第52回日本選手権水泳競技大会競泳競技2日目(最終日)の2月27日、東京辰巳国際水泳場で男女14種目の予選・決勝が行われた。初日に加藤和(400m個メ)と鈴木聡美(100mバタ)が優勝した山梨学院勢は、2日目のレースに男女19人が出場した。このうち萩原智子(100m自由)、加藤和(200m個メ)、中坊彩(100mバタ)、鈴木聡美(200m平泳)、村上優海(200m平泳)の5人が決勝に進出。萩原智子が圧倒的強さで優勝を飾り、表彰台で萩智スマイルを復活させた。加藤 和(いずみ)と鈴木聡美の2人は、ともに自己ベストでの2位、揃って連日の表彰台となった。そして、100mバタフライの中坊 彩(なかぼう あやか)が素晴らしい泳ぎを見せた。リラックスした泳ぎで自己ベストを樹立、堂々と3位に入った。中坊にとっては全国大会初の表彰台、冬場に黙々と泳ぎこんだ成果が出た。村上優海(ゆうみ)は7位入賞した。山学勢は、この大会を4月の日本選手権前哨戦と位置づけ て調整なしで臨んだが、ほとんどの選手が好感触と自信を獲得して発進した。
≪女子 100m自由形 決勝 萩原智子≫
この日最初の決勝レース女子100m決勝に萩原智子(山梨学院カレッジスポーツセンター職員)が登場、いきなり会場の観客を惹き付ける泳ぎを見せた。25mのターンで頭ひとつ抜け出し、50mでは完全にトップに立った。75mのターン後もそのままリードを保ち54秒20でゴール、2位の山口美咲(近畿大)に0秒15差をつける余裕の優勝となった。傍目からは、年齢を感じさせない驚異の泳ぎに映ったが、世界で戦うことを目標に復帰してきた萩原にとっては、満足のいくレースではなかったようだ。萩原智子選手は「53秒台の自己ベストを狙っていたので、勝負に勝てたことはうれしいが、残念です。日本のトップ(上田春佳)が出ていないし、このタイムでは世界で勝てない。一緒に練習している若手から足りないところをもらい、日本選手権で結果を出して上海の世界水泳に出場したい」チャレンジャー として選手権に挑むと語った。
≪女子 200m個人メドレー 決勝 加藤 和≫
加藤 和(2年 桜の聖母学院短大)は、前日同様に予選トップで決勝に進出した。しかし、スタートが全体で最も遅い0.78の反応、出遅れてしまった。最初のバタフライは7位、背泳ぎでも7位と後方集団だった。昨日の400mでは得意の平泳ぎで一気にトップに立ったが、距離の短い200mでは2位に引き上げるのが精一杯だった。ラ ストのクロールで追い上げ、あと一歩まで迫ったが、先行する福田智代(KONAMI高崎)を捉え切れなかった。自己ベストの2分09秒99の泳ぎだったが、2冠獲得はならず昨年と同じ2位となった。加藤和選手は「スタートでやや出遅れた。予選よりは速く泳ぎたいと思い、何とか自己ベストを出すことが出来た。今の段階ではまずまず、4月の選手権に向けてスピード練習をして体をベストに持っていきたい」平泳ぎ前の段階をどう乗り切るかが今の課題と話した。
≪女子 200m平泳ぎ 決勝 鈴木聡美≫
鈴木聡美(2年 九産大九州)は、前日と同じようにリラックスを図るために右手でポーズを決めてレースに向かった。200mに苦手意識を抱いているが、予選通過が7位だったこともあって気楽な気持ちで泳げたのだろう、決勝は非常に積極的なレースを見せた。25mでトップに立ち、100mまで先行した。直 後に福留尚子(鹿屋体育大)にかわされ2位に下がったが、最後まで粘り切った。これまでの自己ベスト(2:23,41)を大幅に短縮させる2分20秒95でゴールした。鈴木聡美選手は「予選のあとコーチから、順位を気にせずに今持っている力を全部出し切るようにと言われ、リラックスして泳いだら自己ベストが出ました。大会前はターンに不安があったが、泳いで見たら自分の感覚ではこれまでより早く回れた。男子の冨田尚弥選手(中京大)のターンが素晴らしいので あのターンを見習いたい。スタートの入水角度やターンの動作を磨き、4月の選手権では前年同様3冠を狙いたい」と語った。
≪女子 100mバタフライ 決勝 中坊 彩≫
中坊 彩(2年 京都外大西)は午前中の予選を3位で決勝に進んだ。予選では少し力んだ泳ぎになったので、決勝では力まずにリラックスして泳ごうと自分に言い聞かせて飛び込んだ。50mの通過タイムは27秒83、3位で通過した。75mも3位、最後まで力まずにリラックスして泳ぐことを心掛けた。そして ゴールも3位、自己ベストの50秒03、シニア大会初の表彰台を獲得した。昨年は苦しい戦いが続き、結果を残せなかった中坊は、表彰台で両手を大きく振り、全身で喜びを表して満面の笑顔をカメラの放列に向けた。中坊 彩選手は「自分のレースをすることだけを考え、決勝は落ち着いて泳ぐことが出来ました。自己ベストが出たのは、冬場にしっかり泳ぎこんだことで力が付いたのかも知れません、よかったです。4月の長水路での選手権で今日ぐらいのタイムを出せば決勝に残れるので、ユニバーシアード目指して頑 張りたい」とさらなる飛躍を誓った。
そのほか、女子200m平泳ぎ決勝に進出した村上優海(2年 市立船橋)は後半追い上げて7位入賞した。村上優海選手は「長水路での争いのために記録を出しておきたかったが、もうちょっとだった。4月に向けてしっかり調整したい」と振り返った。
2日間の大会は、アメリカから一時帰国して出場した北島康介が50m・100m.200m平泳ぎで驚泳、日本新3連発で3冠を獲得する圧巻の泳ぎを見せるなど、北島・萩智らベテラン勢が存在感を見せる一方、高校新・中学新が連発、高校生以下の若い力の台頭も目立ったシーズン開幕レースとなった。山学勢は、 2日間とも5人が決勝に進出、優勝3人、準優勝2人、3位2人、入賞3人(延べ人数)を出したほか、男子1500mの菅原和也が自己ベストで10位、前原優理が100mIM自己ベストB決勝3位、山崎智史(4年 JFE入社)が200m個人メドレーB決勝3位、山岸奈央自己ベストB決勝4位、福田真大が自己ベストを 樹立、山梨学院高の江原騎士と七里夏海の2人の高校生も健闘した。2日間の戦いを総括して神田忠彦監督は「持久系(中・長距離)は泳げたが、瞬発系(短距離)は力を発揮できなかった。全体的には、まあまあの出来だったのではないかな、日本選手権に向けて弾みがついた」と語った。競泳日本一を決める日本選手権は4月5日(火)から10日(日)の日程で、今回と同じ東京辰巳国際水泳場を舞 台に開催される。
文(M.T)カメラ(平川大雪)
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