山梨学院パブリシティセンター
第十一回酒折連歌賞 表彰式
〜大賞の佐藤八重子さんら5人に賞状授与〜
〜初の山梨県内在住・最高齢大賞受賞〜

第十一回酒折連歌賞の表彰式が2月22日、山梨学院大学広報スタジオで行われた。表彰式には、大賞・文部科学大臣賞を受賞した佐藤八重子さん(甲府市)と佳作の遠山久美子さん(富士吉田市)・大和田百合子さん(千葉県印旛村)・藤倉清光さん(岩手県盛岡市)、それに高校生以下を対象に将来楽しみな才能を見出すことを目的に設けられているアルテア賞最優秀に選ばれた石川 直樹君(早稲田大学高等学院)の5人が出席した。大賞の佐藤八重子さん(83歳)は地元甲府市在住、山梨県内居住者の大賞受賞は大会11年目にして初、合わせて最高齢の大賞受賞者となった。表彰を受けた佐藤八重子さんは「いつ終点になるか判りませんが、これからもまっしぐらに走っていきたい」と喜びを語った。廣瀬直人選考委員長は「あれもこれもではなく、あれかこれかにする事が大切、今回は例年以上に素晴らしい片歌が多かった」と選考を振り返った。


今年度の大会応募句数は37,560句、第十回記念大会として問いの片歌を5句に増やして実施された過去最高の昨年(52,703句)を下回ったものの、通常の4句で実施された1昨年の34,652句を大幅に上回る応募句が寄せられた。インドネシアのジャカルタ日本人学校に通う佐々木浩志君(11歳)の作品が、外国で学ぶ日本人学校生徒として初の100選(アルテア賞)に選ばれるなど、海外からも数多くの句が寄せられた。
主催者を代表して挨拶した古屋忠彦山梨学院大学長は「格調高い文学形式の連歌に取り組んでいる事を誇りに思います、これからも何度でも大賞を目指して応募していただきたい」と受賞者に語りかけた。川手千興酒折連歌賞実行委員長は「全国の335校で授業の一環に組み込み団体応募してくれた結果、この手の文学賞では珍しく、応募者の60%を10代が占める割合となった。ジャカルタ日本人学校の中学生がアルテア賞を受賞するなど、酒折連歌が若い世代にも広がり嬉しく思います」と述べた。

大賞・文部科学大臣賞を受賞した佐藤八重子さんの作品「もうおそいいやおそくない八十三歳」は、問いの片歌「近道を知っているからこそ走り出す」への答えの片歌。選者の今野寿美選考委員は「一瞬ひるみながら、すぐに言葉を継いでそのためらいを確信的に打ち消す。転換の鮮やかさと堂々たる押し出しが、今回は断然引き立っていました」と選評した。草色の着物姿で出席した佐藤八重子さんは「思いがけない受賞に信じられないような心地です。いつ終点になるか判りませんが、これからもまっしぐらに走っていきたい」と瞳を少女のように輝かせて喜びを語った。

佳作の遠山久美子さん(60歳)の作品「跳びこえた小川も空と同じ夕焼け」は、問いの片歌「近道を知っているからこそ走り出す」に答えたもの。もりまりこ選考委員は「疾走感を放つ問いかけに対し、時の速度をゆるめてみせる工夫に満ちた世界を提示した」と答えを絶賛した。遠山久美子さんは「夕方、家の窓から夕焼けを眺めていた時に、子供の頃を思い出し、ふっと心に浮かびました。受賞と共に、この歌は私の宝物になりました」と作句を振り返り、喜びを言葉にした。

佳作の大和田百合子さん(34歳)の作品「メルカトル図法と恋を知った教室」は、問いの片歌「目を閉じてあの夏の日のひかりを歩む」への返歌。三枝昴之選考委員は「勉強だけでなく、恋だけでもない、恋と勉強がワンセットになったところに、まばゆくて遠い[あの夏の日]が浮かび上がった」と称賛した。大和田百合子さんは「初めての応募、知らせを聞いて涙が出ました。大賞を取られた方のお話を聞き、私も80歳を過ぎても歌を作ろうと決意しました」と率直な気持ちを静かな口調で述べた。

佳作の藤倉清光さん(74歳)の作品「閉校の朝礼台に爪立つ素足」は、「ふるさとに集まっている山を数えて」に答えた歌。廣瀬直人選考委員長は「この歌の良さは[爪立つ素足]にあります。感情的な言葉は使わずに具体的な動作で表した所に、短い表現のあるべき方向が示されている」と述べ更なる精進を求めた。お洒落なベレー帽で出席した藤倉清光さんは「私は一滴。一滴一滴を集めて大河となる酒折連歌は、互いの体温に近く、ともに呼応し合う親しみのある歌の形式だと思う。事業の進展を願っています」と受賞の言葉を結んだ。

アルテア賞最優秀の石川直樹君(16歳)の作品「ぼくはまだ潜り続ける記憶の海を」は、「海のうえ鏡のように月がうつって」の返歌。もりまりこ選考委員は「記憶が海とひとつになることで、生まれる前の記憶としても読み取れる。未知の可能性を感じる詩情あふれる作品」とその才能を高く評価した。石川直樹君は「学校の古典の授業の一環で応募しました。先生から学校で、受賞の知らせを受けました」と話し、「夜明け前の海岸で、誰かが過去の記憶に浸っている情景が思い浮かび、その人に自分の気持を重ねて作りました」鋭敏な感性と知的な理性が表情に表れていた。

表彰式を終えた受賞者は、十周年を記念して昨年大学キャンパス内に建立された「酒折連歌賞創設記念碑」の前で記念撮影を行い、連歌発祥の地酒折宮を訪問、日本武尊と連歌との関係を現地で学ぶとともに受賞の喜びを分かち合った。(M.I)
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