山梨学院短期大学保育科は6月30日、平成23年度オペレッタ発表会『オズのまほうつかい』を山梨学院メモリアルホールで行った。このオペレッタ発表会は、保育科2年生全員が「脚本・演出」「運営」「キャスト」「音楽表現」「造形表現」「身体表現」の各部門に分かれ、学生自身が企画・立案・実行する山梨学院短大の伝統的で特色ある授業の一つ。約170名の学生が「保育内容 総合表現」の授業で取り組み、1年次に学習した保育に関する基礎理論や保育内容、基礎技能などを実践し、一つのステージを創り上げた。オペレッタは午前と午後で2部上演され、招待された県内の園児や児童など約1000名が鑑賞。今年は、東日本大震災の影響で、富士河口湖町の「NPO法人河口湖自然楽校」に避難してきている子どもたちなども招待された。今回のテーマは「大切なもの」。子どもたちは、学生が創り出す山梨学院短大オリジナルの華麗で色彩豊かな「オズの世界」を通じ「大切なもの」を感じ取り、各部門の趣向を凝らしたステージを楽しんでいた。
オペレッタは、イタリア語で「小さなオペラ」を意味し、19世紀中頃から後半にかけてパリやウィーンで流行し、ヨーロッパ全般に広がった台詞と踊りのあるオーケストラ付きの歌劇。山梨学院短大では伝統的に「保育内容 総合表現」の授業でオペレッタを制作・上演している。この授業の目的にはチャレンジ精神や対人関係能力、チームワーク力、問題解決能力、社会貢献感などの養成がある。学生たちは、何も無い所から一つのステージを創りあげていく過程でこれらの"力"を身につけ、1年次に学んだ保育に関する全ての知識や技能を活用することで、総合的な表現力の向上を目指している。昨年はペロー童話の「シンデレラ」が上演され、今年は「大切なもの」をテーマにライマン・フランク・バーム原作の「オズのまほうつかい」に挑戦。「オズのまほうつかい」の主役のドロシー同様に"仲間"と協力し、脚本や演出、劇中の歌や曲、舞台装置や衣装など全てを学生自身の手により創造した。「脚本・演出」「運営」「キャスト」「音楽表現」「造形表現」「身体表現」の各部門は、子どもたちの記憶に残り、最高の時間を提供できるよう、それぞれの立場から最良の意見を出し合い本番を迎えた。上演前に山梨学院短大を代表して挨拶した白川和治保育科長は「この劇を見て、色々なことを考え思ってください。何が大切なのかを皆さんで考えてみましょう」と子どもたちに語りかけた。昨年はシンデレラの灰かぶりの衣装から舞踏会のドレスへの早着替えが見せ場だったが、今年の注目すべきポイントは次々と変わる場面転換。今年は、プロジェクターを使った舞台装置にも挑戦した。ビデオカメラで撮影した大魔法使いの生映像をスクリーンの後ろからプロジェクターを使い投影し、魔法使いの不思議さを醸し出した。これには子どもたちも驚き、食い入るように舞台を見つめていた。さらに客席と一体になった演出にも工夫し、子どもたちも大声でキャストの演技に応え、目の前に広がる華麗な色とりどりの「オズの世界」を堪能していた。上演後は鳴り止まない拍手がホール全体に響き渡り、カーテンコールで再登場した学生の目には涙も。閉幕後は学生全員で観客を見送り、子どもたちは満面の笑みを浮かべ、名残を惜しんだ。
上演後、学生代表を務めた今津優奈さんは「緞帳があがった時から感動でうるうるしてしまいました。今までは脚本・演出部門として脚本を見ながらの舞台稽古だったが、今日は集中して舞台を見ることができました。オズの大魔法使いに出会い、みんなが魔女と戦う所を一番表現したかった。全ての部門が協力し、みんなが一つになれたので、子どもたちも場面場面でしっかり反応してくれて楽しめたと思います。将来の具体的な進路はまだ悩んでいますが、子どもに関わる仕事をしたいです」と緊張から解き放たれ、ホッとした表情で感想を述べた。
キャスト部門で主役のドロシー役を務め、将来は保育者を目指している保坂友里子さんは「学生時代にしかできないことに挑戦したくて主役に立候補しました。子どもたちと同じ空間で演技ができて最初から最後までずっと楽しかった。今までは身振り言語をやったことがなくて、今回やってみて思うようにできなくてとても難しかった。将来は子どもが自分を必要な時にそっと支えてあげられるような保育者になりたいです」と晴れ晴れした顔で語った。
造形部門で大道具リーダーの秋山亮さんは「この物語は場面転換が多く、大道具を作っても作っても作り足りない感じだった。制作だけで何週間も続いたが質を下げることなく完成するよう全員で努力した。今回一番苦労したのが、オズの大魔法使いの館の門扉。縦2m・横1mのものを8枚作ったが、着色は全て手作業で行ったのでこれだけで2週間近くを要した。また、プロジェクターの投影では、カメラの位置や角度に注意するなど気を遣う箇所が多かった」と達成感に満ちた顔で語った。
上演を見守った赤井住郎短大学長は「毎年幼稚園や保育園などの子どもたちを招待しているが、今年も子どもたちの喜ぶ顔が見れたのでホッとしています。学生たちも自分たち自身で考え取り組んでいるから凄い達成感だと思う。子どもたちの"声"が励みになるので、こういった経験が現場に出てから役立つと思う」と述べた。
午前・午後の公演を終えた学生たちの表情は感動と達成感で晴れ晴れとしていた。このオペレッタの制作・上演を通じ、表現することの難しさや、伝えることの楽しさ、やり遂げた後の達成感を味わった学生たち。今回のオペレッタのテーマは「大切なもの」。上演後に学生の心に宿った「大切なもの」は人それぞれ違うかもしれないが、将来、社会に出て大きな困難に直面してもドロシーたちのように「大切なもの」を胸に、前を向いて最善の方策を見出し進んでいくことだろう。
文(Y.Y)、カメラ(平川大雪)
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