2012年関甲新学生野球春季リーグ戦1部(第4節)は4月29日、栃木県の小山市運動公園野球場で2戦目2試合を行った。第1試合は先勝した山梨学院大学と関東学園大学が対戦。後攻の山学が関学に4対0で勝ち、通算成績を勝ち点2の4勝2敗とした。高橋一三監督は、先発投手に上武戦の1戦目で先発した未完の大器左腕・山本卓哉(2年・済美)を起用したが、1回・2回表ともに四死球を出し波に乗ることができないのを見て、3回表から1勝1セーブと波に乗る技巧派右腕・穴田真太郎(4年・PL学園)に素早くスイッチした。穴田は監督の起用に応え、強肩捕手・田中貴也(2年・八重山商工)のリードと牽制、野手の堅守にも支えられ熱投し、相手打線を山本との継投で零点に抑えた。攻めては6回裏、一死後2番・渡辺晶也(3年・山梨学院)が左前安打、3番・平井慎也(3年・富士学苑)が右前安打、4番・児玉卓也(4年・甲府城西)が中前安打で一死満塁。今日、6番から5番にあがった中村圭輔(2年・熊本国府)の「無意識に身体がハンガースライダーに反応した」一撃が、弧を描き左芝席で大きく跳ね上がった。中村の均衡を打ち破る一発で4対0とした。山学は、眠れる獅子・中村の目覚めの満塁ホームランと、穴田の手術後最長7イニングの熱投で、関東学園に2連勝し神宮への望みを繋いだ。山梨学院は、5月12日の午前10時から埼玉県の平成国際大学野球場で、第6節の松本大学戦に臨む。
□昨日、関東学園に勝ち先勝した山梨学院。高橋一三監督がマウンドに送ったのは上武戦の1戦目に先発した未完の大器左腕・山本卓哉(2年・済美)。後攻めの山学ナインが掛け声とともに守備位置に散った。
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●[山梨学院]〈勝ち点2 4勝2敗〉
●【投手】
●山本 投球回数2回、打者10、打数6、投球数49球、四球3、死球1、三振2
●穴田(勝ち〈2勝1ゼーブ〉) 投球回数7、打者27、打数25、投球数85球、安打6、四球2、三振3
●【捕手】田中
●本塁打 中村(1号)
◆山梨学院は1回表、左腕・山本が1番打者を追い込んでから内野ゴロ。続く、2番打者にフルカウントから四球を与え一死一塁としたが、3番打者を1ー2から空振りの三振に打ち取り二死一塁に、続く4番打者の2ー1からの4球目に盗塁され二死二塁とされたものの、落ち着いて打者を投手ゴロに仕留めた。
◆2回表、山本が5番打者を空振り三振に打ち取り波に乗るかと思いきや、6番DHをフルカウントからの四球、7番打者には死球を与えて一死一二塁。次の8番打者を左飛で仕留めたが、9番打者に死球を与え二死満塁と自ら崩れ窮地に立たされたが、続く1番打者を内野ゴロに打ち取りピンチを凌いだ。
◆3回表、昨日リリーフで好投した技巧派右腕・穴田真太郎(4年・PL学園)がマウンドに、2番打者を0ー2から内野ゴロに打ち取る上々の滑り出しを見せたが、3番打者にフルカウントから左前安打され一死一塁とされた。続く4番打者を右飛に打ち取り二死一塁としたが、5番打者を四球で歩かせ二死一二塁。次の6番打者が4ファールと粘る2ー2からの7球目、穴田の右腕が唸り空振りの三振に打ち取る。
◆5回表、穴田が先頭の1番打者に中前に運ばれ、2番打者にファールで粘られた6球目を右前に落とされ無死一二塁。次の3番打者の1ー1からの3球目、強肩捕手・田中貴也(2年・八重山商工)が二塁走者が飛び出したのを牽制球(2ー4)で刺し一死一塁とすると、3番打者を内野ゴロに仕留め二死一塁とした。続く4番打者に四球を与え二死一二塁としたが、5番打者を見逃しの三振に斬って捨てた。
◆6回表、穴田が「手術後の公式戦、未知のイニング」にも拘わらず、5番を右飛に、6番DHを内野ゴロに、7番を一塁へのゴロで自らが一塁へのカバーで打ち取り、攻撃陣の援護を待つ。
◆その6回裏、一死後2番・渡辺晶也(3年・山梨学院)が左前安打で出塁すると、3番・平井慎也(3年・富士学苑)が右前安打、4番・児玉卓也(4年・甲府城西)が中前安打で一死満塁。この絶好の機会に、6番から5番にあがった眠れる獅子・中村圭輔(2年・熊本国府)が「無意識に身体がハンガースライダーに反応した」と、軸がぶれず奇麗に身体が回転した一撃は、弧を描き左芝席で大きく跳ね上がった。中村の均衡を打ち破る満塁ホームランで4対0とし、熱投の穴田に打撃陣が応えた。
◆7回表、4点をもらった穴田が先頭の9番打者に中前安打、1番打者に内野安打とまさかの連打で無死一二塁。次の2番打者を二塁手へのゴロに併殺かと思いきや、一塁走者が二塁手に衝突、一塁走者の守備妨害で一死一三塁。続く、3番打者も捕手の二塁への牽制妨害でアウトとなり二死一三塁となった。次の4番打者の一球目に盗塁を許し二死二三塁とされるも、落ち着いたマウンド裁きで打者を内野ゴロに仕留めピンチを凌いだ。
◆9回表、穴田が先頭の8番打者に中前安打されるが、9番打者を(1ー6ー3)の併殺に打ち取り、続く1番打者を空振り三振に仕留めゲームセット。穴田の熱投と6回裏の打線の繋がりで、山梨学院は神宮への希望を繋いだ。
□均衡を打ち破る左芝席に叩き込む初打点初本塁打の満塁ホームランを放った中村圭輔(2年・熊本国府)は、開口一番「ありがとうございます」と爽やかに発した。高校時代は熊本のスラッガーだったが大学野球では、その身を潜めていた「6回の打席には0対0の満塁だったので集中した。5番に起用してもらったので期待に応えたかった」と頷いた。「無意識に身体がハンガースライダーに反応した」と、「入るかどうか、打った瞬間は分からなかった。これまで打点零だったので、ホームインしたときは最高でした」と均衡を破る一発を素直に喜んだ。松本戦は「今の調子を維持して、またチームに貢献したい」と眠れる獅子が目覚めた。
□技巧派右腕・穴田真太郎(4年・PL学園)は、ピッチングについて「ボールの走りは、昨日よりなかったので、丁寧に投げることを意識した」と振り返った。3回表からの救援について「何時でも行ける心の準備はあったが、まさか山本が2回で交代するとは思わなかったので、ちょっとビックリしたが、マウンドに送ってもらうからには『抑えてこい』という意味だと思っているので、期待に応えられるように投げた」と汗を拭った。昨年の12月に股関節の手術をして1月の中旬に退院した穴田は「公式戦6イニングは未知のイニングだったので不安があった」と本音を覗かせた。「6回裏の満塁になって、中村がホームランを打ってくれたので、これで行けると思った」と一気に心の霧が晴れ、「6・7・8・9の4イニングを投げ切れた」と熱く語った。松本戦「ラストシーズン、投げられることに感謝しつつ、4年生としての気概を持ちチームに貢献できる投球をしたい」と甘いマスクが突然、戦士の顔に変わった。
□主将・高田千暉(3年・木更津総合)は、「いまのチームに課せられていることは、全てを連勝で勝たなければならないことなので、松本戦に2連勝できたことは、次に繋げられたということで、とても良かった」と、また「今日は、打線が6回を除くと、繋がりを欠き課題を残した」と淡々と振り返った。次節の松本戦は「相手は今年1部にあがって来た勢いがあるチーム。どのようなチームなのか分からないので、試合までに自分達のできることを全員がしっかりやり、松本大と戦いたい」と冷静にキャプテンシーを覗かせ熱く述べた。
□伊藤彰コーチは「この関東学園戦、苦しい戦いだったが、何とか守り切り、2連勝して勝ち点を挙げられた」と振り返った。「今日も、厳しい戦いだった。終わってみれば4対0だが、一つの流れで大きく変わるという試合展開だった。こうした苦しいところでも、一つのアウトを大事に取れたところが大きかった」と選手たちの試合での成長を口にした。この2連戦での一番の収穫は「穴田のピッチング」と迷わず口にした。「穴田は、1戦目は抑えで出て、2点差に詰め寄られ1アウト二三塁で一打同点という場面で抑え、今日の2戦目は3回からと早いイニングからにも拘らず零点で投げ切れた。穴田が戻って来てくれたのが大きかった」と、コーチとして穴田の復活に叱咤激励して来ただけに感慨無量の面持ち。松本戦に向けて「このシリーズ、自分達にできる最善は、後4連勝すること。まずは、その第1戦となる松本戦の初戦を取ることに集中して行きたい」ときっぱりと語った。
□高橋一三監督は「今日は、どうしても勝ちたかった」と胸を撫で下ろすと、「これで後は、余裕を持って戦える」と口もとに笑みがこぼれる。上武戦の敗戦を「ズルズル引きずっていたら、入れ替え戦になったかもしれないからね」と安堵した表情。このシリーズのエース不在で監督の仕事は投手の代えどころ「山本には5・6回までと考えていたが」と目を伏せた。「しかし、穴田が昨日に続き好投してくれたね」と病み上がりの穴田を讃えた。先発の左腕・山本について「まだ、練習の力が出し切れていない。練習中の投球ができれば申し分ないんだがね。山本の球自体、特にストレートには魅力がある。なんとか育てようと機会を与えていが、まだ、2年生だからね」と未完の大器に期待を寄せていた。一方、この試合から6番から5番に抜擢され、満塁ホームランで期待に応えた中村について「もともと遠くに飛ばすパワーを持っている選手。今年、一番伸びた選手。今季は当たりが出ていたからね」と手放しで喜んだ。ここに来て「高梨が居ない穴は、山田と穴田が軸になって、ほかの投手陣が良く埋めてくれている。それに応えて打撃もチャンスで打てるようになって来ている」と口を結んだ。次は松本大学戦「松本大はピッチャーが2枚揃っている。山田と穴田は計算できるだけに、うちの打線対松本の両投手の戦いとなる。一つでも落としたら神宮が無くなる」と表情を引き締め球場を後にした。
文(H・K)、カメラ(平川大雪)
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