
世界選手権代表選考会を兼ねた平成22年全日本選抜柔道体重別選手権大会が4月3・4の両日、福岡市・福岡国際センターで行なわれた。大会は男女7階級の上位8名によって体重別日本一を決める大会。山学大から3人のOB・OGを含む過去最高の9人が選抜された。山学勢は1日目に、3年までは無名だった飯田有香(70kg級)が強敵を次々に下し見事な準優勝、山部佳苗(78kg超級)が3位を獲得した。そして2日目に最上級生となったエースの浅見八瑠奈(48kg級)が登場した。ライバルの近藤香・山岸絵美を下し決勝に進出、最強のライバル福見友子と日本一を競った。延長戦までもつれる激戦の末、惜しくも準優勝となった。試合後に行なわれた選考会で、浅見は福見とともに9月に行なわれる世界柔道選手権2010東京大会日本代表に選ばれた。山学大柔道部選手の世界選手権出場は1996年の創部以来初めての出来事。
『浅見八瑠奈ドキュメント』・・・4年生となった浅見が日本一に挑む試合には、故郷の愛媛から母と祖母、そして、子供の頃に通った道場のちびっ子たちが福岡に駆けつけて試合を見守った。
≪1回戦 VS 近藤 香(帝京大)戦≫
浅見は、昨年10月の全日本学生で初めて近藤に敗れた。しかし、11月の講道館杯では雪辱、過去の対戦成績は7勝1敗と大きくリードしている。1月に韓国で行なわれた世界ランキング上位者で争うマスターズ大会で、福見友子を倒して優勝した浅見はさらに成長していた。この日は終始近藤を攻め続け、まったく寄せ付けなかった。相手に柔道をさせず、指導3を与えて大差で優勢勝ちした。
≪準決勝 VS 山岸絵美(三井住友海上)戦≫
二人は昨年11月の講道館杯決勝で対決した。その時は、残り1分20秒で両者に指導、残り56秒で浅見だけに指導2の判定で、山岸が優勝した。あれから5ヶ月、二人の差はなくなっていた。開始1分に指導を取られたが、積極的に前に出て休まず攻撃、残り1分に今度は山岸が指導を取られた。5分の試合時間では決着が付かず、先にポイントを取った者が勝者となるGS(ゴールデンスコア)方式の延長戦に入った。浅見は山岸との組み手争いに、もう負けなくなっていた。常に先に技を仕掛けていた。両者ポイントを奪えず、勝負は3人の審判による旗判定となった。結果は白旗2、赤旗1の判定、前に出続けた白の浅見の僅差勝利となった。
≪決勝 VS 福見友子(了徳寺学園)戦≫
フジテレビの中継カメラが待ち構える試合場に、係員に先導されて浅見八瑠奈が静かに入ってきた。落ち着いた表情で呼吸を整え、畳に上ると両手で顔を3回叩き一礼、そして思い切って前に出た。浅見と福見は喧嘩四つ、右利きの浅見に対し福見は左手リード、しかもリーチが長い、浅見がなかなか福見に勝てなかったのは組み手争いで負けていたから。この試合の二人は、激しく組み手を争った。浅見は負けていなかった、勇気を持って距離を詰め、襟を取りにいった。開始1分、背負い投げにいったが不十分だった。二人は場外際で盛んに足技を仕掛けて攻め合う、残り1分、浅見が投げ福見が背中を畳につけたが、福見の巴投げと浅見の投げが同時の判定で両者ポイントなし、決勝も5分間では決着が付かず、GS方式の3分間の延長戦にもつれ込んだ。開始45秒にかけた浅見の足技に福見が体制を崩したが審判の判定はポイントなし。その5秒後、今度は福見の掛けた送り足払いが浅見の体制を崩し有効、その瞬間、福見友子が谷亮子以来となる連覇を達成、浅見は直後の表彰で準優勝の銀メダルを胸にかけた。
悔しさを堪えながら
浅見八瑠奈選手は報道陣の質問に答えた「相手の方が手が長いので、組み手争いは厳しいが、課題を克服しようと取り組んでいる。この1年間で海外では勝てるようになった。国内ではまだ勝てないが、差は縮まっていると感じている。新しい技も磨いています。優勝出来なかったので世界選手権には出られないと思います」と語ったが、1時間後に選考委員会から朗報がもたらされ、監督と仲間たち、そして、故郷から駆けつけた家族とちびっ子たちと喜びを分かち合った。
大会1日目の成績
70kg級 飯田有香(4年)・・準優勝(岡明日香・渡辺美奈を下し、国原頼子に敗退)
78kg超級山部佳苗(2年)・・・3位(立山真衣に勝利、準決勝で塚田真希に敗退)
63kg級 小澤理奈(OG)・・・3位(平井希に勝利、準決勝で優勝した上野順恵に延長の末敗退)
90kg級 西田泰悟(OB)・・・5位(西山将士に敗退)に惜敗)
飯田有香選手は「この大会にやっと出られた。出れただけで嬉しかったので、いい意味で緊張しなかった。1回戦の岡さんも準決勝の渡辺さんもこれまで一度も勝ったことがない相手、攻めて行って負けたら仕方ないと前に出て勝てた。決勝では、先行したしたことが逆に災いして、勝てるかもしれないと思って守りに入ってしまった。前に出て攻めるのが自分の柔道、これを自信にして全日本学生でチームに貢献したい」と晴れやかに語った。
大会2日目他選手の成績
48kg級 黒江優希(3年)・・・5位(浅香夕海に敗退)
52kg級 浅海静香(4年)・・・5位(準優勝した西田優香に敗退)
52kg級加賀谷千保(2年)・・・5位(橋本優貴に敗退)
57kg級 野中未奈(OG)・・・5位(徳久瞳に敗退)
山部伸敏監督は「1日目の飯田は、実力上位者を倒す満足できる出来だった。最重量級の山部も五輪メダリストの塚田には負けたが、内容は良かった。二人とも次につながる。2日目の浅見は、最後に負けたが福見との差は詰まった。加賀谷は2月のハンガリー国際で優勝したものの怪我をしてしまい、ぶっつけ本番だった。やむをえない面もあるが、加賀谷、浅海、黒江は物足りなかった。しっかり稽古を積ませて全日本学生に臨みたい」と二日間の大会を総括した。 (M.I)
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