
35度以上の猛暑日が続いた2010甲府盆地の夏、暑さの中で黙々とトレーニングに励むスポーツ選手、そして、課外授業で受験に備える中学・高校生、それぞれの汗と努力を特集"夏に鍛える"として伝える。第1回は、スピードスケート・ショートトラックともに大学日本一連覇を目指すスケート部の−勝負は夏が決める−。第2回は創部わずか3年で最速での1部昇格を目指す女子バスケットボール部の−昇格は夏が決める−。第3回は中高一貫教育で難関大学への進学を目指す山梨学院中学の取り組み−合格は夏が決める−。それぞれの活動を3回にわたり紹介する。第1回のスケート部は、スピードスケート陣は陸上トレーニングでひたすら体力アップを図っている。一方、ショートトラック陣は陸トレに並行して、小瀬アイスアリーナで真夏に滑り込んでいる。
山梨学院大学スケート部は、今年2月のバンクーバー冬季五輪にスピードスケートの及川佑(2002年度卒)・名取英理(2007年度卒)とショートトラックの藤本貴大(2006年度卒)・吉澤純平(2006年度卒)の4選手を送り込むなど、合計12名のオリンピック選手を輩出している。また昨シーズンは、女子がスピード・ショートともに大学日本一に輝くなど、一般的な知名度はそれほど高くないが、スケート・ニッポンを支える日本を代表する強豪大学。
そして、部員たちの合言葉は−勝負は夏が決める−。スピードスケートとショートトラックの32人の部員は、甲府盆地の暑さの中で、8月6日から大学キャンパスで合同合宿を行っている。トレーニングメニューは、自転車でのロードワーク・ランニング・ウエートトレーニング・ローラースケートなど、ひたすら体力アップに取り組んでいる。9日には、武蔵丘短大玉木啓一准教授ら4人の健康スポーツ学専門教授による体力測定が行われた。エルボメーターという固定式自転車を使い、いきなりトップスピードでペダルをこぎ出し、どこまでスピードを落とさずに90秒間全力疾走できるかを計る最大酸素負債量測定や体脂肪測定・反応速度測定が行われた。酸素負債量測定は、陸上競技で800m全力疾走するのと同じと言われる非常に過酷な運動、測定直後は全員がマットに倒れ込み、しばらく起き上がれないほど体力を消耗していた。この測定は4月にも行われており、夏までにどれくらい体力アップを図ったかが、数値で一目瞭然となるテスト。測定結果に選手はそれぞれ一喜一憂の表情を見せた。
スピードスケート陣は、夏の間ひたすら陸上トレーニングで体を鍛えている。鍛錬の舞台は大学キャンパスと愛宕山・桜井山、自転車で山道を駆け上がり、ウエートトレーニングで筋力アップを図っている。
襲田衡俊(おそだ ひでとし)男子主将(4年 日光高)は「全員が、自分を変えようと、一丸となって辛い練習に取り組んでいます。フォーム・メンタル・テクニックそれぞれについて、それぞれが夏の間に基礎作りをしました。個人的には、昨年前半悪かったので、今年は最初から全力で行き、インカレ5千・1万ともに表彰台を狙い、チームとしては1部上位を目指します」と語った。
大田未奈美(おおた みなみ)女子主将(4年 佐久長聖高)は「個人的には、シーズン初めに膝を故障し満足な練習が出来ませんでしたが、ここに来てテーピングなしで皆と一緒に走れるようになりました。冬までに遅れを取り戻します。チームとしては、郷亜里抄・伊藤あさみの2人の先輩の抜けた穴を後輩達と全員で力を合わせ、2連覇を目指します」と話した。スピードスケート陣が氷に乗るのは、北海道に遠征する帯広合宿から、本格的な滑り込みは9月に入ってからとなる。
一方ショートトラック陣は、陸上でのトレーニングを終えた夕方5時半から、小瀬アリーナに移動して真夏に滑り込んでいる。小瀬アイスアリーナの氷は、関係者の努力で日本一の氷と呼ばれており、真夏でも最高のリンクコンディションを保っている。9日の山学の練習には、わざわざ静岡県富士宮市から通ってくるチビッ子スケーター3人も参加、選手たちは子供たちを輪の中に入れて滑走練習を行っていた。
田中翔太郎(たなか しょうたろう)ショート主将(4年 山梨学院高)は「個人的には、今年初めてシニアの強化選手に選ばれたので、11月の選考会でユニバーシアード代表を獲得することと日本選手権を目指す。インカレでは、今年も2種目優勝してチームに貢献したい。チームとしては、男子はここ数年総合優勝から遠ざかっているので、今年こそ優勝を獲得し、男女アベック優勝を実現させたい」と述べた。
指導に当たる川上隆史監督は「スケートは冬のスポーツだが、夏の過ごし方が重要な競技、夏の間にどれくらいパワーをつけられるかで冬の本番が決まる。 スケート特有の筋力を強化するために、自転車を使ったロード、陸上でのランニング、ウエートトレーニングなどで体全体を強くしている。今日の体力測定では、それぞれの選手がハード・トレーニングの成果を示す数値を出してくれた。今年は、女子はスピード・ショートともに学生チャンピオンを目指し、男子のスピードは昨年の7位以上、ショートはユニバーシアード代表とアベック優勝を目指します」とシーズン目標を語った。
夏の特訓の成果が数字となって表れる"本番"を向かえるのは、10月末から、スピード・ショートともに大学対抗戦のインカレでは、女子はともに連覇を目指し、男子は上位・優勝を目指す。そして、それぞれの個人はそれぞれの昨年の数字を超える新たな自分を目指す。 (M.I)
アルバムはこちら