
北海道・苫小牧市で4日間にわたり繰り広げられた第84回日本学生氷上選手権大会(インカレ)は最終日の1月9日、インカレ恒例の団体戦、男女2000mリレーとチームパシュートが行なわれた。2位の日体大に4点差リードのトップで最終日を向かえた山学大女子は、最初の2000mリレーで日体大に競り負け、わずか2点差で最終種目の3人同時に滑るチームパシュート(団体追い抜き)を向かえた。最終組で日体大と同走、勝てば優勝、負ければ連覇が途絶える緊張のレースで、松岡三葉・歸山麻衣・小島早織の3人が、抜群の団結力を発揮して日体大に競り勝った。その瞬間に山学大の3連覇と通算6度目の総合優勝が確定、リンクサイドに駆けつけてレースを見守った先輩たちも歓声を上げて祝福した。今年の山学大は、男女ともに厳しい戦いが予想されたが、女子はチーム全員が力を合わせて3連覇を達成、男子は力及ばず2部降格となった。レース直後の引退式で、5人の4年生は「女子は4連覇を目指せ、男子は来年必ず1部に復帰するように」と後輩にエールを贈りシューズを脱いだ。
≪女子2000mリレー 梅川・伊藤・阿部・土田≫
最終日最初の種目2000mリレーは、1人が500mずつ滑り4人でバトンリレーを行う競技。スプリント力とともにバトンの受け渡しが難しい。山学女子は最終組でライバルの日体大と同走した。1走はスプリンターの梅川風子(3年 大検)「練習通りに滑れた、バトンを渡すタイミングも良かった」一歩リードした。2走は新人の伊藤さゆり(1年 東海大三)が抜擢された「個人の500mでポイントを取れなかったので、チームに貢献したいと必死でバトンをつなぎました」一歩遅れた。3走も新人の阿部美沙希(1年 白樺学園)「藤村さんに負けないと思って滑った。自分の中では、普段の500mより良かった」白樺学園の先輩藤村あゆみを逆転してリードした。アンカーは500m3位の土田愛(3年 駒大苫小牧)、日体大のアンカーは500m優勝の強敵清水玲香「美沙希が差をつけてくれたので行けるかなと思ったが、最後のインコーナーで進まない感じがした、悔しい」僅差で日体大に敗れた。この結果、優勝争いは、わずか2点差で最終種目のチームパシュートを向かえる事になった。
≪女子チームパシュート 松岡・歸山・小島≫
チームパシュートは3人一緒に滑り、男子は8周・女子は6周、最後にゴールした選手のタイムで順位を競うスピードスケート独特のチーム戦。山学大は、中距離の松岡三葉(4年 帝京三)と長距離の歸山麻衣(3年 駒大苫小牧)・小島早織(3年 佐久長聖)で臨んだ。このレースも最終組で優勝を争う日体大と滑った。山学大はホームストレート側、日体大はバックストレート側で、同時にスタートした。山学の3人は、3年間同じメンバーで滑って来た。この日は、和田貴志コーチが勝つために考案した新フォーメーションでレースに臨んだ。「スピードのある松岡に序盤を引張らせ、残り3周を力のある歸山に引張らせる今までやったことがない作戦」を敢行した。勝敗が決まる最後の レース、リンクサイドにはOB・OGも駆けつけて声援を送った。
古川 耀選手(1年 郡山商)は、雪に埋まったスタンド最上段で、リレーもパシュートも懸命に山学応援旗を振り続けた。レースは、序盤から山学大がリード、4周目には2秒近い差をつけた。しかし、ここから日体大が追い上げて来た、最後のラスト1周でぐっと詰め寄られた。場内放送された最終結果は、山学大3分18秒38、日体大3分19秒14、36秒差で日体大を振り切った。この勝利で、女子総合優勝とスピード部門優勝が確定、3連覇と通算6度目の総合優勝を激闘の末に勝ち取った。
レース後3人は最高の笑顔をカメラに向けた。松岡三葉主将「負けたら2位と追い詰められて、涙が出るほど緊張しました。やったことがないレース運びだったが3年間一緒に滑って来た2人を信頼して、辛かったけど踏ん張りました。個人では優勝出来なかったが、最後の最後に優勝出来て、達成感で晴れ晴れした気持ちで終われた」。小島早織選手「今までやったことがないパターンだったが、作戦通り滑れた。チームメイトみんなが喜んでくれて本当によかった」。歸山麻衣選手「総合優勝・3連覇という思いで物凄く緊張しました。3人でやるしかないと気合を入れて臨みました。声援が聞こえて来て頑張れた、よかった〜」。表彰台で3人は晴れやかに笑った。
女子総合成績最終結果、1位山学大59点、2位日体大55点、3位高崎健康福祉大36点、4位信州大16点、5位大東文化大10点。
男子総合成績最終結果、1位専修大44点、2位日本大36点、3位東洋大32点、4位北翔大31点、5位明治大28点、山学大は8位3点2部降格。
和田貴志コーチは「当初の予測では、日体大に先行されると思ったが、序盤から良い戦いをしてくれて2日目にトップに立てた。歸山の2年ぶり2冠などでチームに勢いがつき、全員が踏ん張ってくれた。1年生も力が伸びているので、来年につながる」と振り返った。
川上隆史監督は「女子は総合優勝3連覇を目標、男子は1部残留を目標に臨んだ。女子は非常に良く頑張ってくれた、最終レースまでもつれるほどの接戦は初めて、苦しい戦いを勝ち取ったことは伝統の力になっていく。男子は残念な結果になったが、来年必ず1部に復帰する、その力は充分ある」と大会を総括した。
全ての競技を終えた山学チームは、苫小牧のリンクでラストランを行なった。4年生はこのインカレを最後に、競技生活に別れを告げて社会に巣立つ。小野 翔太・糸魚川 太志・堀口 学・松岡 三葉・郷 茉璃那の5人に、後輩たちから花束が贈られた。
小野翔太男子主将「主将として満足な結果が残せず、チームは1部を維持できなくて残念だが、支えてくれた監督・コーチやみんなに感謝しています。来年は1部に戻ってくれ」。
松岡三葉女子主将「キャプテンになって、上手くいかないことばかりだったが、皆に引張ってもらい、最後には優勝することが出来た、ありがとう」。
郷 茉璃那選手「2年までアウトとショートの両方、3年からショート一本でやったが、充実した4年間でした。女子は皆で頑張った、男子はすぐに1部に戻るよう頑張ってください」部活を卒業する5人は、監督・コーチ・チームメイトへの感謝の気持を言葉で表し、溢れ出そうなものを抑えながら、後輩とリンクに別れを告げた。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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