山梨学院パブリシティセンター
成果上げる"言葉領域"授業
〜教えることを抑え、学ぶことを深める〜
〜山梨学院小独自に取り組む教育実践〜

山梨学院小学校(山内紀幸校長)は一般的な教科の名称を使用していない。算数は「数」、国語は「言葉」、道徳は「人間関係」と呼び、それぞれを教科と言わずに「領域」と呼んでいる。多彩で豊かな"知"を育てることを重要な教育目的と位置付け、既存の枠組みにとらわれない教育を実践している。最近特に言葉領域の取り組みが注目されるようになった。それは、県内で行なわれる作文コンクールで多数の児童が受賞者に名を連ねることからで、「どんな授業をしているのか」と教育関係者の関心を集めている。山梨学院小の教育方針は「Less Teaching More Learning」(教師は答えを教えることを極力抑え、子どもたちが自分で答えを学び出せるように導く授業) 。言葉領域低学年の授業では、「詩」や「昔話」などの作品を教材に、一人ひとりどう感じたかを、自分の言葉で表現したり、原稿用紙に文章で表現する勉強を日常的に行っている。こうした授業や、課題を深く追及する「プロジェクト」などを通して、子どもたちの「もっと学びたい」環境を作っている。
山梨学院小は「自律性を育てる」「豊かな想像力を育む」「ともに生きることを学ぶ」を教育の3つの柱にしている。「読書力」「文章力」「計算力」などの基礎学力を確実に身につけさせ、自ら学ぶ力、自ら行動する力を養うことを最重要視している。"領域"は「数」「言葉」「社会」「英語」「自然」「生活」「人間関係」「家庭」「音楽」「身体」「美術」の11領域、豊かな知を育て、感動の体験に出会える場所作りに取り組んでいる。言葉領域では、読む・書く・話す基礎学力を確実に定着させ、複数の教科書を使って多様な文章に触れさせ、読解力を高める工夫を行っている。
 
1年生の言葉領域授業を取材すると、子どもたちが、詩のプリントに自分が感じたことを、次々に書き込んでいた。授業のタイトルは「吟遊詩人になろう」、担任の2人の教師が連携して34人の児童を導き、自分が選択した詩をどう感じ、どう思うかを用紙に書き込み、その後で、お互いにその語句をどう表現するか意見交換し合っていた。詩の全体の雰囲気を表すために、パフォーマンスや音も取り入れようとしていた。斎藤由紀子教諭は「子どもたちは、8つの詩の中から自分の好きな詩を選び「語り芸人コンテスト」に向けて、読み取った情景をパフォーマンスも交えて音読表現する活動に張り切って取り組んでいます。聞き手に向けて心を開いて表現する活動を大切にして、言葉に対して感性豊かな子どもを育てたい」としている。
2年生の授業では、先生の演奏する「おくびょう豆太」の歌の歌詞を原稿用紙に正しく書く練習と、昔話「泣いた赤鬼」物語を、全員が語り手になって一行ずつ読んでいく授業が行われていた。赤池由江教諭は「授業では、毎回必ず音読を取り入れています。1回の授業で少なくとも1回は、発表する機会を保障しています。読む・書く・発言する力を伸ばすことに努めています」と話している。
4年生の授業では、宿題に出された問題集の答え合わせを行う日だった。この授業でも、教師は正解をすぐに伝えることはしない、友達同士で答え合わせをして理解する学び合いに力を入れていた。出題された詩はどの季節の時に書かれたのか、作者はどう感じたのかを、クラス全員で話し合い答えを選んでいた。どうしても答えが決まらなかったもののみ、教師が答えの謎解きを説明していた。石田恭一教諭は「先生が言った答えは、子供たちにとって絶対の答えとなってしまいます。子どもたち同士で答えを見つけるようにさせます。答えが出せないものについては、余計な解説をしないことにしています。それによって、子どもたちがよく考えるようになりました」と述べている。
 
授業の成果は、各新聞社が行う作文コンクールなどで着実に表れている。読売新聞社主催の第61回全国小・中学校作文コンクール山梨県審査で、低学年の部最優秀の県教育庁賞に山口流輝くん(2年)、高学年の部佳作に橋本彩良さん(6年)。山梨日日新聞社主催第8回小中学生新聞感想文コンクール優秀賞に山下仁実さん(2年)、佳作に丸山蒼太くん(1年)。毎日新聞社主催第57回県青少年読書感想文コンクール県議会議長賞に箕輪岳弥くん(4年)など。山口流輝くんは「受賞した作文は、夏休みの自由課題として学校に出しました、頭を使って文章を書く言葉の授業は楽しい」と話す。
 
山内紀幸校長は「子どもたちは、先生の一言で、その領域を好きになったり嫌いになったり、初等教育はその子の人生に大きな影響を与えます。子どもたちの発想やひらめきを伸ばせるよう、私たちは授業中に『だめ』という言葉を使いません。子どもたちの『できた!』を大切にしています。教師は知との"出会いのプロデューサー"、もっと知りたいと思わせる授業を研究し、実践してもらっています」と語っている。
 
学習指導要領の枠を超えた独自の教育スタイルと、先進的な教育プログラムを実践している山梨学院小は、今年創立8周年目を迎えている。実社会で役立つ学習を意識した指導は、状況に応じた判断力や企画力の育成にもつながり、応用力のある子どもたちを育んでいる。
文(M.T)カメラ(平川大雪)
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