
平成23年度全日本学生柔道優勝大会(男子60回・女子20回、全日本学生柔道連盟60周年記念)が6月24日から26日の間、東京・日本武道館で開催されている。男子は7人制、女子は5人制の部・3人制の部に分かれて大学日本一を決める団体戦。山梨学院大女子は、5人制の部創部初の連覇を目指し、男子は創部初の優勝を胸に聖地 に乗り込んだ。そして、大会2日目に女子が快挙を成し遂げた。副将の磯崎未佳が、決勝で押さえ込まれながらそこから執念の脱出劇で優勢勝ち、初めてメンバーに選ばれた4年生らの活躍で、山学大女子は初の2年連続、通算4度目の大学日本一に輝いた。この日の山学女子は、決して調子はよくなかった。前年女王の肩書が重圧 となって顔と体を硬くするのか、皆の動きが悪い。2回戦も3回戦も辛うじて突破、準決勝は快勝だったが、決勝の環太平洋大戦も大苦戦の末の勝利となった。感極まった選手たちは、嬉し涙を流しながら磯崎ら4年生を次々に胴上げして喜びを爆発させた。一方、山学男子はこの日3回戦を突破、26日の4回戦に進出した。
山学大女子は2回戦から登場し名古屋商科大に勝利。3回戦の日大戦は苦しんだ末に大将山部佳苗(3年 旭川大学105s)の払い腰一本勝ちで2勝1敗2分けと辛勝。準々決勝の相手九州看護福祉大は、創部2年目ながらアテネ・北京五輪金メダルの内柴正人氏がコーチに就任し急成長中のチーム、ここにも苦戦した。先鋒の連 珍羚(2年 台湾錦和57s)が敗れ、ポイントゲッターの次鋒加賀谷千保(3年 藤枝順心57s)が引き分けで終わってしまった。中堅馬場菜津美(2年 埼玉栄70s)が何とか有効を奪ってタイに戻した。苦しい展開だったが、この場面で、4年になって初めてメンバー入りした副将の磯崎未佳(4年 八千代70s)が、得意の寝技で押さえ込み1本勝ち、ようやく優位に立った。最後は大将の山部佳苗が豪快に払い腰を決めて準決勝に進んだ。準決勝の相手国際武道大は、関東大会で寄せ付けなかった自信から一方的に制し、4勝1分けで危なげなく決勝進出。決勝の相手は、こちらも急成長中の環太平洋大との対戦 となった。
全日本学生柔道優勝大会女子決勝≪山学大vs環太平洋大≫(6/25)於 日本武道館
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先鋒 |
次鋒 |
中堅 |
副将 |
大将 |
山学大 |
連 |
加賀谷 |
荻田 |
磯崎 |
山部 |
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×
引き分け |
○
優勢勝ち |
●
一本負け |
○
優勢勝ち |
○
優勢勝ち |
環太平洋大 |
谷本 |
津村 |
安松 |
ヌンイラ |
相馬 |
山学大3勝1敗1分け優勝
決勝の相手、岡山のIPU環太平洋大学は、バルセロナ五輪金メダリストの古賀稔彦氏が監督を務める創部5年目の新興チーム、名門東海大を破って決勝に進出してきた。先鋒の連が引き分け、加賀谷優勢勝ち、荻田亜紗子(4年 東大阪大敬愛70s)は体重別優勝の安松春香に一本負け、1勝1敗1分けで向かえた副将戦に大変なドラマが待っていた。磯崎が積極的に攻めて相手のヌンイラ華蓮から指導2を奪いいったん優位に立った。しかし残り3分12秒、さらに攻めて得意の寝技に持ち込もうとした時に落とし穴が待っていた。寝技を返されて逆 に押さえ込まれてしまった。そのまま25秒が経つと1本負けとなり、大将の山部が1本勝ちしても内容差で環太平洋大が優勝となる絶体絶命のピンチに追い詰められた。磯崎は、3年間全く無名だった選手、黙々と努力を重ね4年になってようやくメンバーに入った。関東大会の時も押さえ込まれたが残り5秒で逃れた。その時と 全く同じ展開になった、懸命にもがき、辛うじて地獄の淵から脱出した、最後まで決して諦めなかった。初舞台が最後の試合になるかも知れなかった4年生が、執念と言うべき気力で、山学チームに創部初の2連覇をもたらした。
抱き合って泣き、表彰式で優勝旗・賞状・優勝カップを手にした選手たちは、喜びを爆発させた。健闘した磯崎・荻田・試合に出れない主将黒江優希(4年 横須賀学院48s)・主務として支えた井上愛耶香(4年 熊本阿蘇52s)らチームを一つにまとめた4年生を次々に胴上げ、山部伸敏監督と西田孝宏総監督が聖地・日本武道館の宙を舞った。
磯崎未佳選手「押さえ込まれた時は、全力で逃げました。4年生なので、チームを引っ張らなければいけないという気持ちでした。思い切りやれたのは、支えてくれた周りの人のおかげです」大殊勲者は謙虚に答えた。
荻田亜紗子選手「4年になって初めて出場できました。得意技は内またです。反省するところは反省して、また一からやり直したい」体重別に再び挑む。大会優秀選手に選ばれた
山部佳苗選手「連覇へのプレッシャーがなかったと言えば嘘になります。先輩がチームをまとめてくれました。自分は、自分の役割をしっかり果たそうと戦いました」大黒柱は払い腰を連発して役割を果たした。
黒江優希主将「初戦から楽な試合は一つもなかった。出場した皆が連覇を目標に頑張ってくれた。磯崎は、関東の時から諦めない気持ちを皆に体で示して引っ張ってくれた。この流れで体重別の優勝も目指します」最軽量級のため試合に出れない主将は、気持ちでチームを引っ張った。後輩の応援に駆け付け た
浅見八瑠奈選手(コマツ)濱口光選手(了徳寺学園職)は「決して強くはなかった4年生の2人が頑張ってチームを引っ張った」と話し、浅見選手は「感動しました。自分にとっては世界選手権2連覇がかかっているので、後輩たちの2連覇は最高の刺激です、よし、やろうという気持ちになりました」と語 った。
山部伸敏監督は「今までやってきたことをしっかりやろう、自分たちの試合をやり切ろう、決してあきらめるなと選手に言ってきた。最後の決勝は4年生に任せた、磯崎がよく踏ん張った、やってくれた」指揮官も興奮を抑えられなかった。
西田孝宏総監督は「過去に3回優勝しているが、連覇は初めて。優勝回数トップの東海大・帝京大と4回で並んだ。来年一気に3連覇して優勝回数単独トップに立ちたい」地方私学の雄を育てる牽引者は、さらなる高みを目指す。
山梨学院大柔道部女子は、創部7年目の平成18年度に田中愛子、野中未奈の2人の学生チャンピオンを核にして初優勝して以来、わずか6年の間に4回の優勝、今年初の連覇という快挙を成しとげた。去年の世界チャンピオン浅見八瑠奈も、講道館杯を制した山部佳苗も、この大会の殊勲者磯崎未佳も、高校時代は無名の選 手だった。山学大に来てひた向きに努力を重ねた。チームとしても、個人としても、共通しているのは、最後まで決して諦めないという気持、心と技と体を研ぎ澄ませ、汗と努力で勝利を掴み取った。
文(M.I) カメラ(平川大雪)
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