第十二回酒折連歌賞の表彰式が2月22日、山梨学院大学広報スタジオで行われた。表彰式には大賞・文部科学大臣賞を受賞した谷口ありささん(神奈川県相模原市)、山梨県知事賞の小笠原久枝さん(東京都多摩市)、山梨県教育委員会教育長賞の逢坂久美子さん(青森県青森市)、甲府市長賞の金巻未来さん(山梨学院中3年)、アルテア賞最優秀の佐藤飼Tさん(古川学園中3年)の5人が出席した。大賞を受賞した谷口ありささん(35歳)は、受賞作「からだじゅう からっぽにして 走り出してる」について「走り高跳びのバーを夢とか目標に置き換えて、思い切って一歩踏み出す気持ちを表した」と受賞の感想を述べた。今年度の大会には32,589の応募句が寄せられた。3万句を超えたのは8年連続で、大賞からアルテア賞最優秀までの上位5賞を女性が独占した(第1回.第8回に次ぐ3度目)。式のあと受賞者は、日本武尊ゆかりの連歌発祥の地、酒折宮を訪れて受賞を報告した。
大賞(文部科学大臣賞)
(問いの片歌4、また上がる一本のバー見上げる高さ)
からだじゅうからっぽにして走り出してる 谷口ありさ (神奈川県相模原市)
谷口ありささん受賞の言葉「このような賞をいただけるとは、夢のようです!問いの片歌を見て、グランドに一人で立っている自分を想像しました。走り高跳びのバーを夢とか目標に置き換えて、臆病な自分が思い切って踏み出し走り出した気持ちを表しました」
山梨県知事賞
(問いの片歌1、ひらがなできもちつたえてゆびきりしよう)
こころにはふれればひびくがっきがあって 小笠原久枝 (東京都多摩市)
小笠原久枝さん受賞の言葉「半年前から俳句を始めたばかりですが、すべてひらがなの問いの片歌を読んで、ひらがなはとても温かいと感じました。そのときに瞬間的にひらめいた言葉を同じようにひらがなで表現して返しました」
山梨県教育委員会教育長賞
(問いの片歌2、鳥がゆき明日も天気と決めて見る空)
君が住む遠い町にもつながっている 逢坂久美子 (青森県青森市)
逢坂久美子さん受賞の言葉「片歌を読んで、夕暮れ時をイメージしました。夕暮れは社会的な人間からプライベートな自分に帰る時間帯。昔、遠距離恋愛をしていた時のことを思い出して作りました」
甲府市長賞
(問いの片歌3、ああこれでみんな揃ったさてはじめよう)
永遠を信じてしまうこの温かさ 金巻未来 (山梨学院中3年)
金巻未来さん受賞の言葉「友達と一緒にいる中学3年の時間、受験を控えているがいつも温かい、大切な時間が流れている。高校になるとこういう楽しい時間はなくなるのかなという不安を抱きながら、中学3年だから感じられる青春時代の気持ちを歌にしました」
アルテア賞最優秀
(問いの片歌1、ひらがなできもちつたえてゆびきりしよう)
ぬくもりとことばがそっとからまるしゅんかん 佐藤飼T (古川学園中3年)
佐藤飼Tさん受賞の言葉「この歌は通学途中に作りました。問いの片歌に合わせてひらがなで温かく返そうと思いました。酒折連歌賞は、色々な地域の色々な年齢の方々が参加していて参考になることがたくさんありました。来年も参加しようと思います」
酒折連歌賞は、5・7・7の問いの片歌に対して、答えの片歌を5・7・7で返す歌遊び。日本武尊ゆかりの連歌発祥地甲府市酒折宮にちなみ1998年に創設され、今年度で第十二回を数える。今回から大賞(文部科学大臣賞)に加えて、山梨県知事賞・山梨県教育委員会教育長賞・甲府市長賞の3賞が新設され た。概要説明を行った川手千興実行委員長は「今年度の大会応募句数は32,589句、8年連続して3万句以上の応募が寄せられた。今年の最大の特徴は、応募者の74%を10代が占めたこと、学校の授業に活用されるケースが一段と増えた。都道府県別では山梨県が最も多く10,960句、次いで東京2,800句、埼玉、兵庫、沖縄の順。海外からもデンマークを始めオースト ラリア・ポルトガルなどから84句が寄せられた」と説明した。主催者を代表して挨拶した山梨学院大学古屋忠彦学長は「日本書紀の世界の文学が依然として続いていることにある種の感動を憶える。自分一人で完結するのではない連歌は、索漠とした時代を和らげる効果がある。これからはいたずらに数を求めるのではなく、質を求めて良い作品を継続して世に送り出していきたい」と述べた。選考委員の廣瀬直人選考委員長は「上位5句は、偶然にも、15歳の瑞々しさ、30代・40代の人生体験、70歳を超えた人生の落ち着きが表されていた、それぞれの世代の思いがバランスよくものの見事に凝縮された形になった。5句は皆普遍性を持っている」と選評した。三枝昂之選考委員は「色々な選考をしているが、酒折連歌が一番楽しい、自分の片歌に想像した形で答えてくれるのか、それとも思ってもいない歌が返ってくるのか、毎回楽しみにしている。甲府市長賞を受賞した金巻未来さんの作品は、想像した答えの中で一番見事に燃え上がってくれた、連歌の楽しさを 実感させる作品」と高く評価した。もりまりこ選考委員は「19文字の短い言葉から、コミュニケーションが広がり、世界が広がって行くことが素晴らしい。今回の片歌はすべてひらがなで問いかけたが、多くの方がすべてひらがなでリズムを合わせて返してくれた。歌作りはリズム感が大切なことを再度実感させられた」とそれぞれ選考審査 を振り返った。来年度の第十三回酒折連歌賞は、3月下旬に問いの片歌が発表され、4月1日から募集が開始される予定。
文(M.T) カメラ(藤原 稔)
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