
第88回全国高校サッカー選手権大会は1月3日、首都圏4会場で3回戦8試合を行った。1回戦で滋賀代表の野洲高校、2回戦で京都代表の立命館宇治高校を下し3回戦に進出した山梨代表の山梨学院高校は、香川代表の香川西高校とさいたま市駒場スタジアムで対戦した。試合は、初出場ながら驚異的なスピードと攻撃力を持つ山梨学院が、優勝候補の前橋育英高校を下して進出して来た香川西を圧倒する展開となった。前半終了間際に得たCKのチャンスでDF中田寛人がヘディングシュートを決めて先制、後半25分に得意のパス回しからMF平塚拓真が追加点を上げ2−0、香川西に反撃の機会すら与えず圧倒した。山梨県勢のベスト8進出は、横森巧監督自身が韮崎高校を率いて昭和58年に進出して以来26年ぶり。山学チームは、5日に熊本代表のルーテル学院と“国立”を賭けて準々決勝を闘う。
試合は前日と同じ開始時間、午後2時10分に山梨学院のキックオフで始まった。両チームの布陣は、ともに4−4−2のダブルボランチを置くシステムでスタートした。香川西はシンプルに相手の背後にボールを送り込み、FW陣が競ったセカンドボールを拾いチャンスを窺う作戦。一方山学は高い位置からプレッシャーをかけ、奪ったボールを有効なスペースに運び、司令塔の主将碓井鉄平を中心にパス・ドリブルを使い分けてリズミカルな攻撃を展開した。3試合目の山学イレブンは序盤から落ち着いた動きを見せ、徐々に相手の動きを封じ圧倒し始めた。そして、前半終了直前に待望の先取点が入った。CKのチャンスにニアサイドに走り込んだDF中田寛人(3年)が華麗に舞ってヘディングシュート。先制した直後にハーフタイムとなった。
バックスタンドは、この日も応援バスで駆けつけた全校応援の生徒の声援に包まれた。校歌の演奏で皆の心を一つにし、時にはガッチャマンのテーマで選手を鼓舞する吹奏楽部の最後段で仁王立ちになり、重さ8kgのスーザフォンを肩に担いで演奏を続ける
村上 昇部員(1年)は「自分はGKの松田ラン選手が素晴らしい守護神だと思います。スーザフォンは重くて肩が張るけど、サッカー部の選手はもっとキツイと思う。選手が全力でプレーしているのだから、自分も全力で演奏します」と肩に力を込めた。最前列で“応援団長”の襷を掛けて声を張り上げていた3年生のサッカー部員
洞澤秀作選手は「ベンチ入り出来なかったのは悔しいが、自分にとっても最後の大会、応援団長として自分も皆と一緒になり皆の力になりたい、全力で応援します」笑顔で声を枯らしていた。
サイドが変わった後半は、山梨学院がボールの約8割を支配した。たまに香川西に攻め込まれる場面はあったものの、DF陣が落ち着いて捌き、決定的場面は作らせなかった。ただ山学攻撃陣もゴール前まではいい形で攻め入るものの、最後の詰めの精度を欠いた。一方的に押しながらもなかなか得点を上げることが出来なかった。追加点が入ったのは後半25分を過ぎてからだった。健闘したFW佐野敬祐(3年)に変わり後半17分から投入されたFW加部未蘭(2年)・MF平塚拓真(3年)・MF碓井鉄平の3人が山学得意のワンツーリターンのパス回しで相手を翻弄し、最後はゴール前に走り込んだ平塚がシュート、ようやく突き放した。そのあとはDF陣を中心にしっかりと守り切った。
全国高校サッカー選手権大会 3回戦 (1/3)於 さいたま市駒場スタジアム
山梨学院高 2 |
{前半1−0} |
0 香川西高
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{後半1−0} |
得点 中田寛人 平塚拓真 |
先制ゴールを決めた
中田寛人選手「得意のニアサイドに走り込んだら、いいボールが来たので、流す感じで合わせた。ゴールを決めたのはインターハイ予選以来、前半で1点取れて流れが良くなった。チャレンジャーとして初心を忘れず、上を目指します」。追加点をあげた
平塚拓真選手「自分のプレーは前半は良くなかった、後半は時折意図的に中に入り点を取った。自分の持ち味は良いクロスボールをあげること。ここまではいいボールをあげていない、もっと精度をあげたい」。司令塔の
碓井鉄平主将「前半は前に行き過ぎた。ハーフタイムにコーチからもっと落ち着いて回せと言われ、後半は落ち着いてボールを回せた。チーム全体のまとまりが良くなって来た」。報道陣の質問に
横森巧監督「碓井はうちの心臓部、チームにとって欠かせない存在。平塚がやっと点を取ってくれた、もっとできるはず次も期待する。加部は医師から20分程度までと言われている、彼には1分でも多く全国を体験させたい。選手はみなケガを負い疲労も溜まっている、明日は軽めのトレーニングで調整して明後日に備えたい。九州勢はどこもみな強いが、折角チャンスをいただいたので、ありがたく挑戦させてもらう、死に物狂いで頑張ってくれるでしょう」。
初出場ながら全国を相手に怯むことなく“青い旋風”を巻き起こして快進撃を続ける“青い稲妻たち”は、憧れの舞台“国立”まであと1勝と迫った。俺たちの思いを胸に、3日と同じさいたま市駒場スタジアムで5日14時10分、熊本代表ルーテル学院とベスト4を賭けて対決する。 (M.I)
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