
第十三回酒折連歌賞の表彰式が2月20日、山梨学院大学広報スタジオで行われた。表彰式には大賞・文部科学大臣賞を受賞した宍戸あけみさん(宮城県仙台市)、山梨県知事賞の松本一美さん(東京都三鷹市)、山梨県教育委員会教育長賞の石川 明さん(北海道伊達中)、甲府市長賞の仲川暁実さん(さいたま市立浦和中)、アルテア賞最優秀の梶山未来さん(茨城県立水戸二高)の5人の上位受賞者が出席した。大賞を受賞した宍戸あけみさんは「結果的に家族は皆無事でしたが、大震災後しばらくは石巻の実家と連絡が取れず安否が判りませんでした。受賞作「飛べないと分かっていても見続けた空」は、生活が少し落ち着いた夏頃に自分を励まそうと、思春期の多感な頃を思い出して作りました。夢の中にいるようです」と受賞の感想を述べた。今年度は、大震災の影響で募集期間が2か月短縮されたが、例年同様に多数の応募があり、9年連続して3万句を超え、30,883の応募句が寄せられた。
大賞・文部科学大臣賞
(問いの片歌1、色あせた麦藁帽子が知っているのは)
飛べないと分かっていても見続けた空 宍戸あけみ (宮城県仙台市)
山梨県知事賞
(問いの片歌4、ハモニカがひかりのおんぷならしているよ)
木造の校舎で聴いた虹の音階 松本一美 (東京都三鷹市)
山梨県教育委員会教育長賞
(問いの片歌3、集まって話したくなることのいくつか)
失敗とほんの少しの今日の幸せ 石川 明 (北海道伊達中)
甲府市長賞
(問いの片歌2、ケータイをやはり持とうか子に問いかける)
よそはよそうちはうちって言ってたくせに 仲川暁実 (さいたま市立浦和中)
アルテア賞最優秀・山梨県教育委員会教育委員長賞
(問いの片歌4、ハモニカがひかりのおんぷならしているよ)
眠たげなクジラの背中すべり落ちてく 梶山未来 (茨城県立水戸二高)
主催者を代表して挨拶した古屋忠彦山梨学院大学長は「若い人を中心に、多くの皆さんが応募して下さり、選考委員の先生方が情熱を込めて審査して下さっていることに感謝している」と述べた。川手千興酒折連歌賞実行委員長は「第1回から第13回で39万8000句にもなる。10代が多いのは、国語の時間や夏休みの宿題として、学校単位で応募して下さるから。酒折連歌が若い世代にも広がり、感慨無量のものがある」と語った。三枝昂之選考委員は講評の中で「大震災によって、日本人は、今日が必ずしも明日につながらないことを実感させられた。短歌は言葉遊びの潮流から現実に目を向けた歌が多くなって来た。俳句や詩も少しずつ変わっていくのでは」と語った。式の後、受賞者は日本武尊ゆかりの連歌発祥の地、酒折宮を表敬訪問した。

宍戸あけみ(ししど あけみ)さん、昭和51年12月1日生まれ、35歳、宮城県仙台市在住、身長154cm、血液型AB型、家族は夫・長女・次女、昨年大震災に遭遇、結果的に家族は皆無事だったが石巻の実家とはしばらく音信不通に、歌を作る余裕のない日々を送った、受賞作は生活が少し落ち着いた夏の終わり頃に、自分を励まそうと麦わら帽子の片歌と向き合い、思春期の多感な頃を思い出して作句した。「色々な思いがあっただけに、受賞の知らせは感慨深く受け止めました。今は夢の中にいるようです。震災は余りにもショックで残酷でしたが、改めて家族や自分が住む町、生まれ育った町、何でもない当たり前の日常の大切さを知らされました。この賞を励みに家族や友人、人と人との絆を大切にしながら、自分らしい歌を作って行きたい」と話す。

松本一美(まつもと かずみ)さん、昭和21年1月26日生まれ、66歳、東京都三鷹市在住、身長168cm、O型、家族は妻・義母、趣味は読書・旅行・スポーツ。若い時から詩歌が好きで、気ままに書き散らす癖があり、文学少年・文学青年を経て、文学老年になったと語る。今回の受賞作は、問いの片歌ハモニカに郷愁を感じ、少年時代を過ごした木造校舎の温もりと懐かしさ、音楽室で鳴らしたハモニカの音色と窓から仰いだ虹を想い出して作った。酒折連歌賞への応募は第10回以来2回目、「前回は問いの片歌に対し、技巧を凝らしたつもりの変化球で返したが、あえなく落選。今回は正面から直球でストレートに返したところ高い評価を頂いた」と自己分析。若い時から書き溜めた詩・ 短歌・俳句・一行詩・川柳などの旧作・新作をぽつぽつと投稿して行きたいと話す。

石川 明(いしかわ めい)さん、平成8年4月29日生まれ、15歳、北海道伊達市立伊達中学校3年、身長156cm、B型、家族は両親・兄・妹・祖父母・祖母の母、自分の長所は体が健康な事、短所は興味のないものは諦めてしまうこと。好きなことは読書・映画鑑賞・バイオリン演奏、酒折連歌賞への応募は中学校の国語の授業で出題され応募した。受賞作「失敗とほんの少しの今日の幸せ」について、「私はよく失敗をします、友達とかわす何気ない会話で立ち直った過去の経験から、今回の片歌が思い浮かびました。まさか、賞を取れるとは思いもしませんでしたので、なんて言っていいかわかりません」と明るく笑った。

仲川暁実(なかがわ あきみ)さん、平成8年12月29日生まれ、15歳、さいたま市立浦和中学校3年、身長165cm、B型、家族は両親・妹、趣味は多彩で書道六段・囲碁初段・バイオリン・バレーボール・絵画、他にNHK放送コンクールアナウンスの部に全国出場。文学賞の受賞歴は平成23年度NHK全国短歌大会ジュニアの部百人一首賞、岡山国民文化祭短歌の部入選など実に10の受賞実績を持つ才女。俳句や短歌とは違う五・七・七の連歌独特のリズムにひかれ、3年前から酒折連歌賞に応募、今回初受賞。「携帯がほしいとねだった時に、両親から言われた言葉をそのまま歌に、会話のキャッチボールのような楽しさを歌に込めた」という。将来は歌人になり、歌集を出す夢を抱いている 。

梶山未来(かじやま みく)さん、平成5年7月22日生まれ、18歳、茨城県立水戸第二高校3年、身長162cm、O型、5人家族、趣味は邦楽・読書・運動全般・雑貨を集める事、高校では文芸部に所属、部活で酒折連歌賞に毎年応募して来た、卒業目前で受賞に輝きとてもうれしいと話す。受賞作は、問いの片歌を見た時に、「子どもたちが遊んでいる様子が浮かび、居間で横になっている父の寝姿が鯨のように見えて、暖かな気持ちを込めて作りました」と語る。現在は大学受験の真っ最中、高校生活3年間で連歌がとても好きになり、大学に合格出来たら大学で、そして、何歳になっても続けて行きたいと思っている。
|
アルバム1 |
アルバム2 |
アルバム3 |
100選の詳細及び選評は酒折連歌賞HP