
ロンドンオリンピック第一次選考会を兼ねた平成23年度講道館杯全日本体重別選手権大会は11月13日、千葉市の千葉ポートアリーナで2日目(最終日)の戦いが行われた。体重が軽いクラスの女子48s級から63s級までの4階級と、男子60s級から73s級の3階級で"柔道日本一"が競われた。山梨学院勢は、女子4人、男子2人と、4人のOB・OGが出場した。世界選手権2連覇の浅見八瑠奈(コマツ)は出場を免除された。故障から不調に陥り、この2年間満足な結果を残せずに苦悩してきた女子52s級加賀谷千保が、ついに、復活を宣言する優勝を果たし、念願だった講道館杯を手にした。また、男子66s級の清水健登が、山学男子史上初の決勝進出を果たした。惜しくも敗れ たが快挙の準優勝と言える。このほか、3月に卒業して社会人となった女子52s級の浅海静香(JR東日本)が3位を獲得、加賀谷と一緒に表彰台に上った。日本一を決める2日間の大会で、山学勢は、優勝1人、準優勝2人、3位1人、ベスト8が5人と大いに健闘した。
≪ 女子52s級 加賀谷千保 ≫故障と挫折を乗り越えた3年目の秋
加賀谷千保(3年 藤枝順心)は、この2年間苦闘と苦悩の日々を送ってきた。高校時代に世界ジュニア優勝などの華々しい戦績を残し、1年の時も学生柔道体重別や国際大会で優勝するなど輝かしい戦績を残したが、1年の冬に派遣された国際大会で太ももを痛めてから、なかなか勝てなくなった。負けて自分の柔道に自信が持てなくなり、歯車が狂い、どん底に落ちて苦悩した。苦闘の稽古を重ねた大学生活3年目の秋、やっと積み重ねた努力が報われる時が来た。初戦の高松静香(九州看福大)戦を肩固めで制して波に乗った。3回戦は攻め続けて勝ち、準々決勝・準決勝とも一本勝ちで決勝に進出した。決勝戦は、橋本優貴(金沢学院大)に開始早々に巴投げで有効を取られたが慌てなかった。前に出て投げを打ちひたすら チャンスを待った。そして開始4分05秒、橋本が無理やり打ってきた内股をすかし逆転の一本勝ち、思わずガッツポーズが出た。試合直後に行われた表彰式で、加賀谷は肩で息をしながら、万感の思いがこもった表情で講道館杯を受け取った。テレビのインタビューで加賀谷千保選手は「ずっと負けていて決勝の舞台は久し振り、みんなの応援がすごく聞こえて来て、勝負に負けてもいいから攻めようと前に出た。一度勝っただけでは駄目、何度も勝って西田(優香)さん、中村(美里)さんに追いつきたい」加賀谷は復活を宣言した。
≪ 男子66s級 清水健登 ≫山学男子史上初の決勝進出を果たす
清水健登(2年 京都共栄)は、高校時代にインターハイ3位になり、東京の大学から誘われたが、同郷の先輩中村剛教(3年 京都共栄)を慕い山学大の練習に参加して入学、1年の時に世界ジュニア選手権で優勝して頭角を現した。左組みからの袖釣り込み腰を得意とする。1回戦は指導3の優勢勝ち、2回戦は得意の袖釣り込み腰で一本勝ち、3回戦は体落としで一本、順調に勝ち進んだが準決勝の小倉武蔵(筑波大4年)戦は苦戦した。相手に先に先に技を仕掛けられ攻めあぐんだ。指導を取られた後残り1分44秒に袖釣り込み腰で技ありを奪い決勝に進出した。決勝の相手高上智史(日体大2年)は同学年、各上の相手ではなかったが、組み手争いが厳しかった。思うように技が仕掛けられず 、残り53秒に背負い投げで技ありを奪われ、準優勝となった。清水健登選手は「世界チャンピオンでも負けるレベルの高い大会で決勝まで進み、ある程度自信を持ったが決勝は組み負けた。優勝してグランドスラムに出たかったので悔しい。組手争いと、技を先に仕掛けることが課題」清水は自信と課題を手に飛躍を誓った。
そのほかの山学勢
今春卒業した女子52s級の浅海静香(JR東日本)は敗者復活戦を勝ち上がり3位の表彰台に上がった「週末は出稽古で山学大で練習しています、グランドスラムに出たかったので悔しい」もっと上を見つめている。女子57s級の塚田紗矢(1年 国学院栃木)は大健闘した。2回戦の相手山本杏(桐蔭学園2年)は高3の時に全日本ジュニア決勝で投げ飛ばされて頭を打ち、救急車で搬送された相手、開始43秒に見事な大外刈りで投げ飛ばし雪辱を果たした。3回戦は残り4秒まで勝っていたが指導を取られて並ばれ、延長で敗れた「2回戦は自分の柔道が出来たが、あとの試合はだめだった。色々な課題が良く分かった」新星は稽古で課題を乗り越える。女子57s級の吉元佳代(4年 鹿児島南)は2回戦で強敵の松本薫に屈した「大学最後の試合で一番強い人とやって思ったよりやれた。自衛隊体育学校で柔道を続けます」新しい環境で新境地を開く。男子73s級の中村剛教(3年 京都共栄)は肩だけでなく膝も痛めてしまい最悪の体調で試合に臨んだ「膝をテーピングで固めて出たが、体が動かなかった。当分試合がないのでリハビリに専念します」物静かな武士は体を元に戻す。女子48s級黒江優希(4年 横須賀学院)は「個人ではチームに貢献出来なかったが、このチームでキャプテンが出来て良かった幸せだった。社会人でもう一度柔道と向き合います」主務としてチームを支える側に回った井上愛耶香(4年 阿蘇)とともに、小柄な体で気丈にチームをまとめた山学初の48s級主将は、卒業後は北関東綜合警備保障で柔道と向き合う。西田孝宏総監督は「加賀谷はケガで2年の時は1年間だめだったがようやく帰り咲いた。清水も山部も優勝してほしかったが、次に活かしてほしい。可能性が出てきた選手がたくさん出たので楽しみ、収穫はあった」と講道館杯を総括した。
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成績 |
階級 |
名前 |
学年 |
備考 |
優勝 |
52s級 |
加賀谷千保 |
3年 |
初優勝 |
準優勝 |
66s級 |
清水健登 |
2年 |
男子最高位 |
3位 |
52s級 |
浅海静香 |
OG |
JR東日本 |
ベスト8 |
57s級 |
塚田紗矢 |
1年 |
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ベスト8 |
63s級 |
小澤理奈 |
OG |
ミキハウス |
2回戦 |
66s級 |
早野友樹 |
OB |
福岡県警 |
2回戦 |
57s級 |
吉元佳代 |
4年 |
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1回戦 |
48s級 |
黒江優希 |
4年 |
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1回戦 |
73s級 |
中村剛教 |
3年 |
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1回戦 |
48s級 |
濱口 光 |
OG |
了徳寺学園職員 |
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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アルバム加賀谷選手 |
アルバム清水選手 |