山梨学院パブリシティセンター
競泳日本選手権 4日目
〜加藤和200m個人メドレー五輪出場を決める〜
〜鈴木聡美と2人出場、福島に希望の灯ともす〜

ロンドン五輪日本代表選考会を兼ねた第88回日本選手権水泳競技大会競泳競技は、東京・辰己国際水泳場で4日目の競技が行われた。前日の鈴木聡美に続き、今度は加藤和が200m個人メドレーで五輪派遣標準を突破して優勝した。山梨学院大から一度に2人の五輪水泳選手が生まれた。4年前にあと一歩のところで五輪を逃した加藤は、オリンピックに出るために福島の短大から山学大に編入し、ひたすら練習に打ち込む日々を過ごした。1年前、故郷は大震災に見舞われた。福島出身で五輪に出場した水泳選手は一人もいない。「自分がオリンピックに出ることで、故郷に希望の灯をともしたい」。加藤は渾身の力を振り絞って泳いだ。タイムは2分11秒79、人生で初の11秒台、一発勝負の大舞 台で人生最高の泳ぎをした。自分のために、福島のために、4年越しの夢、悲願のオリンピック出場を努力で達成させた。
≪女子200m個人メドレー 決勝 加藤 和≫
4年前に悔し涙を流した加藤 和(かとう いずみ 4年 福島・桜の聖母短大)は、悔しさを晴らすために山学大に編入し、黙々と練習に打ち込んだ。手応えをつかんでいた去年3月11日、故郷を大震災が襲った。原発近くの大隅町に住んでいた祖母は、福島市の実家近くに避難、一時は精神的に水泳に集中できなくなった。やめようと思った時もあった。きちんと向き合えたのは秋頃からだった。今年帰省した時、福島の子供たちは放射能の影響で屋外で泳ぐことが出来ないことを知った。福島県水泳連盟の人たちとともに福島県にはない50m屋内プールの建設を求める署名運動に取り組み始めた。オリンピックに自分が出ることで、故郷に希望の灯をともしたいと思うようになってから、練習に一段と熱が入った。4年間の思いと、福島への思いを胸に、加藤はスタート台に上った。センターコースから、誰よりも高く舞い上って飛び込んだ。最初のバタフライは昨日と同じ3位だったが、次の背泳ぎで早くも2位に上った。準決勝より1秒近くも早く100mをターンした。得意の平泳ぎで1位を奪った。そして、さいごのクロールは圧巻だった。驚異的な物凄い速さで2位以下を一気に引き離した。大差をつけて五輪切符を勝ち取った。加藤和選手は「何度も自分に負けそうになりました。やめようと思った時もありました。環境が変わって心細くなったり、震災があったり、色んなことがありました。この2年間は自分の弱さを実感した時でした。震災のあとはもどかしい気持ちでいました。それでも応援してくれる人がいて、自分の不甲斐なさを感じました。秋の国体の時から自分が出来ることは泳ぐことだけだと思うようになりました。故郷の水泳連盟の人たちが50m屋内プールの署名活動を始めているのを知り、自分がオリンピックに出ることがきっかけになればと思ってスタート台に上りました」。多くを語ることはしなかった加藤は、レース後、堰を切ったようにその胸の思いを報道陣に打ち明けた。

加藤和選手の両親はスタンド最前列で我が子の泳ぎを見守った。母親のかの子さん(55歳)は「本当によく頑張ってくれました。山梨に送り出す時は心配でしたが、あの子が自分で選んだ道、親はただ見守るだけでした。神田先生をはじめチームの人たちに支えて頂いたおかげです。福島の水泳連盟の方々にも応援して頂き、皆さんに感謝しています」と話した。父親の善和さん(55歳)は「ホッとしました。小さい時から負けず嫌いな子でしたが、皆さんに支えて頂いて、やっと夢を実現させることが出来ました。家に帰って来たらおめでとうと言ってやります」。娘に似て無口な父は、安どの表情で顔をほころばせた。

この他の山梨学院勢は、再びの五輪を目指す萩原智子が午前中の100m予選7位で夜の準決勝に進んだ。また、男子200m平泳ぎの大林稜典と女子100m自由形の下中千明がともに予選で自己ベストを更新、夜の準決勝に進出した。

≪女子100m自由形 準決勝 萩原智子≫
萩原智子(はぎわら ともこ カレッジスポーツセンター職員)のオリンピックへの戦いが始まった。午前中の予選を7位で通過し夜の準決勝に進んだ。50mのターンは26秒94、ゴールは55秒99だった。全体7位で明日の決勝に進出した。萩原智子選手は「思ったより伸びていない、もっと高い目標があるので残念。チャレンジャーなので攻めの姿勢を貫いて、明日は最後まで諦めない気持ちでしっかり泳ぎたい」。萩智は自ら気持ちを引き締めた。

≪女子100m自由形 準決勝 下中千明≫
下中千明(しもなか ちあき 4年 北陸大谷)は、午前中の予選で、高速水着時代に出したベストを超える56秒75の自己ベストを出し16位で夜の準決勝に進んだ。前半の50mを27秒10で通過、ゴールは56秒96、予選より順位を上げ14位となった。下中千明選手は「予選よりもタイムを落としてしまった。でも、久し振りにベストが出たのでいい方向で考えて、得意の50mで頑張りたい」。下中は2日後の50m自由形に全力で挑む。

≪男子200m平泳ぎ 準決勝 大林稜典≫
大林稜典(おおばやし りょうすけ 2年 下関南)は、予選で昨年8月に作った記録を上回る2分14秒24の自己ベストを叩き出し、予選16位で準決勝に進んだ。予選・準決勝ともに100m五輪代表を決めた北島康介・立石諒と同じ組で泳いだ。100mの折り返しは1分04秒89でこの組8位だったが、150mで6位に上がり、この組6位の2分14秒39でゴール。予選より順位を上げて全体12位となった。大林稜典選手は「予選で悪かったところをある程度修正できたが、タイムが付いてこなかった。予選の時は北島さん・立石さんを意識して緊張したが、準決勝では意識しないようにして、自分の泳ぎに集中した。次につながる泳ぎが出来たので、次は13秒台を狙いインカレでも結果を残せるようにしたい」。大林は日本選手権で確かな手応えをつかんだ。

下中千明と大林稜典の結果は大林12位、下中14位で決勝進出はならなかったが、2人は誰もが震え上がるほど緊張する大舞台の日本選手権で、自己記録を大幅に伸ばした。大きく成長したことを檜舞台で立証した。

明日5日目の山梨学院勢は、女子200m平泳ぎ予選に2冠に挑む鈴木聡美と村上優海。女子800m自由形予選に400m4位の野中瑞姫。男子200m個人メドレー予選に福田真大と青木健紘。男子200m背泳ぎに篠田大夢が出場する。そして、萩原智子が12年ぶりの五輪に挑む女子100m自由形決勝が行われる。

山梨学院勢 4日目の成績
名前 学年 種目 記録 備考
加藤 和 4年 200m個メ 2分11秒79 優勝、派遣標準突破五輪内定
萩原智子 職員 100m自由 55秒99 準決勝7位で決勝へ
大林稜典 2年 200m平泳 2分14秒39 準決12位、予選で自己ベスト(2:14.24)
下中千明 4年 100m自由 56秒96 準決14位、予選で自己ベスト(56.75)
山岸奈央 4年 100m自由 57秒44 26位
重森俊二 3年 200m平泳 2分18秒70 47位

文(M.T) カメラ(平川大雪)

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