
平成22年度全日本学生テニス選手権(インカレ)は8月30日、東京・有明テニスの森公園で女子シングルス2回戦が行なわれた。山梨学院大女子テニス部勢4人の中、大澤愛加と松田望実の2人が1回戦を突破し2回戦に進出した。大澤の対戦相手は加藤ゆい(早大)、松田の相手は岩崎舞(早大)、ともに大学日本一チーム早稲田の選手、強敵との戦いとなった。大澤の相手加藤は技巧派のベースラインプレーヤー、強打で攻める大澤にとってはタイプの違うやり辛い相手、第1セットはタイブレークまでもつれた。しかし、このセットを奪うと第2セットは強打で6-0と圧倒、完勝で3回戦進出を決めた。一方松田と岩崎の試合は最終第3セットに持ち込まれるシーソーゲームとなった。松田はあと1ゲームで勝利の5−1と岩崎を追い詰めたが、そこから追いつかれて逆転負け、初舞台の聖地で悔し涙を流した。
≪大澤愛加(山学大)VS加藤ゆい(早大)≫
試合は大澤愛加(2年 学芸館)のサーブで始まった。開始時刻は午前9時過ぎだというのに朝から強烈な熱波がコートに降り注いだ、まさに猛暑との戦い。強打で攻撃的に攻める大澤に対し、加藤はトップスピンロブやムーンボールを多用して大澤が前に出るのを防ぐ技巧派のベースラインプレーヤー、対照的なテニスをする2人は、春の関東大会で一度対戦している。その時は最終セットまでもつれてようやく大澤が勝った経過がある。大澤にとっては自分の個性を殺し、我慢のテニスを強いられる相手、第1セットは苦しんだ。5-6とリードされて向かえた相手サーブの第12ゲーム、ブレークしないとセットを奪われる場面で、それまで暑さに負けた顔をしていた大澤が気力を奮い立たせた。デュース2回の攻防を制して加藤のサービスをブレーク、タイブレークに持ち込んだ。タイブレークでも序盤はリードを許したが、無理に前に出ずにロブで返す戦術を選択した。最後は加藤がリターンをネットにかけ、タイブレーク7−5で第1セットを奪った。第2セットは、セットを取ったものと取られたものの差がそのまま気持とスコアに表れ、大澤が6-0と圧倒して勝利をおさめた。
大澤愛加選手は「第1セットはボレーをミスしたり、狙い過ぎて失敗したり、思うようにいかず挫けそうになった。タイブレークになってからポイントを取るべき所で取れるようになって落ち着きました」と振り返り、3回戦に向けては「とにかく初めての出場、チャレンジャーの気持ちで前に出て、勝ちにこだわらずに自分のプレーをすれば、いい大会になると思います」と自分を分析した。
≪松田望実(山学大)VS岩崎舞(早大)≫
インターハイに出場したものの1勝も出来なかった松田望実(2年 鳥取中央育英)が、山学大に入って急速に力を伸ばし、インカレの1回戦を突破、2回戦もあと一歩で金星を上げる選手に成長した。第1セットはレフティーの岩崎の強打に全く付いていけず、開始からわずか29分で1−6と簡単にセットを奪われた。第2セットも序盤は岩崎の一方的な展開、1-4とリードされた時にはコートサイドからはそのまま一方的に押し切られると思われた。しかし、松田はここから攻め方を変えた。強打・ゆっくりだけど深い球・トップスピンロブを組合せてボールに変化を付けた。第7ゲームをこの試合始めてブレークして3−4とした時に、明らかに顔の表情が変わり気持が乗って来た。それまで空回りしていた気持とボールが一致、6−6としてタイブレークに漕ぎつけた。勢いに乗った松田はタイブレークを完全に支配した。第1セットとは別人の動きで一気に7-4としてセットを奪い返し、勝負を第3セットに持ち込んだ。最終セットは完全に松田のペースで試合が進んだ。一気に5-1として、あと1ゲーム取れば勝利という所まで持ち込んだ。しかし、テニスというゲームは、心の揺れがそのままゲームに表れる不思議なスポーツ。勝てると思った瞬間に松田のリズムが崩れた。苦し紛れに多用するようになった岩崎のロブをネットにかけたり、ストロークミスを連発して逆に6ゲーム連続して奪われるという、信じられない負け方で勝利をスルリと逃してしまった。
松田望実選手は「ファーストセットは緊張して体が動かなかった。セカンドセットからはペースを変えて、ラリーに持ち込んでチャンスを作って行った。最終セットでは競っている時のチャンスボールをミスしたり、ボレーミスをして相手を奮い立たせてしまった。勝ったと思ったら逆に駄目だということをこのゲームで学びました。リードしている時に自分のテニスをすること、チャンスボールをしっかり決めること、メンタル面を強化することが今日得た課題です」。初舞台の聖地で悔し涙を流したあと、松田は冷静に敗因を分析した。そして、来年必ず、嬉し涙を流すと心に誓った。
平成22年度全日本学生テニス選手権女子シングルス2回戦
(8/30) 於 有明テニスの森公園 |
大澤 愛加(山学大) |
○ |
7-6,6-0 |
● |
加藤ゆい(早大) |
松田 望実(山学大) |
● |
1-6,7-6,5-7 |
○ |
岩崎 舞(早大) |
富岡好平監督は「テニスはただ強く打つだけでは駄目で、コートを立体的に使う必要がある。大澤はファーストセットで色々試みたことが、セカンドセットで生きて来た。松田の相手の岩崎は、強いボールとゆっくりだけど深いボールを組合せたり、球際を早く打って来たり遅くしたりして変化をつけて来た。予測が難しい相手のボールに松田はよく食い下がったが、自分に流れが来ている時にミスをして攻め切れなかった、いい勉強をしたと思う」と分析した。
三好勲コーチは「大澤は相手と一度対戦しているので、互いの長所短所が判っていた。最初は無理をしたが、セカンドセットではコートをワイドに使って本来の動きをした。彼女の勝負どころはまだまだ先。松田は勝てば金星だったが、5−1まで行った所で勝ちを意識した。追い込まれた相手がリズムを変えて来たのに対応し切れなかった。こういう大舞台で勝ち慣れていない所が出たが、大学に入って伸びている、今日の悔しい結果を糧にしてもらいたい」と教え子の更なる成長を望んだ。
創部5年目の山梨学院大女子テニス部は、昨年のリーグ戦で1部2部入れ替え戦に勝利し最短最速で1部昇格を果たした。9月8日に開幕する今年度の関東学生リーグでは強豪大学がひしめく念願の1部でプレーする。大澤愛加・松田望実とともにインカレの舞台を経験した奥田なる美(3年 堀越)・松山 愛(4年 静岡市立)の4人を中心に、新たな歴史と新たな自分を作るために選手は短期決戦の団体戦舞台に向かう。(M.T)
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アルバム大澤 |
アルバム松田 |