平成22年度講道館杯全日本体重別選手権大会が11月20日、千葉市の千葉ポートアリーナで開幕した。男女7階級の柔道日本一を決める2日間の大会、山梨学院大から女子16名、男子4名が出場する。今年の山学大女子は48kg級の世界チャンピオンとなった浅見八瑠奈、52kg級学生チャンピオンの浅海静香、国際大会金メダルの52s級加賀谷千保など人材が豊富。そして初日に、新たなヒロインが誕生した。6月のインカレで山学大大学日本一の原動力となった78s超級の山部佳苗が、初戦から決勝まで全て"払い腰"で1本、1本、技あり、1本と相手を豪快に投げ飛ばす離 れ業を演じた。まだ20歳の2年生が、今度は個人戦で最も重いクラス柔道日本一の栄冠を獲得した。また、4年生の主将70s級の谷口亜弥も健闘した。準決勝で田知本遥に敗れたが、3位決定戦で強敵の岡明日香を押さえ込み1本勝ちした。1日目の山学勢は山部と谷口の2人が表彰台に上った。
≪山部佳苗(78s超級 2年 旭川大高)≫4連続払い腰で本人ビックリの初優勝
山部は1回戦シードで2回戦から登場した。2回戦の相手新田沙也加(高岡法科大)は178cm・130sもある巨漢、身長で6cm・体重で30sもの差があったが圧倒して払い腰1本勝ち。3回戦の山本恭奈(帝京大)払い腰1本勝ち。準決勝の市橋寿々華(東海大)戦はGS方式(延長3分の間にどちらかがポイントを挙げたところで終了となるゴールデンスコア方式)にもつれたが払い腰で技ありを奪い決勝に進出した。決勝は帝京大を卒業して社会人になった石山麻弥(丸順)との対戦となった。以前対戦した時は指導2を取られて敗れた相手。しかし、樹徳館で男子柔道部員を相手に猛稽古を重ねてきた山部は成長していた。奥襟を持てば技を仕掛けられる、石山はこれを嫌い組み合おうとしない、3分30秒に石山に指導1、山部監督から「小さくなるな、胸を張って大きい柔道を しろ」の声が飛ぶ。5分間が過ぎ両者ポイントなし、決勝も準決勝に続きGS方式の延長戦に突入した。そして、6分10秒、山部この日4本目の払い腰が炸裂、石山の体がきれいに一回転、ドスンと大きな音を立てて巨体が畳みに落ちた。鮮やかな1本勝ちで見事な初優勝を成し遂げた。山学大から生まれた日本チャンピオンは3 年前の小澤理奈(現ミキハウス)と浅見八瑠奈(1年時)以来で3人目の快挙、20歳の2年生が一気に最重量級日本一に駆け上がった。山部佳苗選手は試合後「優勝できるとは思っていなかったので、ビックリしました、嬉しいです。決勝の払い腰は、相手が組み手を嫌って下がった所を決めた。これで杉本さん、田知本さんと同レベルに立てたと思う、これを出発点・通過点にして頑張って行きたい」と喜びを語り、飛躍を誓った。
≪谷口亜弥(70s級 4年 桐蔭学園)≫大怪我を乗り越えて稽古を重ね才能が開花
1回戦の杉本明日翔(JR東日本)合わせ1本勝ち、2回戦前田奈恵子(帝京大)後袈裟固め1本勝ち、3回戦大住有加(環太平洋大)背負い投げから押さえ込み1本勝ち、準決勝でここまで1勝1敗のライバル田知本遙(東海大)に押さえ込まれて敗れたが、3位決定戦で強敵の岡明日香(コマツ)に3分47秒押さえ込み勝利した。谷口は3年の時に膝に大怪我を負い手術、ほぼ1年をリハビリに費やして復帰した苦労人。今年は主将としてチームを牽引し団体戦関東優勝・インカレ優勝の原動力となった。高校時代の実績は高くなかったが、山学大に入って努力を重ね、得意の片袖背負い投げなど切れ味 の鋭い技を身に付けて成長した。谷口亜弥選手は表彰式後「準決勝の田知本戦は相四つで、得意の片袖背負いが使えず戦い辛かった。あとの試合は良かったが準決勝が悪かったので、今日の出来は60点です。卒業後は了徳寺学園チームに所属することになったので、現役を続行します」と語った。得られなかった日本一の頂点を来年こそ勝ち取 る。
そのほかの山学勢の成績
78s級の濱田尚里(2年 鹿児島南)が2回戦で第1シードの世界選手権代表の岡村智美(コマツ)に1本勝ちする金星を挙げた、3位決定戦で池田ひとみ(自衛隊体育学校)に敗れ5位。70s級の飯田有香(4年 渋谷教育学園)敗者復活戦で敗退し5位。78s級生田茜(4年 作新学院)2回戦敗退。70s級馬場菜津美(1年 埼玉栄)2回戦敗退。男子100s超級鈴木健人(4年 拓大紅陵)・増田哲也(3年 大牟田)1回戦敗退。
山部伸敏監督「最後に山部佳苗が1本勝ちで明日につながる優勝をしてくれた。今日は、谷口・飯田・山部・濱田の4人が優勝の可能性がある動きをした。飯田は1回戦から組み辛い相手ばかりだった。谷口・濱田も悪くはなかったが、もう1試合勝ってほしかった。山部は小さくならずに攻めの姿勢に徹した」と1日目を振り返った。
21日の2日目(最終日)は、体重の軽いクラスの戦いとなる。女子の浅見八瑠奈、浅海静香、加賀谷千保、男子の中村剛教、清水健登らが柔道日本一に挑む。(M.T)
| アルバム
山部佳苗 | アルバム谷口亜弥 |