新春恒例の第87回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は1月3日、神奈川・箱根町芦ノ湖から東京・大手町読売新聞旧本社前までの5区間109・9キロで行われた。往路3年連続優勝の東洋大が午前8時にスタート。2位の早大以降は白旗でのスタート。往路13位の山梨学院はエントリー通りのオーダー。6区 山口大徳(4年)・7区 佐々木直弥(3年)・8区 牧野俊紀(2年)・9区 赤峰直樹(4年)・10区 中原薫(4年)で、26年連続出場の栄を襷に賭け挑んだ。山学大は、先頭と7分2秒、シード権10位の日体大と1分27秒差でスタート。6区の山口は「上りが不得意」と、4キロの上がりを耐えた。すると得意とする下りに入る標高874メートルからの下りで、東農大・国学院大・拓大・城西大を抜き去り函嶺洞門を9位で通過。さらに、平地に入って帝京大を捕らえ、驚異の5人抜きの快走でシード権内の8位で小田原中継所で待つ佐々木に襷を手渡した。7区の佐々木が暫くして拓大・城西大・帝京大に吸収され、さらに青学大と国学院大にも追いつかれ8位から13位の集団となり、シード権争いが熾烈となった。その中で佐々木は全力で走ったが、一度は振り切った青学大にも追いつかれ13位同着の順位とした。8区の牧野は国学院大を捕らえ12位に浮上。しかし、9区の赤峰が国学院大に抜き返されて13位。最終区の中原は、シード権争奪に執念を燃やしてスタート。前を行く5大学を吸収し、シード権争奪戦が熾烈さを増す。さらに中原は城西をも吸収し、山学大・日体大・国学院大・城西大・青学大と8位集団とした。馬場先門を通過して、攻め立てていた中原が集団から離れて行く。「粘ることが出来なかった」と大手町に12位でゴール。中原は渾身の走りで精根尽き果て、仲間に抱えられ崩れ落ちた。山学大は往路5時間36分52秒で13位、復路5時間36分58秒で9位、総合11時間13分50秒で12位とし、4年ぶりのシード落ちとなった。総合優勝(217.9キロ)は、往路5時間30分17秒大会新記録2位、復路5時間29分34秒1位で、総合10時間59分51秒の大会新記録を樹立し、18年ぶり13回目の総合優勝を果たした早大。早大は出雲と全日本、そして箱根を制し3校目の3冠をも達成した。
箱根は昨夜降った雪で銀世界となった。スタート地点の芦ノ湖は雪の影響はないものの、昨日に比べて厳寒。午前8時00分、1位の東洋大が号砲スタート。2位の早大が白旗でスタートし、3位 東海大、4位 明大、5位 駒大、6位 国学院大、7位 城西大、8位 中大、9位 拓大、10位 日体大のシード権校が時間差でスタートした行った。山学大は、先頭と7分2秒、シード権10位の日体大と1分27秒差で、箱根の山を駆け上がって行った。
◇6区(20.8キロ 箱根 ⇒ 小田原) 山口大徳(やまぐち ひろのり[4年・会津工業])
☆総合8位 6時間37分2秒 / 区間6位 1時間0分10秒
◇6区は標高874メートルから一気に下る名物区間。山口は「上りが不得意」と、4キロの上がりを耐えた。山口は「前が見えていたのでいけると思った」と、昨夜に降った雪で凍り付いた路面もものともせずに、得意な下りを軽快に飛走り、東農大を捕らえ小涌園前(9.0キロ)地点を12位で通過、「行けるだけ行こう」と国学院大を抜き大平台(13.7キロ)地点を11位で通過。リズムに乗った山口は「見えたら抜いてやる」と拓大と城西大を抜き去り、函嶺洞門(17.0キロ)地点を9位で通過。さらに、平地に入って帝京大を捕らえ驚異の5人抜きの快走を見せ、シード権内の8位で小田原中継所で待つ佐々木に襷を手渡した。
■1位 早大、2位 東洋大、3位 駒大、4位 東海大、5位 明大、6位 日体大、7位 中大、8位 山学大、9位 城西大、10位 帝京大(シード権)
◇7区(21.3キロ 小田原 ⇒ 平塚) 佐々木直弥(ささき なおや[3年・鳥取中央育英])
☆総合13位 7時間43分10秒 / 区間12位 1時間6分8秒
◇7区・佐々木は山口から襷を受け取ると、ほぼ平坦なコースを走る。暫くして、佐々木は拓大・城西大・帝京大に吸収され8位から11位の集団となり二宮(11.7キロ)を通過。間もなく、国学院大・青学大に追いつかれ8位から13位の集団となり、シード権争いが熾烈となった。給水後に拓大・城西大・帝京大・国学院大が先に行き、佐々木は大磯(18.1キロ)を12位で通過。佐々木は全力で走ったが「流れを断ち切ってしまった」と、一度は振り切った青学大にも追いつかれ13位同着と順位を落として、平塚中継所で待ち構える8区の牧野に襷を託した。
■1位 早大、2位 東洋大、3位 駒大、4位 東海大、5位 明大、6位 中大、7位 拓大、8位 城西大、9位 日体大、10位 帝京大(シード権)
◇8区(21.5キロ 平塚 ⇒ 戸塚) 牧野俊紀(まきの としき[2年・西武台千葉])
☆総合12位 8時間50分27秒 / 区間11位 1時間7分17秒
◇牧野は「出来るだけ前との時間を縮める」とスタートし、青学大と同順位の13位で茅ヶ崎(6.9キロ)地点を通過。牧野は通過してすぐに「躊躇してペースを上げることが出来なかった」自分を悔いてペースアップ。牧野は前を行く神奈川大を抜き12位へ、そして国学院大を捕らえ11位の同順位で遊行寺坂(15.9キロ)を走り抜けた。暫くして並走していた国学院大を振り切り影取(18.4キロ)を単独11位通過。しかし、青学大に抜き返され12位。牧野は「順位を上げることは出来たが、もっと、ペースアップするタイミングを、5キロ当たりから上げていれば10秒違っていた」と悔いながら、戸塚中継所で待つ9区・赤峰に襷リレーした。
■1位 早大、2位 東洋大、3位 駒大、4位 東海大、5位 明大、6位 中大、7位 日体大、8位 拓大、9位 帝京大、10位 城西大(シード権)
◇9区(23.2キロ 戸塚 ⇒ 鶴見) 赤峰直樹(あかみね なおき[4年・鶴崎工業])
☆総合13位 10時間1分58秒 / 区間13位 1時間11分31秒
◇9区は復路のエース区間。赤峰はスタート後、急な下りを走り「2年ぶりの箱根」に燃えていた。不動坂交差点を抜け、権太坂(7.8キロ)を軽快に走り抜けた。起伏の多いコースに力が入る。赤峰は国学院大に抜かれ横浜駅前(14.6キロ)地点を順位を1つ落としての13位で通過。赤峰はシード権の望みを繋ぐ走りで生麦(20.2キロ)を駆け抜けたが、前とのタイムを思うように詰められずに、鶴見中継所で待つ中原に望みを託した。
■1位 早大、2位 東洋大、3位 駒大、4位 東海大、5位 明大、6位 拓大、7位 中大、8位 城西大、9位 帝京大、10位 青学大(シード権)
◇10区(23.1キロ 鶴見 ⇒ 大手町) 中原薫(なかはら かおる[4年・世羅])
☆総合12位 11時間13分50秒 / 区間12位 1時間11分52秒
◇最終区の中原はシード権争奪に執念を燃やしてスタートすると、前を行く日体大を捕らえて並走。蒲田(6.0キロ)を12位で通過。中原は、さらに攻め立てて前を行く国学院大を吸収し3校並走。中原は休むこと無く、新八ッ山橋(13.4キロ)を過ぎ、さらに帝京大も吸収。シード権争奪は5大学での攻防となり、ますます熾烈さを増す。中原は田町(16.4キロ)を通過すると、集団の先頭に出て御成門(18.1キロ)を通過。中原は攻めの姿勢を緩めること無く前を行く城西を吸収し、山学大・日体大・国学院大・城西大・青学大と8位集団を形成。驚異的な追い上げでチームを再びシード権内とした。しかし、馬場先門(20.1キロ)を通過しすると、中原は集団から離れて行く。「粘ることが出来なかった」と、大手町に12位でゴールした。中原は渾身の走りで、全てを絞り出し精根尽き果て仲間に抱えられ崩れ落ちた。
■1位 早大、2位 東洋大、3位 駒大、4位 東海大、5位 明大、6位 中央、7位 拓大、8位 日体大、9位 青学大、10位 国学院大(シード権)
□高瀬無量主将(4年・市立尼崎)は「結果、シード落ちとなってしまい、キャプテンとしての役目であるチームを強くすることが出来なかったことが本当に悔しい。キャプテンとして2区を走ったものとして、後輩達には何一つ残せなかったこと、伝統をつくってくださった先輩達、応援してくださった方々に、失望を与えてしまったこと、誠に申し訳ない気持ちで一杯です。寒い中、応援してくださった方々に心より感謝したい」と、神妙に殊勝に健気に述べた。
□飯島理彰コーチは「シード落ちという結果を真摯に受け止め、シード校、優勝校・早稲田との差は何か、そしてレベルの上がっている大学長距離界で戦うためには何をしなければならないか、私も含めチーム全員で理解し、来年の箱根駅伝では悔しい思いをしなくても良いように、きちっと仕上げて行きたい。4年生には辛い思いをさせて申し訳ない気持ちで一杯」と、唇を噛んだ。
□上田誠仁監督は「アンカー中原は力の限り頑張ってくれて、再び8位争いまでチームを引き上げてくれた。ラストスパートでほしくも負けはしたが、中原のシード校になるために思いを込めて走った襷は、来年この場に連れてこなければならない。予選会は甘くない。我々がやらなければならないのは、全精力を傾けて泥にまみれ、血の滲むような努力をして、強くたくましくなること。そしてこの場所に帰ってくる覚悟」と、参加校の精魂を傾けて襷に賭けた青春の余韻が残る大手町を後にした。
文(H・K)、カメラ(八巻和夫・今村佳正・小池裕太・Y.Y)
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