日本サッカー界最大のトーナメント「第91回天皇杯全日本選手権」に出場する山梨県代表チームを決める「第16回山梨県選手権」の決勝戦が8月28日、甲府・山梨中銀スタジアムで行なわれた。対決したのは、ともに社会人チームを破って進出した山梨学院高と帝京三高。高校チーム同士の決勝戦は史上初、今年の県高校総体・インターハイ県予選決勝と同じ顔合わせ。対戦成績は1勝1敗、総体決勝では帝京三が3−2で逆転勝ち、インターハイ決勝では山学が延長の末に2−1で競り勝った。秋の全国高校選手権県予選の行方を占う前哨戦として注目された。山梨学院は、故障から復帰したものの体調が万全でないエースのFW白崎凌兵と足首を負傷したMF荒木克仁の2人の主力を欠く戦いとなった。メンバー全員が3年生という布陣で臨み、前半は噛み合わなかったが、後半はサイド攻撃を中心に攻め上がり、後半途中出場のFW加藤誠二とFW早瀬庄馬の2人が起用に応えて2点を奪い、DF陣が帝三の攻撃を無失点に抑えて勝利した。9月3日に同じ中銀スタジアムで東京都代表のFC町田ビルビアと対戦することになった。
山梨学院は、初戦で御坂体協に6−0と完勝、準々決勝はフエゴベルクに4−1で勝利、準決勝は韮崎アストロスを3−2で振り切った。一方、帝京三は、初戦で山梨学院大ペガサスチームと対戦し2−2からのPK戦を制して波に乗った。準々決勝の日川クラブ戦は2−1で逆転勝ち、準決勝のFC甲運戦は3−3からのPK戦に勝利して決勝に進出した。
天皇杯県予選決勝≪山梨学院高vs帝京三高≫(8/28)山梨中銀スタジアム |
○ 山梨学院高 2 |
前半 0−0
後半 2−0 |
0 帝京三高 ● |
得点 加藤誠二・早瀬庄馬 |
決勝戦は、午後1時05分キックオフで開始された。前半の山梨学院の出来は悪かった、中盤で相手のボールを奪っても最初のパスが精度を欠き、再び相手に奪われる展開が何度も繰り返された。守備の形は良かったが、攻撃の形は帝京三の方がいい形を作った。山学の攻撃は、相手の裏にボールを上げる攻撃が大半で、組織的に攻め上がる場面を作れないまま前半を0−0で折り返した。ハーフタイム、吉永一明監督は「サッカーになっていない」と選手を叱り「ミスを恐れずにチャレンジして、自分の殻を破れ」と送り出した。後半の山学は、サイドから攻め上がる攻撃バリエーションで試合の流れを徐々に引き寄せた。そして、後半30分に途中出場したFW加藤誠二が、出場5分後に右サイド攻撃からゴール前に折り返されたクロスボールに見事に反応、足の甲を骨折して懸命にリハビリして復帰、まだボルトが入ったままの右足を振りぬいてようやく先制した。3年になってやっとピッチに立てた加藤の思いが詰まったボールは、ゴールの左ネットを揺らし、そのままゴール内を駆け回って右サイドネットまで揺らした。さらにロスタイム突入後の47分、GK山田修平が深々と蹴り上げた推定約70mの超ロングゴールキックに、こちらも後半途中出場のFW早瀬庄馬が果敢に飛び出し相手GKを交わしてGOAL!たったパス1本、わずか5秒の得点劇の直後に試合終了のホイッスルが鳴った。
先制点を入れた加藤誠二選手「ケガが多くて出場する機会は少なかった、3か月間リハビリに励んでようやくピッチに立てた。交代出場する時に監督から『決めてくるだけだ』と言われて、その通りに決めることが出来た、素直に嬉しいです」黙々と重ねた努力が得点を入れた、努力は嘘をつかない。藤原光晴副主将「(インターハイ・プリンスリーグと連戦続きで)ケガ人が多く(自身も膝を痛めていて出場は微妙だった)苦しい戦いだった。前半は自分たちのサッカーが出来なかった。後半は、セカンドボールを取り、取った後の1歩を大切にしようと声を掛け合い、サイド攻撃で崩せた。秋の選手権では帝京三は死に物狂いで来る。自分たちは国立まで行くのが目標。しっかりトレーニングを積んで秋に備えたい」山学の闘将は、自分たちDFは体を張ってしっかり守っていきたいと答えた。吉永一明監督「自分の力を出せない選手が前半いたので、ハーフタイムで、勇気を持ってミスを恐れずにやれ、チャレンジして自分の殻を破れと指示した。後半から出場した加藤、早瀬ら3年生が力を合わせて意地を見せてくれた。(インターハイ・プリンスリーグの試合では)自分たちがミスして失点する傾向があったが、今日の試合はこの点を修正して戦ってくれた」監督は、試合を前半と後半に分けて振り返り、守備には一定の評価、攻撃にはまだまだの評価を下した。
山梨県代表の山梨学院高と東京都代表のFC町田ビルビアとの対戦は、9月3日(土)午後1時キックオフで、山梨中銀スタジアムにライバルを向かえる形で行なわれる。また、全校高校選手権県予選は10月8日に開幕する。第1シードは山梨学院、第2シードに帝京三が入る。冬の全国高校選手権を目指す本当の戦いはこれからが本番、両雄は秋の陣の決勝で再び激突することになるのだろう。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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