柔道グランドスラム東京2010が、12月11日から3日間にわたり東京・千駄ヶ谷の東京体育館で開催された。約50の国と地域から五輪、世界選手権のメダリストら約400名が結集した。世界トップクラスが集う大会に、山学大から世界選手権優勝の48s級浅見八瑠奈と52s級加賀谷千保、70s級谷口亜 弥、78s超級山部佳苗、それに57s級の連 珍羚が台湾代表として出場した。このうち、最重量級の山部佳苗が、世界選手権2階級制覇・アジア大会金メダルの日本のエース杉本美香を準々決勝で破る金星を挙げた。準決勝でキューバの選手に敗れ3位に終わったが、オリンピック日本代表候補の階段を上り始めた。加賀谷千保と連 珍羚も同じく3位となった。優勝が期待された浅見八瑠奈は、準々決勝で帝京大の近藤香に敗れ世界選手権・講道館杯との三冠はならなかった。主将の谷口亜弥は優位に試合を進めていた2回戦で逆転負けを喫し、上位進出はならなかった。
≪78kg超級 山部佳苗(2年 旭川大付属高)≫
女子最重量級の山部佳苗は、初戦の2回戦でアドリントン(英国)から有効を奪い優勢勝ち、準々決勝で優勝が本命視された世界女王の杉本美香(コマツ)と対戦した。杉本は世界選手権2階級制覇・アジア大会金メダリスト、第1人者の塚田真希が引退した現在は、押しも押されもしない日本のエース。グランドスラム初出場の山部にとっては格上の相手と思われた。しかし、初挑戦の杉本に臆することなく果敢に攻めた。開始2分11秒に谷落としで有効を奪い、残り1分53秒に指導を奪 い、優勢勝ちを収めた。準決勝で2大会連続世界3位のオルティス(キューバ、WR5位)に残り1分19秒に大腰から寝技に持ち込まれ、横四方固めで1本負けした。山部佳苗選手は「(オルティス戦は)最後まで掛け切ることが出来なかった。こういうチャンスをものにしないといけないので悔しい。たまたま杉本さんに勝てただけで次は判らないが、少しは自信になった。オリンピックはまだ遠いが、田知本さん・杉本さんと対等に戦えるようにもっともっと練習して実力を つけたい」自信と悔しさを抱いたグランドスラムデビュー戦となった。
≪52kg級 加賀谷千保(2年 藤枝順心)≫
2回戦で世界ランク4位のカラスコサ(スペイン)を内またで撃破、準々決勝でタラングル(ドイツ)を大外刈りで破り、準決勝で16歳の新鋭山本杏(桐蔭学園)と対戦した。11月の講道館杯では防戦一方でいい所なく敗れた相手だったが、この日は果敢に攻めていった。組み手で優位に立ち、積極的に足技を仕掛 けた。しかし、1分1秒に仕掛けた小外刈りを返され敗退した。加賀谷にとって今年はけがとの闘いの年だった。2月に右足付け根を負傷し柔道感が狂ってしまい、思うような柔道が出来ないシーズンを送った。12月になってようやく回復してきた。高校3年の時に今大会の前身である嘉納杯でも3位になったが「あの時はただ嬉 しかったけど、今は優勝しないといけないと思う」。けがを克服し復活の狼煙を上げた加賀谷、次は金メダルを狙う。
≪48kg級 浅見八瑠奈(4年 愛媛新田)≫
1回戦のシン・ソウミン(韓国)優勢勝ち、2回戦のムンクバト(モンゴル)横四方固めで1本勝ち、準々決勝で日本の近藤香(帝京大)と対戦した。9月の世界選手権で優勝して以来、10月の全日本学生体重別団体、11月の講道館杯、このグランドルラムと4連戦、疲労がピークに達した浅見の体は重かった。初戦 から動きに精彩を欠き、近藤戦では小内刈りで有効を奪われて敗退した。「初戦から動きが悪いなと思っていた。いつも良いわけではないので、その中でも勝たなければいけない」と悔しさを滲ませた。来年1月から再び国際大会に臨む。「ロンドンまで争いは続く、与えられた大会で勝ち続けたい。一番練習した人がロンドン五輪 代表になれると思う」。仕切り直しを誓った。
≪70kg級 谷口亜弥(4年 桐蔭学園)
1回戦のマルゾック(英国)戦は2分31秒横四方固めで1本勝ち。2回戦のズバンシック(カナダ)戦も非常にいい動きで相手を圧倒していた。残り1分40秒に袖釣り込み腰で技ありを奪い有利に立ったが、直後に一瞬の隙を突かれ払い巻き込みで技ありを奪われ、そのまま寝技に持ち込まれ、後袈裟固めで1本負け 。谷口らしい思い切りのいい動きを見せたが、上位進出はならなかった。「グランドスラムは初出場、 体調は悪く無かったです。2回戦は先にポイントを先行して、いけるかなと思ったところで、逆に技を掛けられ寝技を決められてしまいました。あと1分ちょっとだったので残念です」当たり前に代表に呼ばれるよう練習すると語った。
このほか、57kg級の連 珍羚(れん つぇんりん 1年 台湾高)が台湾代表として出場した。準決勝で優勝した松本薫に敗れたが、国際大会で3位の表彰台に上がった。連 珍羚選手は「国際大会で初めてメダルを取ることが出来て嬉しいです。集中して試合を戦うことが出来たので、自信になりました。来年は妹も山梨学院に入ってきます、姉妹でがんばりたい」スタミナをつけることが課題だとうまくなった日本語で話した。 (M.T)
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