
第43回全国高等学校選抜ホッケー大会決勝戦が3月28日、岐阜県各務原市・岐阜県グリーンスタジアムで行われた。この決勝戦で、創部まだ5年の山梨学院高校ホッケー部が、あと一歩で高校日本一という素晴らしい試合をして"全国大会準優勝"を獲得した。山梨学院高校の団体競技としては、この冬スケート部が達成させた団体3位を抜き、2年前にサッカー部が実現させた全国制覇に次ぐ全国2位の快挙を成し遂げた。高校ホッケー部は、関東大会優勝校として全国大会に出場、3試合を勝ち抜き、決勝で滋賀代表・伊吹高と対戦した。前半を0−2の劣勢で折り返したが、後半猛反撃に転じ2点を奪い返した。さらに、終了1分前にシュートを決めたが、判定はノーゴール、幻の優勝ゴールと なった。その直後、伊吹高にPC(ペナルティーコーナー)を与えたところで試合終了のフォーンが鳴った。ラストプレーのPC、2度も止めたが3度目を決められた。2−3の惜敗。全員がフィールドに崩れ落ちた。あと一歩だった。
山梨学院高校ホッケー部は、創部まだ5年ながら、大学の監督でもある寺本祐治監督と奥田真之コーチの指導で急速に力をつけた。関東大会で強豪の栃木・今市、神奈川・慶応義塾、千葉・大原を破り、関東ブロック優勝校として全国大会に駒を進めた。初戦の徳島・阿南工戦は3−1、準々決勝の強敵島根・横田戦は5−5(PS7−6)という大激闘を制した。準決勝の地元岐阜各務野戦は完全アウェーの中で5‐0と快勝した。
向かえた伊吹高との決勝戦、岐阜県グリーンスタジアムの山学側スタンドは、早朝に甲府を出発して駆けつけた
山梨学院高吹奏楽部の演奏と
選手の保護者らの大声援に包まれた。前半を0−2で折り返したハーフタイム、OBの山学大ホッケー部
河村圭(左)・中澤大成選手は「自分たちの時からスロースターターと言われている。前半はポジショニングが悪く、球離れが遅かった。後半は伊吹の個人技に負けないよう運動量を増やしてガツガツ行ってほしい」と声を揃えた。
その後半開始早々、突破力のある伊藤義一が右サイドを突破、ゴール前に詰めた石川隆にパス、これを石川が押し込み1−2。13分には、向山太貴が速攻でサークル内に持ち込み石川にパス、石川が飛び出した相手GKをかわしリターンパス、向山が無人のゴールに入れて2−2、同点に追いついた。そのあとは、一進一退の攻防がずっと続いた。そして終盤、それまで晴れていた空から急に雨、しかも、いきなり激しい降りとなった。フィールドはまるで嵐の中の戦いとなった。残り1分、山学は猛然と相手ゴールに迫り強烈にシュートを決めた。しかし、審判は直前のプレーを反則と判断、ノーゴールとなった。その直後、相手にPCを与えたところで試合終了のフォーンが鳴った。ラストプレーの PC、1年生GKの小山大貴とDF陣が体を張り、2度も止めたのだが、3度目にタッチシュートを決められた。2−3の惜敗。スタンドの願い届かず、夢の初優勝はならなかった。伊吹高は6年ぶり3度目の優勝となった。
第43回全国高校ホッケー選手権 男子決勝
≪山梨学院高vs伊吹高≫(3/28)於 岐阜県グリーンスタジアム |
● 山梨学院高 2 |
前半 0−2
後半 2−1 |
3 伊吹高 ○ |
得点 石川・向山(山学)、山水・宮口・瀬川(伊吹) |
学生コーチから始めて、創部から5年間チームを指導してくれた奥田真之コーチは、地元の広島で就職するため、この大会を最後にチームを離れる。試合後、選手たちは流した涙を吹き、感謝の気持ちを込めて奥田コーチを胴上げした。
石川隆主将は「ここまで来たら、優勝して奥田コーチを送り出したかったので残念ですが、みんなよくやってくれました。ベスト4に入ることが目標でしたが、インターハイは優勝を目標に頑張る気持ちになりました」と話した。
奥田真之コーチは「全く弱かったチームが5年後に、全国大会で優勝争いをしてくれた。こういう結果が出て、いい形で送り出してくれた選手に感謝したい」奥田コーチは応援席の父兄にも頭を下げ、涙をぬぐった。
寺本祐冶監督は「準々決勝の横田戦でチームは一つになった。大会を通じて選手一人一人が成長してくれた。チーム全体がぐっと成長できたと思う。幻のゴールは、神様が『創部5年で全国優勝するのはまだ早いよ、もっと強くなってからにしなさい』と言ってくれたのだと思う。インターハイに向けてしっかりチームを作って行きたい」と語った。夢には一歩届かなかったが、山梨学院高校ホッケー部にとって、夢を二歩も三歩も手繰り寄せた大会となった。
文(M.T) カメラ(今村佳正)
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