正月恒例の第88回東京箱根間往復大学駅伝競走往路は1月2日、東京・大手町の読売新聞旧東京本社(建て替え中)前から神奈川県・箱根町芦ノ湖駐車場入口までの5区間108.0キロで、前回優勝の早稲田大学などシード権10校、予選会1位の上武大など9校、関東学連選抜を加えた20チームが参加して行われた。26年連続26回目出場[総合優勝3回]の山梨学院は、5時間33分11秒の走りで6位となった。山梨学院は、スピードランナーが集まる1区で井上大仁(1年・鎮西学院)が堅実な走りで、前が見えるタイム差の10位。エースが集まる花の2区は中村悠二(4年・日高)が力走したものの16位、3区のオンディバ・コスマス(4年)が7人抜き区間賞・区間新記録の激走で前 とのタイム差を詰める9位、4区の田口恭輔(4年・東邦)が区間6位の快走でさらに前との時間差を詰める9位、5区の松本大樹(3年・出雲工業)が渾身の激走でゴールに倒れ込みながら6位でフィニッシュした。山梨学院は雑草軍団復活の狼煙を上げた。往路優勝は東洋大学が5時間24分45秒の往路新記録で4年連続4回目の栄に輝いた。復路のスタートは1位の東洋大学が午前8時00分、2位から6位までが時間差スタート、残りの13チームは一斉の繰り上げスタートとなる。山梨学院は午前8時8分26秒に芦ノ湖駐車場入口からスタートする。
大手町読売新聞旧東京本社前に前年優勝の早稲田大学、準優勝の東洋大学、3位 駒澤大学、4位 東海大学、5位 明治大学、6位 中央大学、7位 拓殖大学、8位 日本体育大学、9位 青山学院大学、10位 國學院大学のシード権校に、予選会の1位 上武大学、2位 山梨学院大学、3位 国士舘大学、4位 東京農業大学、5位 神奈川大学、6位 帝京大学、7位 城西大学、8位 中央学院大学、9位 順天堂大学の予選校、そして出場できなかった大学の成績上位者らで編成する関東学連選抜を加えた20チームがスタートラインに整列した。山梨学院の井上は2列目の中央から、午前8時00分の号砲とともに一斉にビル街に走り去った。
1区[21.4キロ 大手町 ⇒ 鶴見]
井上大仁(いのうえ ひろと〈1年・鎮西学院〉)
☆総合10位 1時間3分13秒 / 区間10位 1時間3分13秒 |
井上は「沿道の人並みを見てドキドキしていたが、スタートラインに立つと落ち着いて」スタート。流れをつくる1区は平坦なコースで前半の八ツ山橋の上りと後半の六郷橋の下りがポイントとなるコース。昨年5区(区間15位)を走った井上は集団の中程に位置どる。井上は1キロをやや早めの「2分50秒」で通過。井上は増上寺山門前(約4キロ)縦長となった第一集団で力走する。集団を引っ張っていた早大が、右に曲がり国道15号線の5キロ地点を過ぎて飛び出し、2位日体大、第3集団となる。井上は山手線の田町駅付近を長くなった第3集団で「まだいける。まだいける」と早い流れに乗り走る。井上は山手線の品川駅(約7キロ)を通過し、八ツ山橋(約8キロ)の「アップダウンを利用 して、下りで一息入れて呼吸を整え」走る。10キロ地点を15チームで形成する第3集団で「前が見える位置で襷を渡したい」と走る。井上は京急蒲田踏切(約15キロ)を、駒澤が速いペースで第3集団がばらける中で力走。六郷橋(約18キロ)で駒澤が引っ張る第3集団から、井上は「付きたいけど付けない」と取り残され第4集団へと後退。井上は残り1キロを「見える位置で渡したいと勢いを付け」スパートし、粘る東海を引き離しシード権内の区間10位で鶴見中継所で待つ、中村に「お願いします」と襷を手渡した。
■1位 早大、2位 日体大、3位 駒澤大、4位 東洋大、5位 城西大、6位 明治大、7位 上武大、8位 中央大、9位 関東学連、10位 山梨学院大
2区[23.2キロ 鶴見 ⇒ 戸塚]
中村 悠二(なかむら ゆうじ〈4年・日高〉)
☆総合16位 2時間14分9秒 / 区間18位 1時間10分56秒 |
中村は、「エース級が集まる区間、自分のベストを尽くす」と第一京浜を走る。花の2区は上り坂が1.5キロ続く権太坂の攻略が難しいコース。中村は1キロを「2分55秒で予定通りのペース」で走る。京急本線の生麦駅前を快調に走る。第1京浜の5キロ地点「予定通り」順調に走る。国道15号第一京浜から青木通信号を左折し国道1号東海道へ。東海などに抜かれJRの横浜駅(約9キロ)で國學院にも抜かれる。中村は保土ヶ谷駅前を抜け、横浜横須賀道路ガードを力走。権太坂の「上り坂でダメージを受けた」と国士舘などに抜かれる。エース級が走る区間で「全然勝負できない」と悩み走る。不動橋交差点を後から来た拓大と競り合う。中村は残り3キロを「最後まで、諦めずにベストを尽くす。 せめてコスマスに良い位置で渡したい」と自分を奮い立たせ、拓大と必死で走る。残り1キロ「力を振り絞り」、拓大を抑えて古谷商事前の第一戸塚中継所で待つ、コスマスに「シード権を最低限取りたいので頼む」と心で願い襷を手渡した。
■1位 東洋大、2位 早大、3位 青山学院大、4位 日体大、5位 駒澤大、6位 明治大、7位 東海大、8位 中央大、9位 城西大、10位 國學院大(シード権)、16位 山梨学院大
3区[21.5キロ 戸塚 ⇒ 平塚]
オンディバ コスマス(おんでぃば こすます〈4年・山梨学院〉)
☆総合9位 3時間15分47秒 / 区間1位 1時間1分38秒(区間新記録) |
3区のコスマスは「記録を意識し、自分の走りに集中した」と東海道を走る。3区は平坦だが1キロ付近から9キロまでで約60メートル下るコース。コスマスは昨年区間賞を獲得したコース。1キロを「2分50秒と自分の走り」で走る。ここから下り坂、コスマスは東俣野小学校を過ぎ湘南新道へ、原宿交差点を走り藤沢市の遊行寺坂(約5キロ)を「時計を押し忘れ時間が分からなかったが、監督から『13分57秒』と教えられ、最後まで行けるかな」と思ったが、そのままの勢いで激走する。下り坂が終わる10キロ地点を、さらに速度を上げ走る。浜須賀歩道橋前を右折すると左に相模湾、正面に富士山の絶景を見て走るが、コスマスは「冷たい強い向かい風で、お腹が痛くなり」ペースダウンす る。茅ヶ崎公園野球場を過ぎ15キロ地点で「風もなくなり、気温が上がりペースも戻った」と激走する。浜見平入口交差点手前、平塚駅南入口から袖ヶ浜歩道橋を走り抜け、残り1キロを「『記録を残せるように、最後まで諦めないように』とモグスいわれた」と快走する。コスマスは「力を出し切ったと」、1時間1分38秒の区間賞・区間新記録で7人抜きの快走で順位を9番に押し上げた。コスマスは花水レストハウス前の第2平塚中継所で待つ、田口に「ちゃんと最後まで守ってください」と叫んで襷を手渡した。
■1位 東洋大、2位 早大、3位 青山学院大、4位 東海大、5位 中央大、6位 駒澤大、7位 日体大、8位 明治大、9位 山梨学院大、10位 城西大(シード権)
4区[18.5キロ 平塚 ⇒ 小田原]
田口 恭輔(たぐち きょうすけ〈4年・東邦〉)
☆総合9位 4時間11分32秒 / 区間6位 55分51秒 |
田口は「コスマスが結構上げて来て、前と後ろとの差がなく渡されたので、順位を一つでも上げよう」とスタート。4区は唯一20キロを切る比較的平坦な最短コースでスピードが要求されるコース。田口は1キロを「予定通り、気持ちよく走れた」と快走。大磯駅前歩道橋を抜け、5キロ地点の大磯警察署前をタイムよりも「明治と城西との並走で、前を詰める走りに切り替える」と冷静な走り。田口は連歌橋交差点を渡り10キロ地点を通過しての上りで「明治と城西に離され粘れない」と辛い走り。田口は12キロ付近で「両足脹脛に痙攣が来て、ペースを上げると両足が吊る」苦しい走り。それにも拘わらず田口は酒匂橋(約15キロ)で「東海に追いつき」力走するが、残り3キロで「東海に仕掛け られ先に行かれ粘ることが出来ない」。田口は、残り500メートルの小田原市民会館前を走り、「前との時間差を十分に縮める走りだったが、目標タイムより30秒遅い」走り。田口は「4年生の集大成としては納得できない走りだった」と、メガネスーパー本社前の小田原中継所で待つ、松本に区間6位で「お尻をポンポンと叩いて」襷を繋いだ。
■1位 東洋大、2位 早大、3位 明治大、4位 駒澤大、5位 城西大、6位 中央大、7位 青山学院大、8位 東海大、9位 山梨学院大、10位 日体大(シード権)
5区[23.4キロ 小田原 ⇒ 箱根]
松本 大樹(まつもと だいき〈3年・出雲工業〉)
☆総合6位 5時間33分11秒 / 区間9位 1時間21分33秒 |
松本は「皆の襷を笑顔でゴールに届けたい」と襷を受け取りスタート。往路の最終コース5区は標高差約865メートルを一気に駆け上がるコース。松本は「1キロから5キロまで肩に力を入れずに飛ばないように、落ち着いて走るように」との指示通りに、箱根登山電車ガードを抜ける。松本は「上りは得意」と落ち着いて走る。鈴廣前、箱根新道入口を過ぎ、箱根湯本駅前を過ぎると、いよいよ13キロ続く曲がりくねった急な上り坂に入る。松本は『コンパクト軽快』と自分に言い聞かせ走る。「8キロ地点で中央、その5秒後に青山を抜く」快走。松本は大平台ヘアピンカーブを過ぎ10キロ地点を「斜面の傾斜に体の重心を合わせ」走る。松本は箱根小涌園前の宮下で「13キロ地点で東海を抜く」 快走。松本は恵明学園前(約16キロ)を過ぎた所に「76歳のいさこ婆ちゃんが、10年前に『箱根の走る姿を見たい』と行っていた進爺ちゃんの遺影を持って、『がんばれ』と応援していてくれ」思わず胸が熱くなり力走する。1番踏切近くに父親が居て『前を行ける』と叫ぶ声が聞こえ、一段とギアを上げ走る。松本は軽快に芦之湯フラワーセンター前を走り、国道1号線最高点874メートルに到達。ここから一気に下る。松本は「下りに入ってから、足が思うように動かない」伸びを欠いた走り。元箱根を箱根神社大鳥居(約22キロ)を過ぎ、残り1キロを「全力を出し切ろう」と気持ちを奮い立たせ、芦ノ湖駐車場入口の往路ゴールに5時間33分11秒の渾身の激走で、倒れ込みながら6位でフィニ ッシュした。
■1位 東洋大、2位 早大、3位 明治大、4位 駒澤大、5位 城西大、6位 山梨学院大、7位 青山学院大、8位 東海大、9位 國學院大、10位 関東学連
□3区区間賞・区間新記録のオンディバ コスマスは「予選会の時より調子は良かった」とニッコリ。「区間賞・区間新は少し嬉しい」とはにかむ。「日本に来て駅伝を初めて知った。山梨学院高校から7年目、駅伝で1番学んだことは『苦しい時こそ、頑張らなくては行けない』こと」と目を輝かせた。「駅伝は皆で襷を繋ぐのが楽しい」と微笑む。「これからはマラソンを走りたい。そして夢はオリンピック選手になること」と頷いた。
□飯島理彰コーチは「6位ということだが、一つ一つ見て行けばしんどい思いをしたレースだった」と苦笑い。「最初から1区、2区、3区で1区間と考えていた」と、コスマス2区起用論もあったが作戦が功を奏した。「理想は1区、2区と粘り、3区のコスマスロケット、4区の田口ロケットで、山上り(5区)はキープで上位を狙う」という想定だった。結果は「中村悠二がもう少し走るはずだったが、順位と前の差の詰めには多少誤算。しかし、諦めずに前との差を詰めていてくれたので、コスマス(区間新記録)の快走に繋がった」と中村の粘りを評価。「5区の松本の3人抜きの走りは、田口のロケットの役割を十分に果てしてくれた」。明日の復路は「後ろのチームは攻めてくる。前のチームは逃 げる。その間に入っているので、どちらにもやられないように、前を追って行きたい」。「駒澤まで1分一寸なので、駒澤を目指して行きたい」と、積極的に攻めることを強調した。
□上田誠仁監督は「1区・松本には、ハイペースとなると告げてあった。とにかく集団の中に居なさいと指示。松本にとっては1万メートルで20秒近いハイペース。その中で松本は良く走ってくれた」と目を細める。「2区の中村は各校エースが走る中、精神的にも良く耐えて、最後3キロの得意の上りで拓大との競り合いで持ち直し力走した」と頷いた。「コスマスも18分を突っ込む走りで後半潰れるかと思ったが最後まで走ってくれた。最後の最後に区間賞・区間新記録を出してくれて圧巻の走り」と手放しで喜んだ。「田口は区間賞狙いで送り込んだが、両足に痙攣が来たとペースダウン。区間狙いだっただけに残念、しかし最低限の仕事はしてくれた」と語尾を強める。「松本の区間順位はともかく 、チーム順位6位に上げてくれ良い活躍をしてくれた」と笑みを浮かべた。「明日も、走る選手だけでなく全部員の総力戦で高速駅伝に果敢に挑み、来年再来年とステップアップできる戦いにしたい」と闘志を燃やし芦ノ湖を後にした。
文(H・K)、カメラ(Y.Y)(今村佳正)(藤原稔)(平川大雪)(小池裕太)
| アルバム往路 | アルバム応援風景 |