
男子第27回・女子第17回世界柔道選手権2010東京大会は9月12日、男女4階級を行い女子48s級は日本人同士の決勝になった。山梨学院大4年の浅見八瑠奈が2連覇を狙った福見友子を優勢勝ちで下し、初出場初優勝の快挙を成し遂げた。浅見は準決勝で北京五輪金メダルのドゥミトル(ルーマニア)を小外刈りで下すなど1回戦から準決勝までオール1本勝ちで決勝に進出、決勝でも組み手争いで敗れて来た最強のライバルを懸命に攻めた。開始2分に福見に指導1、残り1分35秒に2回目の指導で有効。満員の国立代々木第1体育館が騒然とする中で、浅見はさらに体落とし、寝技で攻め続けて優勢勝ち。この4年間常に自分の前に立ちはだかり、海外で勝つより国内で勝つ方が難しかった最大の壁を遂に乗り越えた。小柄な体に努力をいっぱい詰め込んだ浅見八瑠奈は、世界一の金メダルとロンドン五輪への道を自らの手で切り開いた。
柔道一家に生まれた浅見八瑠奈(あさみ はるな 4年愛媛新田)は、憧れの人谷亮子の記録を抜く海外43連勝の記録を持ちながら、国内では福見友子(了徳寺学園職員)、山岸絵美(三井住友海上)に次ぐ3番手のランクに苦闘して来た。最上級生になった今年、世界選手権が東京で52年ぶりに開催、ライバルの一人山岸絵美を抑えて初出場の夢を実現させた。山梨学院大柔道部にとっても創部初の出場者。柔道部全員が会場に駆けつけ横断幕を手に「はるな、行けよ〜」と大声援を送った。
代々木第1体育館を埋めた大観衆、自分の柔道人生を決めるまさに大舞台。浅見は心を研ぎ澄ませて試合に集中していた、1回戦から非常に落ち着いていた。初戦のロセヌ―・アメリー(ベルギー)を「大内刈り」、2回戦ラチュリベ・イザベル(カナダ)「体落とし」、3回戦ウー・シュウゲン(中国)「内股すかし」、準々決勝フレイタス・レアンドラ(ポーランド)「小外刈り」、そして、準決勝では北京五輪で谷亮子を下して金メダルを獲得したドゥミトル・アリナ(ルーマニア)を「小外刈り」、全て1本勝ちで決勝に進出した。
決勝戦の相手福見友子はリーチが長く喧嘩四つ、小柄な浅見が組み勝つことは難しく、これまでの対戦成績は1勝3敗、越えなければ世界はない最強のライバル。浅見は稽古のかなりの時間を、福見との組み手争いの研究に充てて大会に臨んだ。試合開始とともに盛んに右足を福見の左足に飛ばし足技で牽制、以前はつり手と引き手をしっかり持った自分の組み手にならないと技が仕掛けられなかったが、この日は組み手が不十分な状態でも積極的に前に前に出て攻めた。開始2分に福見に指導1、残り1分35秒に2回目の指導で有効ポイント。満員の観衆が騒然とする中で、浅見は体落とし、寝技で福見を崩し、さらに攻め続けた。そして、5分間が終了、悲願の夢の金メダルを獲得。一礼を終えた浅見は、応援席に向けて頭を下げ、仲間たちに両手を振りにこやかな笑顔を見せた。そして、退場する花道は顔を伏せて歩いた。それは眼から涙が溢れ出て来たから。
浅見八瑠奈世界一への戦い 2010.9.12
於 国立代々木第1体育館
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対戦相手 |
国 |
決め技 |
時間 |
1回戦 |
ロセヌ―・ アメリー |
ベルギー |
大内刈り |
0分50秒 |
2回戦 |
ラチュリベ・イザベル |
カナダ |
体落とし |
4分32秒 |
3回戦 |
ウー・ シュウゲン |
中国 |
内股すかし |
1分54秒 |
準々決勝 |
フレイタス・レアンドラ |
ポーランド |
小外刈り |
2分33秒 |
準決勝 |
ドゥミトル・アリナ |
ルーマニア |
小外刈り |
2分40秒 |
決勝 |
福見友子 |
日本 |
優勢勝ち |
5分00秒 |
大会4日目の日本勢は、メダルラッシュに沸いた。女子48s級は浅見八瑠奈が金メダル、福見友子銀メダル。52s級は西田孝宏総監督の長女西田優香(了徳寺学園職員)が金メダル、中村美里(三井住友海上)銀メダル。男子66s級森下純平(筑波大)金メダル、60s級平岡拓晃(了徳寺学園職員)銅メダルとなった。表彰台で
浅見八瑠奈は、柔道の父嘉納治五郎の顔が彫り込まれた金メダルを胸に、自分のために上がる日の丸を見つめ、君が代を聞いた。その頭には、幼い日から今日までの事が瞬時に走馬灯のように駆け巡ったのであろう、その眼は潤んでいるようにも茫然としているようにも見えた。
山部伸敏監督は「相手は世界チャンピオンだが、組み手を研究した成果が表れ、足技を中心によく攻めて行った。受け身にならずに本当によく頑張った、よく目標を達成してくれた」山学応援席の全員と握手を交わしていた。
西田孝宏総監督は「浅見も娘もライバルは最強の敵。二人とも負けて負けてばかりだった。今日は二人とも攻めて・攻めて勝った、よくやった」試合中声を枯らして二人に指示を送り続けた鬼監督の目から男泣きの涙がこぼれ落ちた。 (M.I)
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