山梨学院パブリシティセンター
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やまなし学研究2011 開講
〜新年度テーマは「富士山考」・「甲斐の国人物伝」〜
〜第1回「富士は誰のもの」椎名愼太郎名誉教授〜
山梨学院生涯学習センターは4月27日、大学生涯学習センター講義室で「やまなし学研究2011」第1回講座を行った。「やまなし学研究」は、向学心に燃える中高年から高い支持を得ている人気講座で、山梨の文化・社会・風土について、一般の社会人と総合基礎教育科目として履修する大学生が、同じ講義室で ともに学ぶユニークな地域学研究。8年目を向えた2011年のテーマは、富士山について様々な視点から学ぶ「富士山考」と大好評の「甲斐の国人物伝」。例年同様に希望者が殺到し募集わずか1週間で定員に達した。27日の第1回講座は、元生涯学習センター長の椎名愼太郎山梨学院大学名誉教授が「富士山は誰のものかー山 頂帰属問題をふりかえるー」と題して講義を行った。富士山の八合目以上が、最高裁判決によって、富士宮市の富士山本宮浅間神社所有地となったことについて、法律専門家としての立場から、紛争と裁判の経過について詳しく解説した。
冒頭で挨拶した
永井健夫生涯学習センター長
は「やまなし学研究は8年目を向かえました。今年度は、ユネスコの世界文化遺産登録を目指す富士山について、活火山であることなど、富士を様々な角度から考える「富士山考」と、定番である山梨ゆかりの人物について学ぶ「甲斐の国人物伝」を二つの柱と致しました」と話 し、コーディネーターの
青山貴子生涯学習副センター長
は「東日本大震災からの復興を支援するために、山梨学院もボランティアチーム「ここから」を立ち上げ、募金活動を行っております。募金とボランティア活動への協力をお願いいたします」と呼びかけた。
初回の講師椎名愼太郎山梨学院大名誉教授は、1940年東京都生まれ、早大大学院政治学研究科博士課程、国立国会図書館職員を経て82年から山梨学院大に勤務、法学部教授・生涯学習センター長などを歴任、2010年から名誉教授、専門は行政法・環境法・文化法だが、山梨県考古学協会遺跡保存活動の先頭に立つなど考古学・歴史学への造詣も深い。著書は「遺跡保存を考える」(岩波新書)「 行政手続法と住民参加」(成文堂)など多数、レギュラー出演しているエフエム甲府の番組収録をまとめた本「教えて椎名先生」(山梨新報社)も好評
富士山頂の所有権問題は、富士山本宮浅間神社(静岡県富士宮市)が1957年に国を相手取って提訴、山梨県側は県・県議会・地元市町村が「富士山頂私有化反対県民大会」を結成するなどして反対運動を展開した。74年に最高裁が「神体山として信仰の対象とされている山岳などは、宗教活動に必要なものに当た る」と判断し、神社側の勝訴が確定した。しかし、八合目以上の山梨・静岡県境は未確定のままで土地表示がなく、土地移転登記が出来ないため、所有権は長年宙に浮いたままになっていた。判決から30年後の2004年に、神社側の要請を受けた国は、県境問題に進展がない中、先に譲与手続きを済ませることにし、土地を無償 譲与する通知書を神社に交付した。
椎名愼太郎山梨学院大名誉教授
は「国が敗訴したのは、安永8年(1779年)に寺社奉行から浅間神社にあてた[今般衆議之上定趣者富士山八合目より上者大宮持たるべし]という裁許状の「持たるべし」という部分を「所有していた」と判断したことに起因する。所有と占有とは異なる。所有となると返すしかなくなる、国は訴追方針を間違えたと思う」と話し、「県民感情からすると、静岡側の神社の所有というのは、面白くないかもしれないが、富士山は、法律的には「自然公園法」と「文化財保護法」 の二重の規制がかかっている。特に八合目以上は特別保護地区に指定されており、神社も霞が関の役人も自由にならない土地。これは、富士山にとっても、国民にとっても、いいことではないか。現在の富士山は、観光開発、演習場使用など様々な顔と問題を抱えている。神社有地を含め、どこがどこを所有しているということではなく、世界遺産として、山梨静岡両県が連携して周辺の環境をどう守っていくか、議論すべきではないか」と講義を締めくくった。
やまなし学研究2011は、27日の第1回を皮切りに、山梨学院50周年記念館(クリスタルタワー)6階生涯学習センター講義室を会場に、「富士山考」と「甲斐の国人物伝」を交互に開催する形で、12月14日まで全14回実施される。なお、参加者募集は既に定員に達し締め切られている。
文(M.I)カメラ(平川大雪)
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