 平塚⇒小田原)後藤 敬 (ごとう たかし)[4年・高千穂]
□後藤は、「コスマスは1位か2位でくると思っていた。落ち着いて自分の目標のタイムで走ろうと」襷を受け取り走り出した。1キロ地点で「時計を見て、思ったよりペースが遅い事に驚いた。自分の感覚がズレている。徐々にペースを上げようと務めたが、思うように上がらない」と、凄い向かい風に惑わされた。5キロ地点で足が痺れて急激にペースが落ちた。8・9キロ付近の二宮で日体大に抜かれた。15・5キロ酒匂橋では日大、東農大に次ぐ5位で通過。「リズム取り戻そうとしたが取り戻せなかった」と5位と後退し、小田原中継所の大谷に襷を繋いだ。
□ 総合5位 4時間14分22秒 [区間14位 58分59秒]
□1位 明治大・2位 日体大・3位 東農大・4位 日大・5位 山梨学院・6位 早稲田大・7位 東洋大・8位 中央大・9位 青山学院・10位 城西大(シード校圏内)
■5区(23・4キロ 小田原⇒箱根)大谷康太 (おおたに こうた)[4年・出雲工]
大谷は「レース状況が気になったが集中して自分の持ち味が十二分に出せるようにアップに集中した」と、入念にアップした体をリラックスさせて沿道を走り出した。1キロは「思ったよりペースが早かった」。3・6キロで日大を捕らえ抜くが、早稲田大と並走となり4・3キロで東洋大の柏原に追いつかれ抜かれるが「柏原に付いて行く気持ちを堪えて、自分の走りに徹した」と、東洋大に付く早稲田大にも差を付けられて6位に後退した。7キロから8キロで早稲田大が、その後に東農大を抜き、9・5キロの大平台を4位通過、「10キロ付近で両足が痙攣したが、監督に吸水を求めてやや回復した」と、14・3キロの小涌園前も4位で通過して行く。その後、中央大に抜かれるが17 キロ付近で 中央大を抜き返し、目の前に迫って来た明治大をも抜き3位に。大谷は18・3キロの芦乃湯も3位で通過し、18・8キロで日体大を抜き去り2位に上がった。大谷は「今シーズンの国体3000メートル障害で8位入賞、全日本で区間賞で自信がついた。最後に沿道で大勢の人に応援され、箱根を実感しながら理想的な走りができた」と、 クレバーな走りで5時間35分38秒で総合2位(区間2位)と、明日へ繋がるゴールテーブを切った。
□ 総合2位 5時間14分22秒 [区間14位 58分59秒]
□1位 東洋大・2位 山梨学院・3位 日体大・4位 中央大・5位 東農大・6位 明治大・7位 早稲田大・8位 駒澤大・9位 青山学院・10位 城西大(シード校圏内)・11位 学連選抜・12位 東海大・13位 日大・14位 上武大・15位 帝京大・16位 中央学院・17位 専修大・18位 法政大・19位 亜細亜大・20位 大東大 ※12位以降は繰り上げスタート。
■岩田真澄主将(4年・富山商)は「往路は、今までやって来たことを、それぞれ選手は出し切ってくれた総合2位だったと思う。明日、復路の選手も部員の思いと今まで積み上げて来たものを、襷に込めて全力で走ってもらいたい。また、応援に回る部員は声援が選手の背中を押して選手の力になると思うので確り応援し、チーム一丸となって頑張りたい」と、述べた。
■飯島理彰コーチは「1区の松枝は良い流れをつくってくれた。予定どおり六郷橋までは完璧だった。2区の高瀬は順位を上げてくれた。しかし、3区と4区で2分ロスしたが、5区の大谷の好走で悪い流れを断ち切ってくれた。明日は、先頭とは3分差を付けられているが、巧みなコース取りと自分たちの適正ペースを守り、確り走ってもらいたい」と述べた。
■上田誠仁監督は「1区の松枝は、10キロ29分7秒というハイペースのレースにも拘らずベスト記録を30秒上回る走りで、十分山梨学院に流れを引き寄せてくれた。2区の高瀬は、城西大に追いつかれたが落ち着いて15キロで仕掛け、ダニエルに抜かれたものの3位と順位を上げてくれた。3区のコスマスは入りが早く後半に、その付けが回って来て自滅した。4区の後藤は3回目の4区、自信を持って走ってもらいたかった。3区と4区で1分半から2分失った。こうした嫌な流れを5区の大谷が、確り走り断ち切ってくれ、復路へ望みを繋いでくれた。明日は、ハートは熱く、頭はクールに、走りは堅実に、チャレンジ・アゲイン(再挑戦)スビリットで頑張ってもらいたい」と語った。(H.K)
| アルバム往路 | アルバム応援 |