
山梨学院大学法学部政治行政学科創立20周年記念事業の国際シンポジウムが11月13日、甲府酒折キャンパスで行われた。このシンポジウムは法学部政治行政学科の創立20周年記念事業の一つとして開催。中国人事科学研究院、北京大学日本研究センター、モンゴル国家発展イノベーション委員会、山梨県昭和町議会、ローカル・ガバナンス学会などの研究機関・団体の共催で実施され、「東アジアにおけるローカル・ガバナンスの現状と行方」をテーマに国内外の研究者らが集い、様々な角度・視点から考察が行われた。午前のプログラムでは、地方自治や中央政府、地方分権などをキーワードに「東アジアにおけるローカル・ガバナンス」について、日本行政学会理事長の森田朗東京大学大学院教授による記念講演、午後には地方議会、住民参加などをテーマに分科会が行われ、議論が深められた。最後に「東アジアにおけるローカル・ガバナンスの行方」と題し、各国の実情を踏まえ、今後のローカル・ガバナンスの行方について討論された。
山梨学院大学法学部政治行政学科創立20周年を記念して行われた国際シンポジウムには、日本、中国、韓国、モンゴルなどの東アジア地域の研究者や実務家が参加。参加者らは「東アジアにおけるローカル・ガバナンスの現状と行方」をテーマに講演や分科会、討論を行った。主催者を代表して山梨学院大学の
古屋忠彦学長は「中国、韓国をはじめとしてアジアの国々の専門家にご出席を頂いてのシンポジウムとなります。山梨学院大学でもふるさと山梨との関わりを念頭において、山梨県庁や県内市町村との交流を図っています。とりわけ、昭和町議会とは友好を深め、様々な生の政治や行政の世界での難問を解決するために相互に協力し合っております。きょうは東京大学の森田教授による講演、各国のこの分野における碩学にお集まり頂いてのシンポジウムが予定されており、有意義な時間をお過ごし頂ければと思います」と挨拶。法学部政治行政学科を代表し、
日高昭夫法学部長は「東アジアの主要な国・地域(中国・韓国・モンゴル・台湾・マカオ・日本)の地方自治、ローカル・ガバナンスの研究者、実務家にお集まり頂き、様々な角度、多角的な視点からあらためてそれぞれの国・地域・地方の政治や行政、社会との関係や在り方が多彩な形で議論されることを期待しています」と語り、国際シンポジウムの成功を祈念した。
プログラムは以下のとおり。
【記念講演:東アジアにおけるローカル・ガバナンス】 |
講 演 |
森田朗(東京大学大学院教授・日本行政学会理事長) |
【分科会1:東アジアにおける地方自治の動向と課題】 |
司 会 |
外川伸一(山梨学院大学法学部教授) |
報 告 |
今村都南雄(山梨学院大学法学部教授・社会科学研究科長)、李暁華(中国人事科学研究員助理研究員)、呉在一(韓国全南大学交行政大学院院長)、P.ナランバヤル(モンゴル環境省観光局次長) |
【分科会2:地方首長と地方議会との関係のあり方】 |
司 会 |
毛桂榮(明治学院大学法学部教授) |
報 告 |
江藤俊昭(山梨学院大学法学部教授)、白智立(北京大学政府管理学院副院長・准教授)、申龍徹(法政大学大学院政策創造研究科准教授)、楊敏華(台湾僑光科技大学教授) |
【分科会3:住民管理と住民参加の新たな試み】 |
司 会 |
申龍徹(法政大学大学院政策創造研究科准教授) |
報 告 |
日高昭夫(山梨学院大学法学部教授・法学部長)、毛桂榮(明治学院大学法学部教授)、杜創国(中国山西大学政治と行政学院院長・教授)、周建高(天津社会科学院副研究員・准教授) |
【分科会4:東アジアにおける地方財政と公共政策の比較研究】 |
司 会 |
P.ナランバヤル(モンゴル環境省観光局次長) |
報 告 |
山本啓(山梨学院大学法学部教授・ローカル・ガバナンス研究センター長)、劉文彬(中国人事科学研究員副研究員)、淳于泠(中国西南政法大学政治与公共事務学院教授・日本研究センター主任)、黎寶珊(マカオ澳門財政局顧問高級技術員)、熊達雲(山梨学院大学法学部教授) |
【総合討論:東アジアにおけるローカル・ガバナンスの行方】 |
司 会 |
今村都南雄(山梨学院大学法学部教授・社会科学研究科長) |
討 論 |
山本啓(山梨学院大学法学部教授・ローカル・ガバナンス研究センター長)、白智立(北京大学政府管理学院副院長・准教授)、呉在一(韓国全南大学交行政大学院院長)、P.ナランバヤル(モンゴル環境省観光局次長)、張曙霞(中国人事科学研究員主任科員) |
講演では、日本行政学会理事長の
森田朗東京大学大学院教授が「東アジアにおけるローカル・ガバナンス」をテーマに自身の地方分権推進委員などでの経験をもとに理想的な地方自治の要素や中央政府や地方政府の役割、地方分権改革について解説した。また、アジアの諸外国と日本の自治制度、自治体の権利・権限などについても説明し、最近の事例として東日本大震災から感じた危機管理と地方自治についても提言した。森田教授はこれからのローカル・ガバナンスについて「首都圏などの大都市では、団地などの集合住宅で暮らしている人が多数おり、急速な高齢化が予測される。しかしながら都市では、医療や福祉のインフラの整備が遅れている。病院や施設の数はあるが、高齢者の増加数と比較すると相当数不足する。在宅医療などの新しい分野も進められており、新しい公共という言葉のもとで新たなアイディアも生まれている。アジアに目を向けると高齢化の速度は日本よりも韓国の方が進んでいる。中国でも20年後ぐらいには深刻な問題になり、高齢化はアジアで共通した話題となる。今後アジアでは、高齢化や成熟した社会の在り方が現実の問題で大きな課題になる」と述べた。分科会では、地方自治、地方議会、住民参加、地方財政をテーマに各国の研究者らが実情や事例をもとに報告し、様々な角度・視点から考察が行われた。
閉会挨拶で山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センター長の
山本啓法学部教授は「各国の実情などが聞けて学ぶことが多かった。それぞれのセッションでかなり詰めた色々な報告が行われ意義深いものとなった。これを機会にこのような場を多々設けていきたい」と語りシンポジウムを総括した。
文・カメラ(Y.Y)
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