
第88回全国高校サッカー選手権大会は1月5日、準々決勝4試合を行った。初出場ながら強豪校を次々に打ち破り、破竹の勢いでベスト8に進出した山梨代表の山梨学院高校は、2年ぶり2回目出場の熊本代表ルーテル学院高校とさいたま市駒場スタジアムで対戦した。山学の攻撃陣は高い位置からプレッシャーをかけて相手ボールを奪い、敵陣に激しく切れ込んだ。そして、守備陣は2人のセンターバックが相手のエースストライカーを完全に抑えこみ、ルーテル学院の攻撃をことごとく封じた。前半は0−0で終了したが、後半5分に左サイドバックの藤巻謙が30mはあったであろうロングシュートを豪快に決めて先制、そのままゲームを支配して押し切った。ベスト4に進出したのは、山梨学院、矢板中央、青森山田、関西大第一の4校、山学チームは、9日に栃木代表の矢板中央高と夢の舞台“国立競技場”で戦う。寒風が時折強く吹く晴天のさいたま市駒場スタジアム、山学イレブンは試合前に応援席に駆け寄り、一礼してフィールドに散った。試合は午後2時10分、ルーテル学院のキックオフで始まった。山梨学院の布陣は、いつも通りの中盤ダブルボランチ型の4−4−2システム。ルーテル学院の布陣は4−2−3−1のシステム。序盤はお互いに中盤ではボールを回せるが、ゴール前には攻め入れない静かな立ち上がり、一進一退の状態が20分過ぎまで続いた。この日の山学イレブンは落ち着いて、冷静に試合を運んだ。序盤はワンプレーごとにマークを確認、20分過ぎから次第に試合を支配して行った。前半は山梨学院押し気味で0−0で折り返した。
バックスタンドの山学応援席は、応援バスで駆けつけた900人の全校応援と保護者らで満員に膨れ上がった。年末の全国高校駅伝で都大路を走った駅伝部女子の
田中里美主将(3年)は「特に同級生の3年生は最後の大会なので、頑張ってほしいです。国立のゴールまで思い切り走ってほしい」。甲子園出場の原動力となった野球部のエース
山田祐也投手(3年)は「自分たちは甲子園で悔しい思いをしたが、サッカー部には悔しい思いはしてほしくない。国立に行って笑顔で終わってほしい」。2人の全国経験者は熱い思いでサッカー部にエールを送った。
サイドが変わった後半は、山梨学院が序盤から一気に攻勢を強めた。そして6分にその時が来た。左サイドを駆け上がった左サイドバックの藤巻謙(3年)が、右からのパスを左足でダイレクトにシュート、30mはあったであろうロングシュートはGKの差し出した左手の先をくぐり抜け、ゴール右隅のネットを揺らした。この1点が試合の流れを決めた。ルーテル学院は攻撃的にならざるを得なくなり、最前線で待つエースストライカーの山本大貴にボールを出そうとするが、山学MF陣が高い位置でパスを潰し、たまに前線に上がったボールに対してはDF関 篤志(2年)とDF中田寛人(3年)の2人のセンターバックが山本と競って防ぎ、ほとんど攻撃させなかった。ピンチらしいピンチは試合終了直前のロスタイムでの2連続CKだけだった。山学イレブンはこの緊張の場面でも、体力と気力を振り絞り見事に防ぎ切った。ついに試合終了、1−0、その瞬間イレブンは夢のまた夢と思っていた“国立”を手に入れた。
全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 (1/5)於 さいたま市駒場スタジアム
山梨学院高 1 |
{前半0−0} |
0 ルーテル学院高
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{後半1−0} |
得点 藤巻 謙 |
貴重な決勝点を挙げた
藤巻 謙選手「ゴールの瞬間はビックリした。ボールが勝手に飛んでいって入ってしまった感じ。6月に足首の靭帯を痛めて故障し、戦列に復帰できるか判らなかったが、皆に励まされて選手権に間に合った。崖っぷちから這い上がってやっと取った1点、良かった」。
碓井鉄平主将「風下の前半を0−0で折り返せたので、ハーフタイムで風上の後半はいけるぞと皆で気合を入れた。謙の1点で落ち着いた、守備が安定して来たので守りきる自信はあった。準決勝の矢板中央戦も気持で負けないこと、いつも通りのプレーを心がける」。
吉永一明コーチ「負傷や疲労で選手のコンディションが厳しかったので、厳しい試合になるかなと思っていたが、数少ないチャンスを生かしたのはチームが成長した証。少し間が開くのでいい状態でグランドに立てるように調整したい。国立ということはあまり意識せずに、地に足をつけ、気持を強く持って臨む」。
横森巧監督「ここまで来るのがいかに大変かということを知っているので、ここまでこれるとは思っていなかった。生徒にはやる以上は目指せと言って来たが、夢のまた夢だと思っていた。ここまでの8得点は7人で取っている、エースはいないがどこからでも攻撃できる、DF陣も良く頑張っている、生徒は成長している」。
憧れの選手権で“青い稲妻たち”は努力と体力と気力で、プルシアンブルーの“青い旋風”を巻き起こし、ついに“国立”を手に入れた。夢舞台に挑む選手たちはいったん山梨に帰って疲労を取り、1月9日(土)12時05分キックオフの準決勝戦に臨む。 (M.I)
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