平成23年度第90回全国高校サッカー選手権山梨県大会は11月5日、甲府・小瀬スポーツ公園山梨中銀スタジアムで決勝戦が行なわれた。3年連続3度目の優勝をめざす第1シードの山梨学院高と、5年ぶり8度目の優勝を狙う第2シードの帝京三高が頂上対決した。試合は、前半22分に帝京三が板垣将史のシュートで先制、その4分後に山梨学院が柳沢駿静の同点ゴールで追いつく展開となった。山学は前半押し気味に試合を進めたが、エース白崎凌兵の体調が万全でなく、決定的シュートを外すなど、なかなか得点を奪えなかった。後半は一進一退の攻防が続いたが、試合終了1分前に山口聖矢が右サイドを駆け上がりセンターリング、これを萱沼優聖がきれいにヘッドで合わせ、ゴールネットに突き 刺した。その直後に、タイムアップ、劇的な幕切れで創部わずか6年の山梨学院高が3年連続3度目の"選手権"出場を決めた。試合を見守っていたJリーガ-加部未蘭選手は「俺たちを超えろ」と後輩たちにエールを送った。
山梨中銀スタジアムバックスタンドに、数えきれないほどの山梨学院の幟がはためき、山学応援席は全校応援の生徒と選手の父兄ら約1000人の大応援団で膨れ上がった。チアリーダー部の大沢加奈部長は「選手の皆さんが全国に行けるよう、全員が笑顔で精一杯応援します」ゲートフラッグを振り、入場して来た選手を笑顔で向かえた。そして、13時05分、山梨学院のキックオフで決勝が開始された。
第90回全国高校サッカー選手権山梨県大会 決勝
≪山梨学院高vs帝京第三高≫(11/5)於 山梨中銀スタジアム |
○ 山梨学院高 2 |
前半 1-1
後半 1-0 |
1 帝京三高 ● |
得点 柳沢・萱沼(山学)、板垣(帝三) |
前半20分までは、山学が優勢に試合を進めた。しかし、22分に初めて許した攻め上がりで、帝三の板垣将史にゴールを割られてしまった。意図しない展開となったが、その4分後に右からのクロスボールを受けた11番柳沢駿静が体をひねりながら右足でゴール右隅に蹴り込み、焦らないうちに同点に追いつき、前半は1-1で折り返した。
ハーフタイムの応援席、ハンドマイクを手にした羽織袴姿の浅川莉央応援団長は「これから後半が始まります、サッカー部が全国に行けるよう、力を合わせて応援しましょう」と声を振り絞り大声援を求めた。
サイドが変わった後半の立ち上がりは、帝三の運動量が山学を上回った。山学のパスがつながらない、カットされ攻め上がられるシーンが何度も続いた。応援席から悲鳴が上がり、父兄席は「集中しろ~」と絶叫しイレブンの士気を鼓舞した。ピンチが続いていた中で、清水エスパルス入りする10番白崎凌兵主将が、8分過ぎに絶妙のトラップでDF陣を振り切り、GKと一対一になる決定的場面を作ったが、シュートがわずかに外れた。そのあとは、両チーム一進一退の攻防が延々と続いた。そして、延長戦突入かと思われた試合終了1分前、ついにその時が来た、DFの2番山口聖矢が右サイドをドリブル突破で駆け上がりセンターリング、このボールを「来ると信じて」ゴール前に走り込んだMFの7番 萱沼優聖が頭できれいに合わせ、ゴールネットに突き刺した。萱沼の家は富士吉田市、下吉田中時代は吉田から甲府のUスポーツクラブに通って力をつけ、山梨学院に入学した。県外組が多い中で副主将の藤原とともに数少ない県内組、100名を超える部員の中でレギュラーの座を勝ち取った頑張り屋、最も点がほしい時に、最高のシュートでチームに貢献した。その1分後に試合終了の笛、山学イレブンは空に向かって雄叫びをあげ、帝三イレブンは地に崩れ落ち、しばらく立ち上がれなかった。山学応援席は地鳴りのような歓声に包まれた「やった、やったぞ~、よくやった」誰もが顔を紅潮させ、勝利の感動を味わった。
表彰式で優勝旗・優勝杯などたくさんの賞品とフェアプレー賞も受賞した山学イレブンは、受賞後一斉にバックスタンドの応援席に走り、スタンド最前列の控え部員らと抱き合い、応援席全員と一体となって優勝の喜びを爆発させた。
テレビ局のインタビューに対し吉永一明監督は「良く走り勝ってくれた。周りの人たちに支えられてここまで来た。これでスタートライン。全国では気持ちの入った思い切りのいいプレーで、去年忘れたものを取りに行きたい」と決意を語った。決勝点を上げた萱沼優聖選手「2列目から飛び込んで行くのが自分の役割、自分の所に来ると信じて飛び込みました。準決勝も決勝もヘッドで決めることが出来た、最高です」。藤原光晴副主将「韮崎戦でディフェンスが悪かったが、この5日間の練習で共通理解をして臨んだ。相手も必死で来ていたので厳しかったが、1点で抑えられてよかった」。荒木克仁副主将「準決・決勝の自分のプレーは良くなかった。フリーキックを決めることを求められているので、全国では決めてチームに貢献したい」。白崎凌兵主将「もうちょっと出来ると思ったが状態が悪かった、動けなくて悔しい。皆に全国に連れて行ってもらった、調整して全国ではしっかりプレーしたい」。我が子を応援席で見守った萱沼朱実さんと荒木純子さんは「大事なところで決めてくれてよかった。全国に行けてホッとしました」と顔をほころばせていた。昨年の全国ベスト8のメンバーも応援席で試合を見守った。J1ヴァンフォーレ甲府の加部未蘭選手は「先制された苦しい試合をひっくり返してよく勝ってくれた。全国で自分たちを超えてほしい」後輩たちの健闘を称え、優勝をめざせとエールを送った。
第90回全国高校サッカー選手権大会は、12月30日に国立競技場で開会式を行い、年末から正月にかけて東京・神奈川・千葉・埼玉の競技場で熱戦が繰り広げられ、準決勝・決勝は国立競技場で行われる。一昨年初出場初優勝、昨年ベスト8の山梨学院イレブンは、再びの国立を胸に、いよいよ聖地に向かう。
文(M.Ⅰ)カメラ(平川大雪・藤原稔・小池裕太・Y.Y)
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