山梨学院パブリシティセンター
サカオリ・ダイアログ2009 小菅ゼミ公開セミナー
〜“報道”と“記憶”という側面から歴史を考える〜
〜学生や市民およそ50名が参加し、議論を深める〜

山梨学院生涯学習センターは1月20日、山梨学院50周年記念館生涯学習センター講義室でサカオリ・ダイアログ2009(小菅ゼミ公開セミナー)「報道が証言する戦争の記憶と現代」を開催した。サカオリ・ダイアログは毎年この時期に実施され、今年は学生や市民およそ50名が参加し、第T部でフリージャーナリストの産経新聞元記者でアジア問題を専門とする加藤裕氏が「ジャーナリストの見た戦争−戦前、戦中、戦後−」と題し基調講演を行い、第U部で東京女子大学現代教養学部国際社会学科の黒沢文貴教授が“戦争の記憶と記録”についてコメントした。さらに学生登壇者が戦時報道や戦後教育について発言し、質疑応答ではフロアが開かれ議論が深められた。
サカオリ・ダイアログは毎回、山梨学院大学小菅ゼミナールの公開セミナーとジョイントする形で開催され、法学部政治行政学科の小菅信子教授が総合コーディネーターを務め、政治行政学科3年の鈴木彩乃さんが学生アシスタントとして講師紹介や進行の補助を行い、小菅ゼミに所属する政治行政学科4年生の学生3名が登壇し学生報告を行った。
第T部の基調講演では産経新聞元記者の加藤裕氏が「ジャーナリストの見た戦争−戦前、戦中、戦後−」と題し、自身の幼少期、少年時代の戦争体験から感じた戦前、戦中の戦勝報道や大本営発表の矛盾、子どもながらに感じた報道の在り方について語った。また、戦後、産経新聞の中東特派員として活躍した経験を語り、ジャカルタ支局長を務め特派員として当時のインドネシア国内の情勢を報道した際は、検閲が厳しく外国語で記事を送ることもあり、そのことについて「日本では外国語の記事を翻訳し掲載するので、外国人から見た視点の記事調になってしまう。当時の新聞は外国の影響が少なからずあった」と戦時下・混乱下での報道の実情について語った。
第U部では、日本近現代史の専門家で歴史問題にも詳しい東京女子大学現代教養学部の黒沢文貴教授が「戦争の<記憶>から<歴史>へ−今日的展望−」と題し「戦争の“記憶”を“記録”化することで、その記録が歴史の資料にもなる。記憶がそのまま歴史の元になるわけではなく、記録化して資料化することが必要で、どういう風に記録し資料化するかが重要になる。さらにその資料は当時の立場、視点に立って考察し、多方面から研究・検討されなければならない」とコメントした。また、学生報告者の臼井千暁さんは「歴史の見方は各国様々あり、正しい歴史がどれなのかは色々な論争がある。一つの見方から歴史を考えると偏った考え方になるため、色々な角度から学ばなければいけない」と歴史教育についての考えを述べた。さらに、大森麻美さんは「メディアやインターネットからは沢山の情報が伝わるが、若い人が戦争理解で注意することは何か」と加藤氏に質問を投げ掛けた。これに対し加藤氏は「インターネットなどの情報には昔の情報はほとんどない。正しいかどうかは書籍や歴史資料を色々な角度から読む必要がある」と答えた。学生報告の後、フロアが開かれ参加者からの質疑応答があり、戦時報道や捕虜問題などについて相互で考えを深め盛況のうちに閉会した。
今日の報告のために約1か月かけて研究したという4年の村上聡さんは「こういう貴重な機会を与えてもらえて感謝しています。色々な年代の方と議論することで自分の考えも深まり、今後の経験に有益なものになりました」とセミナーの感想を述べた。(Y.Y)
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