第22回出雲全日本大学選抜駅伝競走"出雲駅伝"が体育の日の10月11日、島根・出雲大社前をスタート、出雲ドームをゴールとする6区間44,5kmで競われた。大学駅伝シーズン到来を告げる大会に、全国の大学から選抜された21チームと米・アイビーリーグ選抜チームの計22チームが出場した。過去6度の優勝を誇り、昨年度2位の山梨学院大は、3年連続18回目の出場となった。レースは、1区のオンディバ・コスマスが優勝した早大に次ぐ2位で発進、2区と5区は区間11位だったが、3区・4区・6区はそれぞれ区間2位か3位の好走を見せた。大会前の下馬評では評価の低かった山学大は、初出場の中村悠二と松枝翔・高瀬無量が混戦の中で力を発揮、5位の成績を収めた。主力の抜けた穴は大きいと思われたが、新戦力が台頭、11月の全日本大学駅伝、正月の箱根駅伝で爆発する力があることを証明した。
大学三大駅伝の開幕レースは総延長44,5kmで競われる。全日本大学駅伝の8区間(106,8q)、箱根駅伝の10区間(217,9km)と比べて距離が短く、スピードが重視される。山学大は昨年準優勝、上位3校に与えられるシード権を獲得したが、主力を担った中川剛や岩田真澄・後藤敬・大谷健太・康太双子兄弟ら中心メンバーが卒業、大会前の予想では非常に厳しい戦いが予想された。新チームで臨む初めての駅伝は、1区オンディバ・コスマス(3年)、2区鳥羽和晃(2年)、3区中村悠二(3年)、4区松枝 翔(3年)、5区川口琢也(4年)、6区高瀬無量(4年)、6人中3人が駅伝初出場の布陣で臨んだ。レース前の下馬評は、5000m13秒台のスピードランナーが多い早大を中心に駒大・日体大・明大・初出場の城西大・青学大が有力と見られ、山学大は8位前後の実力と分析され、非常に厳しい戦いになると予想された。
スタート時13時05分の天候は晴れ、気温27,0度、湿度56%、東北東の風2,2m、山陰の秋にしては日差しの強い秋晴れ、選手は暑さとも戦うレースとなった。
■ 1区(8,0km)オンディバ・コスマス(3年 山梨学院高)
2列目からのスタートだったため、スタート直後は自重したが、500m付近から先頭に出た。区間新記録ペースの速いスピードで集団を引っ張る形になり、4キロ過ぎからは2位の早大矢澤 曜との一騎打ちとなった。後ろから何度も足を蹴られ、蛇行したこともあってスタミナを消耗、残り900mで矢澤に抜かれた。区間2位の23分24秒、早稲田とは17秒差だった。オンディバ・コスマス選手は「足を何度も蹴られてイライラしてしまった。気になって右になったり左になったりした。ちょっと悔いが残る、次は負けない」とリベンジを誓った。
■ 最短区間2区(5,8km)鳥羽 和晃(2年 前橋育英)
2位でたすきを受けたが、初めての駅伝出場で頭の中が真っ白になってしまった。ペースがつかめずにズルズルと後退した。3,5キロ地点で7位に下がり、4,8キロで8位に落ちた。17分35秒、トップとは56秒差の走り、区間11位の8位でたすきをつないだ。鳥羽 和晃選手は「状態は悪くなかったが、始めての大舞台でたすきを貰ったら頭が真っ白になってしまった。この悔しい経験を全日本・箱根に生かさなければ意味がない」と唇をかんだ。
■ 3区(7,9km)中村 悠二(3年 日高)
1年の時に左足首の靭帯を痛め、走れないために太り、太った為に走れない悪循環で2年間を棒に振った中村悠二が、初めての駅伝で大健闘の走りをした。4キロ過ぎに順位を6位に上げ、さらに7,9キロで4位に上った。23分29秒、トップとの差1分10秒、区間3位の大健闘。中村 悠二選手は「最初は抑えて、少しずつ上げた。走っていて調子がいいと感じた。周りに惑わされずに走ったのが区間3位の成績につながった。1年の時に故障して、まったく走れず体重が10キロも増えてしまい、やめようとも思った」挫折を乗り越えて体を絞り成果を出した。
■ 4区(6,2km)松枝 翔(3年 鹿児島実)
走り出しから3キロ付近で東農大の田村にかわされ、いったん5位に落ちたがそこから食い下がった。4キロで再び4位に上げ、最後は3位の東洋大に3秒差に迫った。18分02秒、区間3位、トップと1分18秒差の4位。松枝ら8人が区間新という激戦区を激走した。松枝 翔選手は「最後は東洋大を抜いて渡したかった。目標は区間賞だったので満足する結果ではない。レースをじっくり組み立てたが、もう少し突っ込んでも良かったかも知れない」と振り返った。
■ 5区(6,4km)川口 琢也(4年 中京大中京)
川口琢也はサテライト組みから這い上がってきた。実力を伸ばし、ラストシーズンの4年目に登用された。そして、その初舞台は苦い舞台となった。緊張で思い描いたレースは出来ず、リレー直後に駒沢大にかわされ5位に下がり、3キロ付近で東農大にかわされ6位に下がった。区間11位の19分30秒かかり、トップと1分55秒差の6位でリレーした。川口 琢也選手は「初めての大舞台に緊張して、勝負すべきところで勝負できなかった。出場できたことはとても嬉しいし、ありがたいと思った。勝負にこだわるレースが出来ないと使ってもらう意味がない」と反省していた。
■ 最終6区(10,2km)高瀬 無量(4年 市立尼崎)
6位でたすきを受けた主将の高瀬は、区間賞を目標に前を行く東農大を追い最後に逆転、チームの順位を5位に上げて出雲ドームのゴールテープを切った。高瀬 無量選手は「区間賞を狙って走ったので、早稲田の平賀に取られたのは悔しい、最初の入りをほぼ予定通りの2分51秒で入り、途中までは行けるレースだったので悔いが残る。次は、自分の力を信じて力を出し切りたい」チームを牽引する主将はライバルに一歩及ばなかったことを悔やんだ。
第22回出雲駅伝 山梨学院大学 総合成績 5位 タイム 2時間12分09秒
区間 |
ランナー |
区間タイム |
区間順位 |
合計時間 |
総合順位 |
1区 |
オンディバ・コスマス |
23,24 |
2位 |
23,41 |
2位 |
2区 |
鳥羽 和晃 |
17,35 |
11位 |
40,59 |
8位 |
3区 |
中村 悠二 |
23,29 |
3位 |
1:04:28 |
4位 |
4区 |
松枝 翔 |
18,02 |
3位(区間新) |
1;22:30 |
4位 |
5区 |
川口 琢也 |
19,30 |
11位 |
1・42.00 |
6位 |
6区 |
高瀬無量 |
30,09 |
2位 |
2:12:09 |
5位 |
上田誠仁監督は「出雲駅伝は、切れ味を試すレース。うちのチームは、まだ切れ味のないナタのようなチーム。最初は耐えなければ行けないので、コスマスを起用した。2区で悪い部分が出たが、3区・4区でいい走りが出来た。川口についてはこの結果だけで判断してはいけない。昨年までの主力が抜けて層が薄くなったが、全日本では6位以内に入らないとシード校になれない。厳しい戦いになることは分かっているが、下馬評は覆すためにあるもの、どんと構えて行きたい」とチーム状況を語り、次の全日本駅伝を見据えた。
飯島理彰コーチは「3位以内を狙っていたので、5位は残念。柱になる選手はよく走ったが、期待と不安があった選手は不安の方が出てしまった。2人にはこの経験を活かしてほしい。練習でいい数字を出せる選手が、試合でいい数字を出せるように指導していきたい」と開幕レースを振り返った。
大会最終成績は、終始1位をキープした早稲田大が14年ぶり2度目の優勝。2位日本大、3位駒澤大、4位東洋大、5位山学大、6位東農大、7位中央大、8位明治大、9位京産大、10位第一工大などとなった。 (M.I)
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