
競泳のジャパンオープン2012が5月25日から27日の3日間、東京・辰巳国際水泳場で開催された。4月の五輪代表選考会でロンドンオリンピック出場を決めた平泳ぎの鈴木聡美、個人メドレーの加藤和、バタフライの加藤ゆか(OG・東京SC)の3人とともに山梨学院大から男子9名、女子10名が出場した。鈴木聡美は初日の100m、2日目の50m、最終日の200mともに優勝を果たし平泳ぎ3冠を獲得した。加藤和は、五輪に出場する200m個人メドレーで断トツの強さを発揮し快勝。OGの加藤ゆかは、50mバタフライで自らの日本記録を更新、100mと合わせ2種目を制した。一方、最上級生になった自由形のスプリンター下中千明が、50m自由形決勝で4人の五輪出場選手と 対等に渡り合うレースを展開、タッチ差の5位となった。五輪の夢は果たせなかったが、下中はその実力が五輪レベルであることを立証した。
今年の競泳ジャパンオープンは、ロンドン五輪開催前に行なわれる国内最後のレースとなった。五輪代表の27選手は、所属チームではなく「チームジャパン」の選手として、胸とスイミングキャップに日の丸がデザインされた競技用水着と、赤と黒の揃いのトレーニングウエアで颯爽と登場した。その中に、山梨学院の学生2人とOG1人の姿があった。なんともうれしい光景だ。本人が並外れた努力をしたことが最大の理由だが、一人でオリンピックをつかんだのではない。1年の時から全選手のタイムを計り、4年間縁の下を支えている高崎有紀子マネージャーを筆頭に、選手として入部したもののタイムが伸びずにチームを支える側に回った「チーム山梨学院」のメンバー全員でつかみ取ったロンドン五 輪だ。鈴木も加藤も、自分のためだけでなく、仲間たちの思いも胸に、2か月後、夢のスタート台に上がる。
≪女子200平泳ぎ決勝 鈴木聡美≫
鈴木聡美(すずき さとみ 4年 九産大九州)は、五輪に向けて泳ぎこんでいるため、この大会には無調整で臨んだ。それでも、1日目の100m、2日目の50mはあっさり優勝をさらった。だが、最終日午前中の200m予選は2分29秒25もかかり7位通過となった。足のキックが乱れていた。しかし、鈴木の凄さは短時間で自分のフォームを調整できることにある。午後のアップで調整、夕方からの決勝は2分24秒37で泳いだ。2位の金籐理絵、3位の渡部香生子を寄せつけずに3冠を達成させた。
鈴木聡美選手は「予選の後、コーチと相談して150mまではイーブンペースを意識して最後の50mを思い切り上げました。100mを9秒台で入る感覚がつかめたので、今後につながるレースが出来たと思います。大学に入ってからロンドンオリンピックというものが夢から目標に変わり、明確な目標が今見えて来ました。『目標は自己新&メダル!』です。200mはメダルを狙えるランキングにいるので、 自己記録を出すことはもちろん、メダルを狙っていきたいと思います。6月の途中にイタリアでの大会に出場しますが、基本的には慣れ親しんだ大学のプールでしっかり下積みを積み上げて、7月1日からの代表合同合宿に備えたいです」。辰巳のプールサイドで自分の心にメダルを誓った。
≪女子200m個人メドレー決勝 加藤 和≫
この大会の加藤 和(かとう いずみ 4年 桜の聖母短大)は、専門外の100m平泳ぎに出場して自己ベストで9位に入ったほか、五輪では出場しない400m個人メドレーにも出場し2位に入るなど、泳ぎの幅を広げる試みに積極的に取り組んだ。そして向かえた最終日、自分の種目と意識している200m個人メドレー決勝に挑んだ。いつもは後半型の加藤が、この日はスタートから積極的に飛び出した。最初のバタフライで早くも1位に立ち、フォーム改造中の背泳ぎでもトップを譲らず、得意の平泳ぎに持ち込んだ。ここからは加藤の独り舞台、最後のクロールでは大差をつけて余裕で優勝した。
加藤和選手は「背泳ぎについては改造中です。予選よりは良かったが、もう少しテンポを上げて泳ぎたいので、あと2か月間は、特にそこに力を入れて取り組んで行きたい。今のタイムでは、オリンピックで決勝に勝ち残るのは難しいので、決勝を意識したレースが出来るようにしっかり調整して、皆さんに感動を与えるようなレースをして来たい。オリンピックでの『目標は 一心 ベスト更新!』です」とその胸の思いを述べた。加藤和も、鈴木と同様に6月中旬のイタリア大会に出場するが、その前後の6月中は山梨で調整を行うことにしている。
≪女子100mバタフライ決勝 加藤ゆか)
山学大4年で向かえた4年前の北京オリンピック、五輪初出場を果たした加藤ゆか(OG 東京SC)は、北京を最後に笑顔で引退するつもりだった。しかし、まさかの予選敗退。得たのは笑顔ではなく悔しさだった。その悔しさを原動力にして現役を続行した。そして、再びの夢を努力でつかみ取った。この大会では2日目の50mで、自己の日本記録を塗り替える25秒95の日本新で優勝し、最終日の100mは後半ばてながらもしっかり優勝した。
加藤ゆか選手は「2か月は、あっという間だと思うので、自分でできることをしっかり見つけて死に物狂いで練習して本番を迎えたい。4年前はいっぱいいっぱいでした、今回は精神的には少しはリラックスして臨めるんじゃないかと思います。『目標は、リベンジ!』です。世界の決勝で泳ぎたい気持ちが強いので、必ず結果を出したい」。加藤ゆかは、今度こそ笑顔で帰ってくる。
≪女子50m自由形決勝 下中千明≫
下中千明(しもなか ちあき 4年 北陸大谷)は、今シーズン絶好調だ。4月の五輪選考会で自己ベストの25秒73を出し7位となった。この大会では、100m自由形で56秒64の自己ベストをマーク、高速水着時代に作ったベストをすべて更新した。50mの決勝レースに進んだのは、上田春佳・松本弥生・伊藤華英・内田美希の4人の五輪出場選手と下中ら4人。レース結果は1位から7位までが25秒台という激戦、勝ったのは25秒33の高校新を出した内田だった。下中は25秒84でタッチ差の5位となった。
下中千明選手は「今シーズンはいい練習が出来ています。ベストでないのは少し悔しいが、日本代表の4人と同じようなタイムを出せたことは良かったと思います。去年のインカレは(風邪で発熱)出れなくて悔しい思いをしました。今年は体調を整えて臨みたい」とインカレでの復活を宣言した。
この他の山梨学院勢は、女子200m背泳ぎで山下安輝(1年 山口・豊浦)が決勝に進出、2分12秒79で7位に入った。
全ての競技終了後、辰巳国際水泳場のプールサイドで、競泳・シンクロ・飛込みに出場する「チームジャパン」の五輪壮行会が行なわれた。1週間後にアメリカ・サンタクララで行なわれる競技会に出場する北島康介らを除く37名の選手が総結集した。松田丈志キャプテンが「センターポールに日の丸を掲げて君が代を聞きたい、金メダルをめざします」と選手を代表して活躍を誓った。日本代表チームは、7月1日からイギリス・ロンドン近郊のバジルドンで代表合同合宿を行い、そのままオリンピック選手村に入ることにしている。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
|
アルバム鈴木聡美 |
アルバム加藤 和 |
アルバム加藤ゆか |
アルバム下中千明 |
|
アルバム壮行会 |