
大学日本一を決める団体戦"男子59回、女子19回"平成22年度全日本学生柔道優勝大会が6月26・27日の日程で開幕した。武道の聖地・日本武道館に地区予選を勝ち抜いた男子7人制62大学、女子5人制29大学、女子3人制32大学が結集した。大会初日は、女子の1回戦から決勝戦までと男子の1回戦が行われた。関東大会優勝の山学大女子は、5人制の部1回戦シードで2回戦から登場した。2回戦で日大、3回戦で仙台大を大差で下し、準決勝で昨年準決勝で敗れた東京地区1位代表の前年度優勝校帝京大と対戦、大将戦までもつれた接戦を制して雪辱、東海大との決勝戦に進出した。決勝も決着は大将戦に持ち込まれる展開となった。しかも、内容差で劣っているため引分けでは敗戦、勝たない限り優勝はない場面で、2年生の大将山部佳苗が準決勝に続き大奮闘した。国際大会2連続金メダリストの強敵田知本愛に真っ向勝負を挑み、最後まで諦めずに前に前に出続けた。引分寸前の残り5秒、ついに田知本に二つ目の指導、大逆転劇、山学大女子は2年ぶり3度目の大学日本一に輝いた。
山梨学院大女子柔道部優勝までの軌跡
2回戦≪山学大vs日大≫
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先鋒 |
次鋒 |
中堅 |
副将 |
大将 |
山学大 |
加賀谷 |
連 |
谷口 |
飯田 |
山部 |
|
引き分け |
○
技あり |
○
一本 |
○
一本 |
○
一本 |
日大 |
長壁 |
本田 |
小林 |
長野 |
村越 |
山学大4勝0敗勝利
先鋒の加賀谷千保(2年 藤枝順心)は故障からの復帰戦。次鋒連 珍羚(1年 錦和)は台湾出身期待の新人。中堅谷口亜弥主将(4年 桐蔭学園)と副将飯田有香(4年 渋谷教育学園)の2人の4年生は関東大会優勝の原動力。大将山部佳苗(2年 旭川大学)開始5秒払い腰で村越を秒殺。
3回戦≪山学大vs仙台大≫
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先鋒 |
次鋒 |
中堅 |
副将 |
大将 |
山学大 |
連 |
吉元 |
谷口 |
飯田 |
山部 |
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○
優勢 |
引き分け |
引き分け |
○
一本 |
○
一本 |
仙台大 |
五味 |
宮原 |
熊田 |
有我 |
工藤 |
山学大3勝0敗勝利
先鋒に起用された連が流れを作り、次鋒吉元佳代(3年 鹿児島南)と中堅の谷口がつなぎ、4月の全日本選抜体重別選手権70s級で準優勝した副将の飯田が大内刈りから寝技に持ち込み合わせ一本。大将の山部は工藤を寄せつけず余裕の合わせ一本。
準決勝戦≪山学大vs帝京大≫
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先鋒 |
次鋒 |
中堅 |
副将 |
大将 |
山学大 |
加賀谷 |
連 |
谷口 |
飯田 |
山部 |
|
○
優勢 |
●
一本 |
○
一本 |
●
一本 |
○
技あり |
帝京大 |
岡田 |
石川 |
松岡 |
池崎 |
杉渕 |
山学大3勝2敗勝利
帝京大は前年度優勝校で東京大会優勝の強敵、一方山学は関東大会3年ぶり(4度目)優勝校、山学にとって帝京は、昨年準決勝で連覇の夢を断たれた相手、雪辱を期して臨んだ。先方の加賀谷が開始早々に払い腰で有効を奪い、中堅の谷口亜弥が返し技から寝技に持ち込みけさ固めで勝ったが、連と飯田は一本負け、試合の決着は大将戦に持ち越された。帝京の大将杉渕りずみ(4年)は125kgの巨漢、山部は高1の時に対戦しており、その時は敗れている。しかし、昨年と比べると体が一回り大きくなった山部は力も技も成長した。開始50秒に体落としで技ありを奪い、そのあとの杉渕の猛攻を冷静に対処、山学に雪辱の勝利をもたらした。
決勝戦≪山学大vs東海大≫
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先鋒 |
次鋒 |
中堅 |
副将 |
大将 |
山学大 |
加賀谷 |
連 |
谷口 |
飯田 |
山部 |
|
○
優勢 |
○
優勢 |
●
優勢 |
●
技あり |
○
優勢 |
東海大 |
小倉 |
渡邊 |
田知本
(妹) |
米山 |
田知本
(姉) |
山学大3勝2敗勝利
決勝を前にした山部伸敏監督は、選手全員に「最後まで、泥臭く行くぞ」と声をかけ、総監督、監督、女子部員全員で肩を組み円陣を作り、全員の心を一つにして決戦場に向かった。先鋒の加賀谷と次鋒の連がともに良く攻め、相手に指導2を与えて優勢勝ち。中堅の谷口も開始早々に絞め技で田知本遥を今一歩まで追い込んだ他、得意の片衿背負い投げで攻めたが、田知本に研究されていてポイントを奪えなかった。逆に残り30秒に有効を奪われて惜敗した。飯田と米山は終始場外際で足技を掛け合ったが、開始早々に奪われた返し技での技ありを取り返すことが出来なかった。決勝も準決勝同様に、引き分けでは内容差で山学が敗れる大将戦に持ち込まれた。ここでも山部が奮闘した。相手の田知本愛(4年)は今年度の国際大会2連続金メダリスト。山部にとっては、これまでの対戦成績1勝4敗の最強の敵、しかし、山部は怯まなかった。真っ向勝負を挑み、前に前に出続けて最後まで勝負を諦めなかった。引き分けかと思われた残り5秒、ついに田知本に二つ目の指導、その瞬間山学ベンチは躍り上がった。2年生大将の山部は残り5秒を冷静に耐え、山学大に2年ぶり3度目の大学日本一の栄冠をもたらした。
敗戦寸前からの逆転優勝、感極まった選手たちは号泣した。抱き合って泣き、顔を真っ赤にして泣き、そして顔をくしゃくしゃにして笑った。山学大女子は今年のスローガンを「進相越勝」、目標を「関東学生優勝大会・優勝」「全日本学生優勝大会・優勝」と掲げ、日々厳しい稽古を重ねて来た。そして、この日二つ目の目標も達成させた。表彰式で、佐藤宣践全日本学生柔道連盟会長から、山学チームに優勝旗と賞状、優勝カップが贈られ、大会優秀選手に山学大から山部佳苗が選ばれた。表彰式のあと、カメラに向けて優勝ポーズを決めた選手たちは、山部監督、西田総監督、谷口主将、主務に徹してチームを支えた濱口光(4年 48s級)、飯田副将、4年生を次々に胴上げして優勝の喜びを爆発させた。
谷口亜弥主将「出場選手だけでなく、部員全員がこの日のために生活して来ました。誰かが取られても、誰かが取り返して、チーム力を出し切りました。個人的には50点の出来でしたが、主将としてはチームの目標を達成できて、とにかく嬉しいです」。
濱口 光主務「試合前にチームのみんなから"日本一にして上げる"と言われて、その通りにしてくれました。主務として皆を支える役に徹した努力も報われました」。
山部佳苗選手「関東大会は4年生のおかげで優勝出来たので、今日は自分がチームに貢献する番だと思って戦いました。決勝は、前に出るしかないと、懸命に攻めました。去年と比べると技が単発でなくなった点が良くなったと思います。次は全日本の個人戦で田知本さんの4連覇を阻んで優勝したい」。
山部伸敏女子監督「優勝する力はあると思って臨んだが、最後の最後まで判らない勝負だった、こんな勝利は予想していなかった。ポイントは気持だった。大将の山部は、技術的にはまだまだだが、準決勝・決勝と強敵に気持で負けなかった」。
西田孝宏総監督「準決勝も、決勝も苦しかった。目標だったので、内容はともかくホッとした。良く最後まで諦めずに前に出た。勝負は最後の最後まで諦めるなと言って来たが、今日は教え子から本当にそうだと教えられた」。
大会の結果、女子5人制の部は、優勝山学大、準優勝東海大、3位帝京大・淑徳大。女子3人制の部は優勝埼玉大、準優勝福岡工大、3位早大・創価大となった。尚、男子は初日に1回戦が行われた。山学大男子は、福島の東日本国際大と対戦し6勝1分けで順当に勝利、明日最終日の2回戦に進んだ。今年の男子のスローガンは「百花繚乱」、目標はこの大会ベスト4、必勝を期して臨む。 (M.T)
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アルバム準決勝 |
アルバム決勝1 |
アルバム決勝2 |