
明治杯平成24年度全日本選抜レスリング選手権大会が6月16・17の両日、東京・代々木第2体育館で開催された。明治杯は、学生・社会人の区別なく全国から選抜された各階級のランキング上位選手によって競われる大会。山梨学院大学からは、現役9人、OB4人が選ばれて出場した。現役勢は、大会初日のグレコローマンスタイル120s級で階級を1階級上げて臨んだ金澤勝利(4年)が決勝に進出、惜しくも優勝を逃したが準優勝を獲得した。その他の現役勢は、グレコ66s級の長崎宏樹(2年)、フリー60s級鴨居正和(2年)、フリー84s級亀山晃寛(2年)、フリー55s級高橋侑希(1年)、グレコ60s級雨宮隆二(1年)がベスト8となった。OB勢では、グレコ96s級の有園拓真(ALSOK)が準優勝、グレコ96s級の山本雄資(警視庁)とグレコ60s級の倉本一真(自衛隊)が3位に入った。
大学生にとって、明治杯は、経験豊富な社会人の技と駆け引きを学べる貴重な機会でもある。高校時代に史上3人目のインターハイ3連覇を達成させて山学大に入学してきた将来有望な
フリー55s級の高橋侑希(1年 三重・いなべ総合)は、1回戦で早大の西洸大をまったく相手にせず余裕で2回戦に進出したが、2回戦の相手稲葉泰弘(警視庁 26才)は、ロンドン五輪出場を最後まで争った2010年世界選手権3位の優勝候補最右翼。実力、テクニック、試合の駆け引き、総てが一枚上だった。2Pにバックに周り1ポイントを上げたが、1P・2Pともにローリングされて完敗した。稲葉は3試合とも対戦相手に大差をつけて優勝、大会最優秀選手に与えられる明治杯を獲得した。
フリー84s級の亀山晃寛(2年 群馬・大泉)もいい勉強をした。1回戦で東日本学生リーグの時に敗れた赤熊猶弥(拓大)にピリオド2−1でリベンジして2回戦に進出した。亀山の2回戦の相手松本真也(警視庁 27才)も前年覇者の歴戦の兵、1Pを0−8の大差で取られ、2Pも0−2とされたが終了10秒前に場外に担ぎ出して一矢報いだ。亀山は敗れたが、この試合から多くのことを学んだ。この階級は結局松本の2連覇3度目優勝となった。金澤勝利(4年 岩手・種市)は3年まではフリー・グレコともに96s級で出場していたが、4年からは減量の必要がない120s級で出場することにした。1回戦で同じ山学大の原口卓也(4年 福岡・三井)を下し、準決勝で谷田昇大(ヤマヨテクスタイル)を圧倒 して決勝に進んだ。決勝の相手中村淳志(奈良県体育協会 26才)は全日本3位の選手、大学グレコチャンピオンとして果敢に攻めたが、社会人の老獪なテクニックに敗れた。
グレコ120s級金沢勝利選手「96s級の時は減量もあって切れが悪い時もあったが、階級を上げたことで自分の思った通りに動けるので、今はこれで行こうと思っている。今回は優勝を狙ってきたので口惜しいけれど決勝までいけたことは良かったと思う。次の天皇杯では今度は1位を取りたい」。
小幡邦彦コーチ「自分も学生時代に社会人に負けて成長した。ベテランは、技の仕掛け方や緩急のつけ方といった勝負どころのテクニックとグランドに優れている。金澤にしても、鴨居・亀山・高橋にしても、ベテランに負けた事で自分の課題を見つけたと思う、いい勉強をした。大学時代が一番伸びる時、試合の流れの作り方、グランドの攻防、自分の経験を学生たちに伝えて早く覚えてもらい、リオ五輪を目指してもらいたい」。アテネ五輪フリー74s級代表で全日本選手権優勝8回の名選手は、コーチとして後輩を五輪選手に育てることに燃えている。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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