第92回全国高等学校野球選手権山梨大会(第11日)は21日、小瀬球場で準々決勝2試合を行った。第2試合は連覇を目指す山梨学院と波に乗る日大明誠の試合が行われた。山梨学院は、先発にエース右腕・中村太星(2年・山梨都留シ)で臨んだ。2番・鈴木悠介(3年・青葉緑東シ)、3番・山田凌(3年・八王子シ)の左前安打で一二塁。5番・田口蒔人(2年・青葉緑東シ)の遊ゴロが敵失を誘い先制点をあげると、6番・青山祐己(3年・浦安シ)が泳ぎながらもしぶとく右前適時打し2対0とする。しかし、その裏にエース・中村は、1番打者に1-1から右越え本塁打され2対1。一死後、3番打者、4番打者に右前安打され、6番打者に右前適時打され2対2とされた。山梨学院は、2回表 にエース・中村の前安打、1番主将・松浦航平(3年・青葉緑東シ)の左越え二塁打で二三塁としてワイルドピッチを誘い3対2と再びリード。3回表にも5番・田口の左越え適時二塁打で4対2と点差を広げたが、3回裏、4回裏と得点され同点に、そして8回裏には4対5と逆転を許した。9回表、1番主将・松浦の無心で振り抜いた打球は右越え三塁打となり、3番・山田の中儀飛で同点の歓喜の生還をしたが、その裏にサヨナラ打を浴び一歩届かず、山梨学院の連覇の夢はベスト8で消え失せた。
☆第92回全国高等学校野球選手権山梨大会(第11日) 於 小瀬球場
山梨学院 |
2 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
5 |
日大明誠 |
2 |
0 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
1 |
1× |
6 |
[山梨学院]
投手:中村(3回、60球、6安打、1本塁打、1犠打、3四死球、3三振)
投手:廣瀬(2回、29球、2安打、1犠打、1四死球)
投手:中根(3回1/3、57球、6安打、3犠打、2四死球、1三振)
捕手:相馬
三塁打 松浦 二塁打 松浦、田口、花澤、山田
[日大明誠]
投手:鈴木(9回、113球、14安打、3犠打、1犠飛、1三振、1暴投)
本塁打 木村 二塁打 早川
□小瀬球場は真夏の太陽がジリジリと照りつけている。第2試合は連覇を目指す山梨学院と、甲府昭和と駿台甲府を破り波に乗る日大明誠高校との対戦となった。
□先攻の山梨学院は、一死後2番・鈴木悠介(3年・青葉緑東シ)が1-1から左前安打で出塁。続く3番・山田凌(3年・八王子シ)の左前安打で一二塁。二死後、5番・田口蒔人(2年・青葉緑東シ)の遊ゴロが敵失を誘い、2番・鈴木が生還し先制点をあげると、6番・青山祐己(3年・浦安シ)が泳ぎながらもしぶとく右前適時打し2対0とする。
□1回裏の山梨学院のマウンドには名実共にエースの風格が漂ってきた右腕・中村太星(2年・山梨都留シ)が、捕手には中村の女房役として定着した相馬彰吾(3年・猿橋中)が送られた。エース・中村は、1番左打者に1-1から右越え本塁打され2対1。一死後、3番左打者に右前安打、続く4番右打者に右前安打され一三塁。5番左打者を三振に打ちとるが、続く6番右打者に右前適時打され2対2とされる。
□2回表の一死後、8番エース・中村が左前安打で出塁。二死後、1番主将・松浦航平(3年・青葉緑東シ)の左越え二塁打で二三塁。2番・鈴木の2球目がワイルドピッチとなり、中村が生還して3対2と再び勝ち越す。
□3回表、トップバッターの3番・山田が右越え二塁打で出塁。4番・小林夏樹(3年・長野北シ)の中前安打で一三塁。続く5番・田口の左越え適時二塁打で山田が還り4対2とリードを広げる。
□3回裏、エース・中村は、一死後に3番左打者を四球で歩かせると、4番右打者に左前安打され一二塁、続く5番左打者への死球で満塁とされた。6番右打者を空振りの三振に打ち取り二死としたが、7番右打者に死球を与え押し出しとなり4対3とする。
□4回表、8番エース・中村の代打・小林義弘(1年・千葉市シ)が右前安打で出塁。9番・相馬の犠打で一死二塁。期待された、1番主将・松浦、2番・鈴木が外野飛に倒れ追加点のチャンスを逃がす。
□4回裏マウンドに期待の星、左腕・廣瀬直紀(1年・富士河口シ)が立った。廣瀬は先頭打者9番左打者を2-2と追い込んだが粘られ四球を与え、1番左打者に右前安打され、無死一二塁。続く、2番右打者の犠打で一死二三塁とされ、3番左打者に左前適時打され4対4とされる。
□6回表、左腕・廣瀬の代打・三上星(3年・八王子シ)は0-1から中前安打で出塁。9番・相馬の犠打で一死二塁としたが後続が倒れ好機を逃がす。
□6回表からマウンドに上がった左腕・中根龍也(3年・大田シ)は8回裏、先頭打者・7番右打者に中前安打、続く8番右打者の捕手ゴロに2-6の封殺。一死一塁、9番左打者の犠打で二死二塁。一番左打者に死球で一二塁、続く2番右打者に右前適時打で4対5と逆転される。
□9回表、1番主将・松浦は「自分達の野球をすれば、追いつけると信じて」打席に入った。打席に入ると無心になり細かいことは「覚えてない。球は真っ直ぐがきたので、何も考えずに振り抜いた」と渾身の力を振り絞ると、白球は高く孤を描き左越え。松浦は「感触がホームランと思った」と二塁手前で腕を高く天に突き上げた。白球はフェンスのコンクリートの天に当たり高く跳ね上がる。それを見て「三塁まで行ける」と減速した走りを加速し三塁に頭から滑り込んだ。3番・山田「陵だったら、打ってくれると思っていた」と、山田は深い中儀飛。松浦は「まだ野球ができる」満面の笑みで歓喜の生還。三塁側全校応援のスタンドも歓喜で揺れる。
□9回裏、左腕・中根は5番の代打に初球を左前に弾き返され、続く6番打者に犠打され一死二塁。7番打者の1-0から右越え二塁打を浴び、5対6でサヨナラ負けを喫す。
□スタンドは悲鳴に似たどよめき、選手たちはその場に崩れ落ちた。全校が一丸となって戦った夏が終わった。
■主将・松浦航平(3年・青葉緑東)は「試合には負けたが、山梨学院で2年半やってきて後悔はない」と大粒の汗を拭った。「キャプテンになって、『甲子園に行けるだろう』という、優勝校のプレッシャーから、自分一人でチームをまとめようとし孤立感があった。春の大会が終わり、3年生の前で自分の気持ちを打ち明けた。すると、小林、角田などが相談に乗ってくれ、自分の性格も変わり、明るく楽しいチームになった」とはにかんだ。甲子園の夢は露と消えたが「自分がキャプテンになってから、最後に、心からチームが一つになれて、本当に良かったと思う」と大きな宝物を手にした充実感さえ漂う。泣きじゃくるチームメートを見て「3年生も、これで終わった訳ではないので、次のステージ で、それぞれ頑張って行きたい。後輩は、この悔しさを胸に甲子園を目指して頑張ってもらいたい」と毅然と述べた。最後に「全ての人に感謝したい」と、感慨無量で述べた。
■三塁コーチャーを任された角田皓太(3年・千葉市シ)は「2年生のとき、選手として甲子園に出場できたが、今回は、怪我で手術して間に合うように調整してきたが、痛みも取れない状態だったので、選手としてやってもチームに迷惑をかけるので、自分がチームに貢献できることを考えて、三塁コーチャーの道を選んだ」と苦渋の選択をした。「練習試合などで、皆にアドバイスをしてもらうなどしながら、実践を積んで勉強した」とコーチャーとしての努力を欠かさなかった。その甲斐あって「本番では三塁コーチャーの仕事がミスなくでき、選手では経験できない経験が出来、違う意味で成長できて良かった」と、それでも「出来れば選手で貢献したかった」と薄ら目に涙を浮かべながら述べた。
■須田喜照監督は「二連覇は出来なかったが、3年生には心から感謝している。監督就任からともに野球道に励んできた。特にベンチに入れなかった3年生には敬意を払いたい。負けはしたが、最後の最後まで諦めずに全員で戦ってくれた」と述べた。敗因について「序盤にもう一二点多く、また4回から6回にチャンスがありながら追加点が取れなかった。同点で迎えた最後には、相手に裏の攻撃の有利さがあり負けた。特に5回表、無死二三塁、5番田口のところでは、打たすか犠打か最後の最後まで悩んだ。犠打のサインを出しながらも悩んだ。まず一点と、無死だったので一死二三塁にして、相手投手にプレシャーを与え後続に託した」と振り返った。「後輩達には秋以降頑張ってもらいたい」と、既 に次のステージに気持ちを切り替えていた。最後に「私を信じて大事な選手を託してくださった監督さんたちに、衷心より御礼を言いたい」と小瀬球場を後にした。(H.K)
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