山梨学院パブリシティセンター
法学部政治行政学科創立20周年記念事業
〜2011年度日本公益学会 全国大会を招致〜
〜様々な学問領域から「公益」について議論〜

2011年度日本公益学会 全国大会・第12回研究大会(主催:日本公益学会、共催:ローカル・ガバナンス学会、山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センター)が10月1・2日の両日、山梨学院大学酒折キャンパスで行われた。これは、山梨学院大学法学部政治行政学科の創立20周年記念事業の一環として招致したもので、2日間で日本公益学会の会員や山梨県内の実務家など延べ100人が参加して開催された。2日間に渡る学会では、「ローカル・ガバナンスと公益」を共通テーマに研究者、自治体職員、実務家などによるシンポジウムや分科会を実施。行政学や政治学、経済学、医療、福祉、地域コミュニティ、スポーツなどの研究者・実務家がそれぞれの研究・学問領域や立場から、「公益」についてアプローチし、パネラーと会場とが一体となって議論を深めた。
山梨学院大学法学部政治行政学科は1991年に行政学科として創立され、2002年に政治行政学科に名称変更し、今年4月に20周年を迎えた。創立20周年記念事業の第一弾として日本公益学会(会長:山本啓山学大法学部教授)を招致し、10月1日・2日の両日、山学大で全国大会として第12回研究大会が開催された。日本公益学会は、1998年4月に人文、社会、自然科学といった既成学問の枠にとらわれることなく、自由かつ柔軟に非営利の公益や公益活動について総合的に研究することを目的に様々な分野の研究者を結集して発足された学会。初日の開会挨拶で日本公益学会・山本啓会長は「日本公益学会も10年以上が経ち、新たな段階に入っています。今までの公益の捉え方は非常に曖昧だったが、これを具体的にしていくことが求められている。公益の原語は"Public interest"(公共の福祉)だが、日本は公共セクターが強いこともあり、民間団体や民間での活動が蔑ろにされてきたが、これについても議論をしていく必要があります」と今後の会の方向性などについて語った。
 

2011年度日本公益学会 第12回研究大会

第1セッション

小野英一(東北公益文科大学大学院博士後期課程)

「自治体人事システムの実態分析

−全国自治体アンケート調査をもとに−」

島田輝之(山梨県庁)

「広域自治体における自治基本条例の可能性と課題」

土屋迅行(山梨県社会福祉協議会)

「地方分権時代における監視機能の拡大−監査を中心に−」

岩崎保道(琉球大学法人本部事務局評価室

「学校法人と社会福祉法人の合併による効果」

 

司会・コメンテーター:菊池端夫(明治大学経営学部公共経営学科准教授)

第2セッション

澁谷朋樹(法政大学大学院政策科学研究科博士前期課程)

「情報ネットワーク・システムの変容と主権国家のあり方

−アラブ諸国の民主化運動の事例から−」

黒木美來(早稲田大学大学院政治学研究科博士前期課程)

「クーデンホーフ・カレルギーの欧州統合構想

−構想における民族問題の非政治化に関する一考察」

今井淳雄(宇都宮大学大学院国際学研究科博士後期課程)

「近年の中国非営利組織研究の趨勢と課題−分類分析の立場から−」

 

司会・コメンテーター:松田憲忠(青山学院大学法学部准教授)

第3セッション

福嶋美佐子(法政大学大学院政策科学研究科博士後期課程)

「多様化するマイノリティの社会的包摂と公益」

鈴木新之介(法政大学大学院政策科学研究科博士後期課程)

「気候変動政策とインターネット

:情報時代における新たなメディアの利用と課題」

中野伸子(横浜国立大学大学院環境情報学府博士後期課程)

「戦略的資源としての地下水

−秦野市における地下水管理政策の史的考察−」

 

司会・コメンテーター:秋吉貴雄

(熊本大学大学院社会文化科学研究科准教授)

シンポジウム1

シンポジウム1 「ローカル・ガバナンスと公益

−震災復興に果たす地方政府と市民の役割」

島田敏男(NHK解説主幹)

「大震災が促す“お任せ政治”の終わり」

今村都南雄(山梨学院大学法学部教授)

「地方のイニシアティブによる再生の期待」

 

コーディネーター:山本啓(山梨学院大学法学部教授)

分科会

分科会1 「コミュニティにおける職業、福祉、医療と公益」

塚崎裕子(人事院国家公務員倫理審査委員会)

「医療分野や福祉分野におけるワークライフバランスの実現に向けて」

高橋啓(金沢学院大学教授)

「自治体病院に関する外部評価指標の検討」

今井久(山梨学院大学現代ビジネス学部教授)

「地域医療・福祉の在り方−日本とデンマークとの比較−」

 

コーディネーター:外川伸一(山梨学院大学法学部教授)

分科会2 「コミュニティ・ガバナンスと公益
−地域活性化のカウンターメジャーは何か」

中島智人(産能大学経営学部准教授)

「コミュニティの利益と社会的企業−イギリスの事例から−」

白川恵子(パルシステム山梨理事長)
「コミュニティをリードする地域生協の役割」
田中進(農業生産法人 (株)サラダボウル代表)
「農業の新しいカタチを創る−サラダボウルの挑戦−」
 

コーディネーター:渋川智明(東北公益文科大学公益文科学部教授)

分科会3 「スポーツと公益」

清水正(山梨学院大学女子ソフトボール部監督)

「カレッジスポーツと地域の公益」

植松史敏(ヴァンフォーレ甲府 ホームタウン担当)

「プロスポーツクラブと地域の公益」

石倉章雄(山梨県体育協会指導普及課課長)

「スポーツ振興と地域の公益」

 

コーディネーター:長倉富貴(山梨学院大学経営情報学部専任講師)

分科会4  「地方議会改革と公益」

幸田雅治(地方職員共済組合理事・元総務省自治行政局行政課長)

「住民のニーズを受け止める地方議員の役割」

西寺雅也(山梨学院大学法学部教授)

「議会と首長のこれからの関係」

浅川武男(前昭和町議会議長)

「議会と大学との連携による議会改革」

 

コーディネーター:江藤俊昭(山梨学院大学法学部教授)

シンポジウム2

シンポジウム2 「リージョナリズムと公益」

佐島直子(専修大学経済学部教授)

JANZUS:実効的地域安全保障を目指して」

岡本三彦(東海大学政治経済学部教授)

「地域デモクラシーと市民

−地域における市民参加と「公益」をめぐって−」

中村虎彰(韓国ウーソン大学校ソルブリッジ国際大学准教授)

極東アジアにおけるリージョナリズム」

 

コーディネーター:白鳥浩(法政大学大学院政策科学研究科教授)


 
初日のシンポジウムでは、NHKの『日曜討論』で司会を務めるNHK解説主幹・島田敏男氏がパネリストとして登壇し、内閣支持率の推移や復興増税、放射性廃棄物問題などについて解説した。また、島田氏は介護保険制度の改正問題について「大都市中心で制度の組み換えが進むと、地方では効率化が図れない。一つの仕組みで効率化・公平性を担保することは難しい。限られた資源をより地域の実情に合わせてバリエーションを作ることが重要で、その中で効率化を図ることが求められる」と述べ、県をはじめとする地方自治体でもしっかりと検討し、一般市民も関心を持つことが重要であると語り、話を結んだ。
 
2日目の分科会4では、「地方議会改革と公益」をテーマにディスカッションが行われ、浅川武男前昭和町議会議長は議会と大学との連携による議会改革の事例などについて紹介。昭和町議会は2008年5月に山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センターと連携協定を結び今年で4年目を迎える。これまでに昭和町議会は山学大と、学生模擬議会や教授陣による勉強会、学生と議員とのワークショップなどを実施。浅川氏は大学と連携した議会改革により、議員の意識改革が行われ、資質の向上や問題解決能力の向上が図られたことなど実践事例を紹介し、一定の成果があったことを報告した。
 
2日間を総括し、大会実行委員長の江藤俊昭法学部教授は「研究者の養成は、縦割り(専門分野)だけで行うのではなく、専門を超えた領域で課題を発見し問題を解決する時期に来ている。そういう意味でこの学会は、様々な分野の研究者が一つのテーマについて議論しており、大変期待が持てると思います。さらなる充実した議論、学会の発展をお祈りいたします」と語り2日間の学会は閉幕した。
文(Y.Y)、カメラ(平川大雪、Y.Y)
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