
新春恒例の第88回東京箱根間往復大学駅伝競走復路は1月3日、神奈川県・箱根町芦ノ湖駐車場入口から東京・大手町の読売新聞旧東京本社(建て替え中)前までの5区間109・9キロで行われた。往路優勝の東洋大学が午前8時00分にスタート。2位の早稲田大学以降は白旗でのスタート。10分差の13チームは一斉スタートとなった。往路6位の山梨学院はエントリー変更を8区と10区で行う布陣、6区 伏島祐介(3年・白鴎大足利)、7区 宮本悠矢(2年・日本文理大附属)、8区 牧野俊紀(3年・西武台千葉)、9区 松枝翔(4年・鹿児島実業)、10区 尾崎廣(4年・山梨学院)で挑んだ。山学大は、先頭と8分26秒、シード権外の11位の日本体育大と3分37秒差でスタ ートした。山梨学院は、6区で6位から7位に、7区で7位から8位に、8区で8位から7位に、9区で7位をキープし、10区で9位として、復路5時間39分27秒の14位としたが、往路5時間33分11秒の6位の貯金が功を奏し、総合11時間12分38秒の9位とした。山梨学院は2年ぶりのシード権を獲得し、来年の出場と出雲駅伝の出場権を手中に収めた。総合優勝は、往路・復路・総合と大会新記録で完全優勝を果たした東洋大学が2年ぶり3度目の優勝を飾った。
スタート地点の芦ノ湖は富士の雄姿が見られないどんよりした空。昨年に比べさほど風もなく暖かい。午前8時00分、1位の東洋大が号砲スタート。白旗で2位 早大、3位 明治大、4位 駒澤大、5位 城西大、6位 山梨学院大、7位 青山学院大がそれぞれの時間差でスタート。トップと10分差以降の8位の東海大を含む13チームは10分差。山梨学院大は、先頭と8分26秒、シード権外の11位の日体大と3分37秒差で、箱根の山を駆け上がって行った。
6区[20.8キロ 箱根 ⇒ 小田原]
伏島祐介(ふせじま ゆうすけ〈3年・白鴎大足利〉)
☆総合7位 6時間35分26秒 / 区間18位 1時間2分15秒 |
伏島は「スタートは大事なので、復路の流れをつくるスタートをしようと」と心掛けてスタート。6区は標高874メートルから一気に標高10メートルまで駆け下りる名物区間。昨年4区を走った経験を持つ伏島は箱根特有のムードは肌で感じていた。スタート地点から左に曲がり「鈴なりの応援の前を気持ち良く走り抜ける」。上がり坂に差し掛かると「山梨学院の応援団が一致団結して、全力で頑張っている姿に感動した」。伏島は「体の調子も良いので、自分も全力で頑張ろう」と「前を詰めようと一生懸命坂を駆け上がる」。その気持ちとは裏腹に何故か「体が重い、何時もの調子とは少し違う」。伏島は「4キロ地点で青学に追い抜かれ」7位に後退し芦之湯を下る。芦之湯フラワーセンターを、 箱根小涌園前(約9.0キロ)地点を通過すると「繰り上げスタートの中央に抜かれ」、さらに「後続の繰り上げのチームに追いつかれ」、「凄い抜かれたと体が完全に固まった」。伏島は「前を捕えることだけを考えていたので、繰り上げスタートのことは頭の中では分かっていたが、体が対応できなかった」と「繰り上げスタートの怖さを思い知った」。伏島は気持ちを切り替え力走し、箱根湯本駅前の平地に入っての3キロをさらに力走する。伏島は6位から7位に順位を落とし、鈴廣前の小田原中継所で待つ宮本に「流れをつくれなかったことを詫び」ながら襷を手渡した。
■1位 東洋大、2位 明治大、3位 早大、4位 駒澤大、5位 城西大、6位 青山学院大、7位 山梨学院大、8位 東海大、9位 関東学連、10位 國學院大(シード権)
7区[21.3キロ 小田原 ⇒ 平塚]
宮本悠矢(みやもと ゆうや〈2年・日本文理大附属〉)
☆総合8位 7時間41分17秒 / 区間15位 1時間5分51秒 |
宮本は「順位が良くなかったので、前だけを確り追い順位を上げようと」と走る。7区はほぼ平坦で9キロ過ぎから細かなアップダウンが続くコース。宮本は3校と競り合い約1キロの箱根登山電車ガードを「設定の2分55秒より速い2分45秒で走る」。宮本はメガネスーパー本社前を通り過ぎ、3キロ地点の小田原市民会館前を軽快に競り走る。連歌橋交差点を渡り、国府津駅前信号を通過し10キロ地点で「体がきつくなった」と感じたが競り合う。二宮(11.7キロ)の坂で1チームが遅れ始める。宮本は「自分はまだ余裕がある」と2チームと並走。押切橋入口を走り抜け15キロ過ぎ2チームに置いて行かれる。宮本は粘り大磯警察署前を力走し、大磯駅前歩道橋の手前で「先を行かれた1チ ームを捕らえ」、さらに「18キロ地点でもう1校を捕らえるが、ラスト1キロの下りで自分で仕掛けたが残り300で先を行かれる」。宮本は「課題の残る走りで悔しい、来年は鍛え直して区間賞を争う」と肝に銘る走りで、7位から8位へ後退させた襷を、高村不動産前の平塚中継所で待ち構える牧野に託した。
■1位 東洋大、2位 早大、3位 駒澤大、4位 明治大、5位 城西大、6位 青山学院大、7位 関東学連、8位 山梨学院大、9位 中大、10位 國學院大(シード権)
8区[21.5キロ 平塚 ⇒ 戸塚]
牧野俊紀(まきの としき〈3年・西武台千葉〉)
☆総合7位 8時間47分44秒 / 区間6位 1時間6分27秒 |
牧野は4チームが混戦だったので「やってやる」と心で叫び襷を受け取りスタート。8区は平坦で残り5キロの遊行寺付近の急な上り坂があるコース。牧野は3チームと並走し1キロを「設定の3分前後で走る」。牧野は湘南大橋入口を走り抜け、5キロ地点を「設定の15分12秒と、自分のリズム」で軽快に走る。茅ヶ崎を牧野は「足を踏まれても気にならい」と動揺しないで走る。浜須賀歩道橋を過ぎた10キロ地点でも牧野は、「自分のリズムを崩さず設定の30分20秒」とマイペースで走り抜ける。藤沢警察署前を過ぎての遊行寺坂(16キロ)で「1チームが先に行く」。牧野は「追う力はなかった」と残された2チームと並走。影取(約18キロ)を通過し関東学連を抜き順位を8位から7位 に上げ、約20キロ地点付近の原宿交差点を過ぎ、「最後まで自分のリズムで走れた」と自信の走りで、ウエインズ戸塚前の戸塚中継所で待つ、9区・主将の松枝に「後はお願いします」と襷リレーした。
■1位 東洋大、2位 早大、3位 明治大、4位 駒澤大、5位 城西大、6位 青山学院大、7位 山梨学院大、8位 中央大、9位 國學院大、10位 関東学連(シード権)
9区[23.2キロ 戸塚 ⇒ 鶴見]
松枝翔(まつえだ しょう〈4年・鹿児島実業〉)
☆総合7位 9時間59分38秒 / 区間10位 1時間11分54秒 |
昨年、一昨年と1区を担当した主将の松枝は「最低限、シード権を取る」と肝に命じて走る。9区は襷を受けると間もなく3キロに及ぶ急な下り坂で、終盤は権太坂付近などのアップダウンのコース。主将の松枝は「1区から8区までの汗が滲み込んだ襷を初めて手にして、これが襷の重みか」と1区では味わえない新鮮な気持ちで急な下りを走る。1キロを「予定通り2分45秒」で走る。不動坂交差点を走り抜け5キロ地点を「14秒43秒」と快調に走る。「中盤の権太坂手前のアップダウンでフォームが乱れペースが落ちる」。主将の松枝は「山梨学院に入学したら一度は箱根を走りたいと誰しも思う。4年間、一度も箱根を走れなかった選手仲間が沿道でタイム差を知らせてくれたりして、チームを 支えてくれている姿を思い描き」力走する。襷の重みを「ありがたいと感謝」して懸命に走る。横浜駅前を通過し、松枝は生麦を駆け抜け「1秒を惜しんで」は走る。主将の松枝は安定した走りで、鶴見市場降板前の鶴見中継所で待つ尾崎に「シード権は死守しろ」と叫び襷を託した。
■1位 東洋大、2位 駒澤大、3位 早大、4位 明治大、5位 青山学院大、6位 城西大、7位 山梨学院大、8位 順天大、9位 國學院大、10位 中大(シード権)
10区[23.1キロ 鶴見 ⇒ 大手町]
尾部氏iおざき ひろし〈4年・山梨学院〉)
☆総合9位 11時間12分38秒 / 区間11位 1時間13分0秒 |
最終区の尾崎は「汗で重くなった襷だったので、6区から9区、皆頑張って来たんだな」と胸を打たれた。10区の最終区は起伏が少ないビル街を走り抜け往路・復路で繋いだ襷のゴールコース。尾崎は1キロを「設定した3分より、一寸はやかったが、余裕をもって入れた」と、このままの速度をキープして走る。尾崎は六郷土手交差点を抜けた5キロ地点で「設定タイムより15秒位遅い気持ちが焦る」。都大路を3度経験している尾崎にしても初めて走る箱根路は知らず知らずにプレッシャーが掛かる。尾崎は大森海岸歩道橋を過ぎ10キロ地点で「50秒位遅い。これは『やばい』」と粘りの走り。新八ッ山橋を「子供の頃から憧れ夢見ていた箱根駅伝、頑張ろう」と走り去る。JR品川駅を通り過ぎ、 田町駅前、御成門へ「沿道の歓声で、自分の息の音が聞こえない」初めての経験。尾崎は芝郵便局前から馬場先門を駆け抜け、日本橋へ。残り400メートル「後輩には予選会を経験させたくない。シード権が取れているのか分からなかったので、仲間が居るゴールを必死で目指し」人垣の中のコースを、部員全員の汗が滲み込んだ襷をシード権内の9位で、読売新聞旧東京本社(建て替え中)前ゴールに運んだ。
■1位 東洋大、2位 駒澤大、3位 明治大、4位 早大、5位 青山学院大、6位 城西大、7位 順天大、8位 中大、9位 山梨学院大、10位 國學院大(シード権)
□松枝翔(4年・鹿児島実業)は「練習では確りできていたものが試合では出せなかった去年は、予選落ちで出雲も、この1年しっかり戦うために『己の殻をぶち破れ』と努力してきた。その結果、シード権を獲得することができた。しかし、今回シード争いになったというのは、それぞれ胸に思いがあるとおもう、その思いを胸にチーム一丸となって高い意識を持って練習し、来年はさらに上を目指してもらいたい」と述べた。
□飯島理彰コーチは「9位で来年の出場権を獲得することが出来た」と安堵の表情。「ただ、レースを見ていると、我がチームはシード権争いをしているチームになっている」と自己概評。「来年上位校として上位争いをするためには、どうしたら良いのかを念頭に置き、コーチとして日々指導を行いたい。来年は上位争が出来るチームにして、この場に戻ってきたい」と決心し、来年に向け気を引き締めていた。
□上田誠仁監督は「もう少し、爽やかな笑顔でゴールをさせたかった」と唇を噛んだ。「選手は良く頑張ってくれ、良く戦ってくれた、けれども課題も多く与えてくれたレースだった」と振り返った。「高速駅伝で再浮上して行くには、自ら課題を見つけて、一歩踏み出さなければ行けない。悔しさを晴らすのは自分達が流した汗しかない。日々の努力を持って、みんなの気持ちを一つにして再挑戦したい」と述べた。また「第9位シード権獲得は、最低限達成しなければいけない目標だった。このことにより、来年の出場権と出雲駅伝の出場権を獲得できた。あと全日本学生駅伝出場(6月)を獲得して、今年は3大駅伝の全てで戦えるチームにして、スタートラインに立たせたい」と意を決して大手町を後に した。
文(H・K)、カメラ(Y.Y)(今村佳正)(藤原稔)(八巻和夫)(平川大雪)(小池裕太)
| アルバム復路 | アルバム応援風景・芦ノ湖 | アルバム応援風景・大手町 |